表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/94

【 Ep.1-007 武器選択 】


 先程の人だかりに目をくれなかった者達なのだろうか、兵士達の前はそれなりに賑わっていた。こういうNPC周辺は混みがちなのだが、運営・開発もそれを見越しているのだろう、複数の兵士NPC達が配置され、次々とプレイヤー達を捌いていってる。悲しき日本人の性なのか、各兵士の前には列が形成されていてさながらコミケの人気サークルのようだ。


 横入して無用なトラブルを起こして、さっきの様な状況になるのはごめんなので、多少時間がかかっても列に並んで順番を待つ事にする。列と言っても複数単位で受けても大丈夫みたいなので、ケントと2人で並ぶ事にした。


 流石訓練された兵士だ、次々と並んでいたプレイヤー達が各々武器をとって狩りに出発していく。

最初は身長差で見えなかったが、前に進むにつれそれぞれどんな武器を選ぶか見る事ができた。


 一番人気は片手剣と盾のフォーマルスタイル。二番人気は両手剣と槍が同比率。前者は所謂ヒーロー志向タイプなプレイヤーが選んでいた。後者は初心者でもリーチがあり、その上取り回しが比較的簡単なので人気なのだろう。主だった武器はその3点が中心で、他にもエルフプレイヤーは弓と短剣のセットだったり、魔法系主体で行くと思われるプレイヤーはスタッフやロッド、メイスを選ぶ者もいた。弓に関しては流石にずぶの素人が使えるような武器ではないのだが、そこはゲームのシステムアシストのおかげでそれなりに使える様にはできているらしい。それでも不安な場合はボウガンタイプもあるそうだ。

 不人気らしいのは斧全般や槌…所謂ハンマー系の武器だ。まだ両手斧は見た目がごついのもあってその手のが好きなプレイヤーが選んだりしているが、流石にハンマーは見た目からして選ばれづらいのだろう。鞭や大鎌なんて者を選ぶ奴もいたが、流石にあれらは使い勝手が悪すぎではないだろうか? 他にも武器としては、双剣や刀、ナックルブレードやトンファーなんてものもある。

前者はかっこよさを追求するタイプやその道を習っていた者にはそれなりの需要があるらしいが、後者は武器の珍しさ以上に適正クラスが限られているおかげで需要が低いようだ。



「次は君達の番だ、此方へきたまえ」


 兵士の呼び掛けに答えて彼の前に出る。


「さて、君達も聞き及んでいるとは思うが、我がアートゥラ辺境伯領は領地として拓かれて間もない。その為多くの冒険者や開拓者を募り、領地の治安維持や開拓にあたってもらっている。君達も勿論その為にここに来たのだろう?歓迎しよう!なに、無償でとは言わない。アートゥラ辺境伯様は元冒険者で名を挙げ、その功績により我らが賢王陛下より拝領した御方だ。新参冒険者の諸君達にはその助けとなるようにと物資を供出して下さったのだ!ここにある武具類がまさにそれに当たる。とは言え一人に対して複数の武器の支援は行えん。君達が命を預けるに足る、己にふさわしい武器を一つだけ持って行くがよい」


 なるほどそういう設定なんだなと感心しながら、最初から決めてた武器を手に取る。

 華美な装飾もなく、唯々無骨で実用性だけを追求されたデザインの鈍く光るハルバード。手に持った瞬間はズシンとした重みが二の腕にまで伝わるが、すぐに手に馴染んだのかしっくりくるような感覚を覚える。


「セラはそれでいいのー?」

「ん、これだな」


 宣言通りの片手剣と盾を携えたケントと頷きあう。

 付属の帯剣用の鞘と盾のホールドアイテムをケントが受け取り、続いて俺も兵士からハルバードの背面懸架用ベルトをもらった。早速ハルバードを背中側の固定用金具に合わせると、カチッと小気味良い音が鳴り無事ホールドされた。その光景を見て頷く兵士が後ろにおいてある袋からポーチを取り出して渡してくる。


「これはインベントリポーチだ。これの容量は知れているが、これからの事を考えればないよりはマシだろう。見た目以上にアイテムを中に取り込むことができる優れものだ。是非とも今後の役に立ててくれ」

「ありがとうございます。ついでで申し訳ないのですが、魔法についてはどちらへ伺えばよろしいでしょうか?」

「あぁそれならば、この先の開拓村にある神殿で洗礼を受けてみるといい。水見の儀で自分がどの神々の加護を受けているか教えて頂けるのだ。それと忘れずに冒険者ギルドで冒険者登録をするのだぞ」

「わかりました。早速向かってみます」


 兵士に礼をし、早速ケントと開拓村にあるという神殿を目的地として歩を進める。基本的にNPCとの会話は定型文メインらしいのだが、エモーションAIのおかげである程度幅を持たせた会話をする事が可能なのだという。この世界にどれ程の数のNPCが存在するのかはわからないが、想像するだけで膨大なデータ量になるのではないだろうか。そう考えるとローカライズ問題を先送りにして日本だけの先行リリースにしたという対応も頷ける。

 少しだけ整備された道を村へと向かいながらインベントリポーチの仕様を確認してみる。収容可能容量や収容可能数、どのように中身を整理するかなど。その為、道脇の採集可能な草花や木材、虫や石等手あたり次第ポーチに入れてみた。おかげで採集スキルが上がっている気がする。


「どう?」

「ん~、ポーチを意識するとインベントリ内のアイテムが確認可能で、取り出す時も、取り出したいアイテムを意識すれば自分の周囲1m程度まで任意の場所に取り出し可能だね。個数に関しては同じカテゴリーのアイテムはスタックが可能でスタック上限は100個。全体でおおよそ70枠っぽいね。重さはどうかなぁ…重いものばかり詰めたわけじゃないからわかんないけど、30㎏は余裕で入っているし、この感じなら50㎏程度はいけると思う」

「結構入るなー。初期装備にしてはいい感じなんじゃない?」

「序盤はこれで十分かもね。さ、検証これくらいにして村へ行こう」


 インベントリ検証のついでにハラスメントガード等の基本的な仕様も検証しておいたので、ケントとそれぞれの検証結果を話し合いながら村へと向かう。

 遠くからも見えていたその姿は近づくにつれ二人に何とも言えない違和感を植え付ける。それは周囲を同じ様に歩く他のプレイヤーも同じな様で、頭を傾げたり唸ったりと反応は様々だ。

 それもそのはず、開拓村へと続いている道を辿った先には、囲いは木柵でありながらも初期村とは思えない規模の村が見えてきた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ