性極者
僕と桜川さんは車の後部座席へと乗り込んだ。
「出して。」
桜川さんがそう一言告げると車は静かに動き出した。
彼女とは別に運転手がいるのか。
運転席と後部座席は壁によって仕切られており、その姿を確認することは出来ない。
車外の様子は窓ガラスにスモークフィルムでも貼っているのだろうか、完全に遮断されている。
車の内装も高級感が溢れており、なんだか落ち着かない。
僕は護送されているのか?
いや、護送というよりは半ば誘拐に近い状況かもしれない。
まぁ、どちらにせよ変わらないのだが。
今僕一人で出来る事は何もない。
この車にはきっと乗る運命であったのだろう。
今までに起きた数々の出来事、謎、これからどうなるのか。
沈黙の続く中、様々な事について物思いに耽ていると桜川さんが口を開いた。
「そういえば、まだあなたが何の性極者か聞いていなかったわね。」
え?性極者にも種類があるんですか?
「そう。というかあなたにはまだ性極者について詳しく説明していなかったわね。」
「性極者というのは、性癖に選ばれし特別な存在。性癖を持つ者たちの頂点なの。」
性癖を持つ者たちの.....頂点...⁉︎
「何か特殊な性癖を持ち、さらにそれらに対する慈愛が異常であり特出している人が性極者となるの。発動条件となる性癖の数、種類はまだ詳しくはわかっていない。しかし、一つの性癖に性極者は一人という事はたしか。現在性極者と判明しているのはあなたを含め8人だけよ。」
なんか恥ずかしくなってきた。
「性極者の特徴としては、身体的能力や運動神経の劇的な向上、体格の変化、そして各性癖固有の能力の発露よ。性癖固有の能力というのはその性癖に関連したものが多く、種類によって効果は全く異なるわ。」
性癖固有の能力....。
そんな物があるのか。
「性極者にはまだまだ謎が多く、その謎を一刻も早く解明し、力を平和の為有意義に活用していけるようにするのも私たちの使命なの。だから、あなたの情報が欲しいわ、善平君。」
成る程、だいたい分かった。
僕の性癖は多分アレだ。
というかもうアレしかない。
でも慈愛が異常に特出〜とか変態の頂点とか言われると言いにくいんですが。
ちょー恥ずかしいんですが。
まぁ、さっきそれを認めた僕だ。
今更言わない訳にもいかないだろう。
僕は桜川さんの方を向いて堂々と答えた。
「僕の性癖は....ロリコンです。」