【 Ep.3-017 王都探索 】
累計アクセス77,000達成してました。次は80,000目指して頑張ります(・ω・)
イベント参加したりなどでバタバタしておりましたが投稿再開、今回は日常回パートとなります。
――翌日。
朝食をとった後皆で連れ立って王都の地形や商店、その他利用するであろう施設の場所を覚える為に屋敷を出た。服装は特に戦闘行為をするわけでもないけど一応念の為という事で軽装といえる格好だ。ボクの白黒の聖乙女はそもそも重装備という程でもなく、ガントレットだけ外している程度だ。武器を懸架していなければボク達の格好って軽装備だと言えるとは思うけどね。
とりあえず昨日訪れた王都中央冒険者ギルド本部の他に、雑貨屋、鍛冶屋、武器屋、防具店、付与魔術店の他にも魔導書店や錬金術屋など大通りを中心に見て回った。
昨日竜車の中から見た時も驚いたけども、よくあるファンタジー系MMOにある様な一階建てや二階建ての石造りの建物などは殆どなく、大通りに面している建物は基本的に五層以上の石造りの建物が多く占めている。大通りに面した商店は大体が一階と二階の二つのフロアを商店スペースとして活用しており、利用者も途切れることなく入れ代わり立ち代わり入っては出ていって活気に溢れている。
流石に王都の規模ともなると皆で別れて探索するには広すぎるので今回は全員揃っての移動となっているが、この選択は結果的に言えば正解だった。
今日は休息日にあたる日らしく、普段ならダンジョンや依頼の為に王都から居なくなる冒険者達が王都内に留まり思い思いに過ごしているからだ。そのせいかいつも以上に様々な商会の馬車や竜車などが大通りを行き交い、人々もまた同じ様に行き交っていて少し目を離して気が付くと前を誰だか分からない人が歩いているなんて事を数度経験したからだ。
元居た世界では高身長の部類だったボクだけど、この世界では比較的低身長に位置づけされているせいで人混みの中に放り込まれると目で相手を追うという行為の難易度が段違いだった。
そう言った事もあり過保護気味なクロさんが常に横についていてくれる事になり、先頭をしっかり店選びをしてくれるシオンとリツが、一番後ろを最も背の高いベネが歩くという体制に落ち着いた。チグサも一応先頭候補には上がった物の、食材系を見つけた時の暴走という前科が付いた事もあり却下されている。
午前中だけで見て回れたのは正門から続く南の商業地区だけだったので午後からは本格的な工房が軒を連ねる西区を回る。ここである程度武具の更新ができればいいんだけど、モノによってはモーリィのお手製の方が良いという場合も出てくるだろうからそうなれば見送りってスタンス。
一先ず中央区へ向かう大通り沿いに見つけたリストランテ"白亜の陽射し亭"で昼を取ることにした。ここは出発する際アルフさんがこっそり教えてくれた店で、王都で手に入る食材であれば大抵のものをメニューに取り入れており、料金もリーズナブルだという指折りの名店なのだそう。
ハルキニア各地から仕入れられた食材がふんだんに使われたボルシチみたいにしたスープ料理に、ダンジョン産のオーク肉とミノタウロス肉を豪勢に焼き上げたステーキ料理、東方のアガスセティア法国から仕入れた米で作られたガパオライスにそっくりな料理、南方はレ・ノルン獣王国産のフルーツを使用した独創的なデザート等、文句をつけるどころかリピート確定の品々で胃袋をしっかり掴まれてしまった。
すっかり満腹となったお腹を軽く撫でながら西区にある工房エリアへと向かう。西区は商業地区とは違って全体的に建物は地味な造りではあるものの、軒先に掲げられた看板の多さから多種多様な工房が所狭しとひしめき合っていて其々が其々の分野で鎬を削っている様が見て取れる。
「西区は煌びやかさはありませんが、工業都市じみた独特の雰囲気がありますね。――そう言えばモーリィは此方で仕事道具を探すのでしたか」
「あぁ。しかしまァここの大通りはすげぇな、道具屋横丁と下町工場が合わさっちまったような見てくれしてやがるわ職人の目をしたやつらがそこかしこに居やがる。この空気堪んねェな」
「モっさん楽しそうだなぁ」
言葉以上にモーリィの顔は期待に膨らんでいるのが丸わかりで思わず皆にやついた顔で彼を見てしまう。モーリィの気持ちはわからなくもない。興味がそこまでなくても色々な器具や道具が陳列されている光景は不思議とテンションがあがる。
ウィンドウショッピングを楽しみながらも必要になるであろう道具は都度購入していく。モーリィは仕事道具ともなる鍛冶道具、チグサは調理器具と小太刀に自身の刀の手入れ用品、セトは投げナイフとピッキングに使える工具、シキとケントとボクは取り回しのいいナイフ、シオンとマリーとクロさんは彫金に使える器具、リツは簡易的だけど精度はそれなりの鑑定用モノクルを購入していた。低ランクの鑑定魔法効果が付与されているらしく、簡単な鑑定とレア度の高さを着用者に知らせる機能があるらしい。
どれもそれなりにいい値段はするけど、ここにくるまでの依頼達成報酬でそれなりに潤っているので財布へのダメージは比較的少ない。
「嬢ちゃん達中々いい目利きしてんな?もし興味があるならここの裏通りから数区画行った広場で定期的に開かれる蚤の市に顔だしてみな。大抵はガラクタやらナマクラが転がってるが、中には鑑定してない掘り出し物や"曰く付きアイテム"なんて代物も出てるみたいだからよ」
そんな話を聞いたのは自前の工房で打ち出した武器を扱う店舗のドワーフの親父からだ。
鋳造品よりも手がかかる上に価格が高いが質が良く長持ちするという理由で武器を選んでいたやり取りを見られていたらしい。情報代かわりに幾つか気になっていた武具を購入して店を出た。
武器工房のドワーフ親父の言葉に従って西区の中央部方面へと路地を進んでいくと、ややこじんまりとした広場に所狭しと簡素な布張りの屋根の下に布を広げて雑多に商品を並べただけの露店メインの蚤の市が開催されていた。
見た感じはどれもこれもピンとこない何に使うか分からない道具だったり、武器として使うには扱い辛そうなものだったりと碌な物が並んでいない。そんな中ある商店に並んでいるペンライトほどの大きさの棒にリツが目を付けた。目には先程購入したモノクルをしっかりと装備しているので何かしらそれに引っ掛かる反応があったものがそれだったのだろう。
ボクもそれを手に取って見てみるも、幾何学的な彫りこみが全体に施されていてかなり古いものであるって事は分かる。ただそれが何であるかは皆目見当がつかない。店主のお婆さんに価格を聞いたところ大した額でもないのでリツはそれを購入した。どんなものであるかは帰ってからゆっくり調べればいいだろうしね。
広場を回りつつリツのアイテムを利用して他にも矢鱈目立つ赤色に染められた革製のベルト、アイスピックを大きくして短剣として使えるようにしたと思われる独特な形状のダガー、錆が浮き出すぎて元の形がいまいちわからない包丁のようなもの、同じく錆が浮き出ているフライパン、そして地味な印象を受けるがそれなりに縫製がしっかりとされている編込み靴の六点を別々の露店から購入した。
リツの鑑定モノクルとは関係なしに各自それぞれが気に入ったアイテムを購入していて、シオンはポーションなどにも使用できそうな容器を、ケントはよく分からないけどモンスターの角を買っていた。……あれどうする気だろう。
*****
西区の蚤の市でそれなりに買い物を済ませた後は逆側の東区に向かう事にした。まずは西区で大通りに出て王都内を循環運航している竜車に乗って東区へ向かう。運賃も非常に安く、乗り込む際に銅貨2枚を指定の箱に入れたら後はどこで降りても問題ない。そんなに安くても大丈夫なのかと疑問に思うが、利用者数が多いので低い運賃でも十分にやっていけるのだそう。
向かう方向的に同じ東区が目的地であろう乗客は、東区にある教会や魔法学院があるという事もあり術師然とした格好の者や、法衣に身を包んだ司祭らしき姿をしている者も実に多い。ボク達はそこが目的ではなく、立地的な問題でそこに店を構えている魔法書店が目的地なのだけど冒険者風の乗客をみるとやはりというかローブやスタッフ、ロッドを手にしている者が多く見受けられた。
そんなボクらの視線に気が付いたのか、ややくたびれてはいるものの丁寧な刺繍が施された濃緑色のローブに身を包み頭髪は殆ど禿げ上がっている老人が声をかけてきた。見た目はアレだがローブの下には仕立ての良さそうな衣服が見える。
「ふむ、そこな一団は冒険者パーティー……いや、見えぬ者もおるが同じ紋章を刻んでいるという事はファミーリアですかな?」
「……そう、だけど。貴方は?」
「いやなにそんなに警戒せんでくれ、悪意はありゃあせんよ。この辺りではあまり見ない狐獣人やドーンエルフについ気を取られての。――私はマルドゥク、東区の魔法学院で教鞭をとっている者です。とは言え私の専門分野は魔法そのものではなく各種族毎の固有魔法や特殊魔法、血統魔法とその種族の文化などについての研究ですがね」
「成る程、学者や教授みたいなものか。で、その先生さんが何か用?」
「んや?先ほど言った通り珍しいと思って声を掛けたまでですよ。多民族多種族が暮らすこのハルキニアでもその主要構成種族はヒュームとエルフ、ドワーフに猫獣人等の好奇心旺盛な獣人族が大半ですからな。その中でも象獣人や狐獣人はそこまで表世界へは進出していませんでな。ドーンエルフも似た様な理由ですな。エルフに比べてもその人口比率はかなり少なく、その殆どが隠れ里や地下都市で暮らしていると聞きます。そういう暮らしをしている中からあなた方の様な外の世界へ出てくる者も昨今ではかなり増えました。私にとっては嬉しい現象ですな。そして今目の前に居る。まぁそんな理由でお声がけしたという訳ですよ」
研究者気質というか、この手のタイプは自分も似た様な部分があるから少しわかるけど付き合うと面倒だ。とは言っても話を逸らしたいところだけど生憎移動中の竜車の中なので逃げ場がない。相手するのをマリーに振ろうと思ったけどベネの陰に隠れてアンタが相手しぃって小声でいってるし……結局ボクが相手しないとダメか……。
「……そう」
冷たい態度してれば空気読んで話切り上げてくれないかなぁ……
「ええ。ところで皆様は東区にどのようなご用件で?魔法学院への編入手続きですか?それとも短期就学でしょうか?」
いやダメだこの人絶対空気読むとかしないわ。むしろほっといたら絶対話し終わらないやつだコレ。っていうか魔法学院って途中入学できる上に短期就学までできるのか。ちょっと興味沸いてきたぞ。
「いえ、魔法書目当てです」
「魔法書ですか……。そうですなぁ、それでしたら東区の大通り沿いから魔法学院の時計塔が見える路地を少し入った先の右手にある魔法書店がお勧めですぞ。大通り沿いの店も悪くはないのですが恐らくあなた方にはあまり合わない物が多そうですし市民や初級学院生向けの物が多いのですよ。ですので先ほど言った書店であればあなた方冒険者向けの実用的な物の他に魔法付与巻物なども手に入るはずです」
意外や意外、役立つ情報を惜しみなく教えてくれるとは有り難い。が、そういう情報は得てして簡単に教えるものではないと思う。真偽のほどは分からないが周りに聞こえない声量に落とした事を踏まえるとそれなりの情報確度って感じで覚えておくというスタンスでいいだろう。
「成程助かります」
「ハハハ、余り信じられておられぬ様だ。まぁ初対面ですし仕方ありませんな。さて、東区に着いたようだ。私はお先に失礼しますよ。もし学院に御用件などがあればいつでもこのマルドゥクの名を出して訪ねて来て下さい。では――」
そう言ってマルドゥクと名乗った老人は竜車を先に降り東区の大通りの人混みへと消えていった。
「どこか胡散臭くてそれでいて中々の実力を隠していると言った感じの御仁でしたね」
「そこまで見てたんなら助け舟だしてよ……」
そんな事を話しながらまずは大通り沿いの店から回って行くことにした。これは別にマルドゥクの話を軽視した上の判断でもなんでもなく、予めそうしようと決めていたからの行動だ。
東区の大通り沿いには主に後衛職と呼ばれるヒーラーや魔法使い向けの武具屋も一応並んでいて、取り扱っている商品もワンドやロッドなどの杖系統や魔導書、ケープやローブなどの軽装備が多い。流石にメイスなどは西区の武具屋に任せて住み分けでもしているのだろう。とは言っても別段後衛職だからローブなどの布防具に拘る必要は基本的にはない。あくまで装備者の好みや能力次第だ。
魔法書店も見て回ったものの、マルドゥクが言ったようにコレと言った魔法書は見つからなかった。多くが教材に使っているような代物だったり、生活魔法が主軸だったりと導入用といった代物が大半なので戦闘に実用的な物は見つからないといった感じだ。一度店主にも尋ねてみたけど、そういった魔法書は学院の上層部と王城の方に優先的に回され、大通りの書店には在庫がほとんど回ってこないと言われた。王都の騎士団や魔法学院という施設の内情を考えれば書店としては文句を言うわけにもいかないのが実情なのだろう。
そういった事情もあって大通りを見て回った後はマルドゥクが言っていた路地を見つけて歩を進め、説明通りの場所に構えていた年季の入った外観をしている魔法書店「エルドア魔法書店」に入店した。
内部はあまり整理されているとは言い難い陳列のされ方で場所によっては床に直接雑多に平積みされていたりとお世辞にも綺麗な状態ではないものの、何気なく手に取って見た魔法書の内容は大通りの大衆向け魔法書店には並んでいなかった戦闘向きの魔法書であった。これなら何か覚えれそうな魔法書が見つかるかもしれない。
「おや、誰かと思えば見ない顔だねぇ。一体誰に聞いてここに辿り着いたんだい?」
店の奥、恐らく住居スペースであろう場所から顔をのぞかせカウンターから身を乗り出してこちらを見ながら、小さな丸眼鏡をかけ皺の刻まれた顔の表情を目を凝らすために更に皺くちゃにした老婆が声を掛けてきた。
「店主さんですか?ボク達はマルドゥクと名乗る老人からここを教えてもらいました」
「マルドゥク?ホゥ……あの爺さんまぁだ生きてやがったのかぇ。まぁそれなら納得だ。いいだろう、どんなものを探しているんだね?」
カウンターを飛び越え、しっかりとした脚運びで此方へ近づいてくる背の曲がった老婆に向けて此方の探しているものの要件を伝える。ダンジョンでも使える戦闘魔法に冒険に役立つ生活魔法の発展系、ダンジョンに関する蔵書、それと個人的に闇属性魔法について記されているものがあればそれをと。
「ふぅん……お前さんら冒険者ランクは?」
「ボクが冒険者ランクDで他のみんなはEです」
「その若さでDランクかぇ?そりゃまた人は見掛けによらんもんだねぇ……ならそうさなぁ、これとこれ……それにここいらかねぇ……。ぃいよいっしょっと!ちょっと手伝ってもらってもいいかね?」
背の届かない場所にある目的の魔法書を小型の脚立の上に立って背伸びして取っていく老婆の姿に若干危うさを感じるも、当の本人は手慣れたものだと此方の心配をよそにせっせと選んでは手に取っていく。ボク達は脚立を支えたり選んだ魔法書を受け取ってはカウンターへと運んで作業の手伝いをした。
「大体こんなもんかねぇ。軽く見た感じお前さんらの適性だとここに並べた魔法書が習得できるギリギリのヤマだろうさ。後はこっちのは王都近くのダンジョンについて書かれた物をまとめたモンだ。正確さにはやや欠けるがそれでも何も知らないまま潜るよりかは幾分かマシな心構えができるだろうサ。……後悪いが闇属性魔法については今手元にあるモンではアンタにゃ渡せないねぇ。もう少し力を付けてから改めて来な。その時条件を満たしてるなら使える物を渡してやろうじゃないか」
「条件?」
「あぁそうさ。ない事は無いんだがね、純魔法士ではないアンタが扱うには難しいシロモンなのさ。いくら属性に適性があると言っても制御できなきゃ話にもならないだろぅ?ろくに扱えないまま習得しちまって身を滅ぼしましたってぇ話の主役になりたいってんなら考えない事もないがね」
「いえ、素直に言葉に従います」
「結構結構。賢い子だよアンタは。それじゃ締めてこれらの支払いは――」
提示された金額はそれなりに高価ではあったものの、元より定価というものが決まっていない代物である以上は文句のつけようがない。そう言う事情もあるけどこの老婆が示した金額は恐らく妥当または少し割り引いてくれている気がする。示された金額を過不足無くカウンターに置く。
「分かりました。ではそれでお願いします」
「ほぉ、この値段でも文句言わないたぁアンタ中々見る目があるようだね?てっきり値下げを要求してくるかと思ってたんだがね」
「実用的な魔法書そのものを仕入れるのが難しい状況でこちらに合わせた選別までしてもらっててその上この値段は妥当だと思うし、もしかしたらお婆さん少し負けてくれてるでしょ?そこから更に値引きしろとはボクは言えないかな」
ボクの言葉を聞いた老婆は目をパチクリ二、三度したかと思うと目を輝かせながら口を開いた。
「気に入ったァ!あの爺つまらん奴を寄越す様なら後でケツでも蹴り上げようかと考えてたがアンタは大当たりだ。最近の魔法書店はどこもかしこも要望に沿っただけの本を渡すだけで相手の力量を測る事すらしやしない。客も客で目先の事しか考えねぇってんだからお似合いだが、いやそうかそうかぁ……こいつはオマケだ持って行きな」
そう言って手渡されたのは一枚の魔法付与巻物。何が記されているのか聞いたところ、緊急脱出の魔法が付与されているものらしい。高度な魔法封印と障壁が展開されていないダンジョンであればこの一枚でパーティメンバー全員をダンジョン入り口まで強制転移してくれるのだと。
「将来性のある優良顧客を簡単に死なせるほど耄碌してないさね。今日買ったその魔法書を習得し終えて十分に使える様になったあたりにまた顔出しな」
カカッと笑いながらそう言ってくれた店主のエルドア・ラモールお婆さんに礼をして店を後にした。
目的のものは手に入れたのでそろそろ帰ってもいいのだけど、まだ少しばかり日の傾きにも余裕があったので東区の中心側を目指して散策していると、一際大きな敷地を誇る施設ご目に飛び込んできた。
落ち着いた藍色の屋根をした北欧建築に似た校舎に広めの校庭、そこで魔法を発動させる制服を着た人々の姿――間違いなく魔法学院だろう。
「この世界でも学校があるっていうのはなんか微妙にチグハグしてるっていうか違和感あるなぁ」
「そうでしょうか?一定水準の文化分明を持っている国であればこうした学術的な施設はあって当然だと思いますが」
「これだけの規模だと王国各地からだけでなく他国からも入学してくるって人も居そうっすね。あれ……でもそれだと国交がないと難しかったりするんすかね?」
「ボクが文献とかからで得た知識からだと西にあるパルキア戦王国とは戦争状態に近い状況ぽいけど、東のアガスセティア法国と南のレ・ノルン獣王国、北のレガリア連合国とは概ね関係は良好、特に南のレ・ノルン獣王国とは同盟関係にあるらしいからそういった人的交流はあるかもね」
ケント、チグサ、シキは其々ケントの感想を起点に考察を述べる。シキの疑問への回答になるかは分からないけど自身が得ている情報を出すとチグサとシキは更に二人で話を進めあいだしてケントは放置された。まぁ元よりそこまで二人の会話内容に興味はなさそうだったけど。
「校庭におる生徒見た限りやとやっぱりヒュームが多めやね。チラホラとエルフや獣人族も見かけるけど割合はそんな多ないなぁ」
「ドーンエルフもほとんどいない感じだしドワーフに至っては一人も見かけないね。魔法より鍛冶って感じなのかな?」
マリーの話を引き継いでそう言って自身に目を向けるリツに対しフンと鼻息で返事をしたモーリィは生徒の装備の方に興味があるらしく幾つかメモを取っている。メンバー中最も背の高いベネは元々建築を仕事にしていたせいだろうか、王都探索に出てから只管その目に王都内の建築物を焼き付けていたので今も校舎の建築様式について一人腕を組んで考え込んでいる。
元がゲームだった世界ではあるけども今は現実、元居た世界とは違った物理法則や魔法という要素まであるのだから当然元居た世界とは全く似つかない建築様式なども散見できる。その一つが校舎よりも目立つ時計塔の周りに浮いている浮遊足場と言うべきものの存在だろう。
通常であれば足場とするには土台や支柱等が必要であるはずがそれには一切そういったものがない。ある程度の厚みの床板がそのまま宙に浮かんでいる。仕組みは一切わからないけど実際目にするとホァー……っと間の抜けた声が漏れてしまう。
「あの、皆さんそろそろ戻りませんか?陽も大分落ちてきましたし、購入した物の整理もした方が良いと思うのですが……」
「そうだね。大雑把だけど王都の主要な部分は見て回れたし屋敷へ帰ろう」
「リツ兄のおかげでそこそこ珍しそうなもの買えたし、あたし達向けの魔法書もお婆さんに選んでもらえたし楽しみね」
「あん中の幾つかァ俺が手入れしなきゃならぇっぽいのがあったな。鑑定終り次第回してもらうとするか」
クロさんが気を遣いながら発した言葉に皆我を取り戻し、今日の王都探索を終えて屋敷へ戻る流れとなった。屋敷への帰りは大通りまで出てから再び乗合巡回竜車を利用し、冒険者ギルドのある中央区で降りてから徒歩で北西側の貴族街というルートを取ったが今回は特に絡まれる事なく無事に帰る事が出来た。
*****
屋敷に戻ってからはまず食事となったのだけど、今日はおっさんが王城の方での用件で戻らないという事で天兎メンバーだけでの食事となった。一応その場にアルフさんと従者のうちの一人犬獣人のレオニーさんも居たのでご一緒にどうかと誘ったのだけど、仕事としての立場もあるのでと断られてしまった。
食後はリツとモーリィが使っている部屋に集まって蚤の市で手に入れたアイテムの鑑定作業を始めた。因みに部屋割りはケントとチグサ、マリーとベネ、シキとセト、シオンとクロさん、リツとモーリィにボクだけ一人部屋という分け方だ。
鑑定の仕方としてはリツが西区で購入した簡易鑑定用モノクルをこれまでの鍛冶作業で鑑定の熟練度を積み上げて鑑定眼の<天恵>が開花しそうになっているモーリィに渡す事で鑑定精度を強化し、その状態で鑑定作業を行えば本職には及ばないものの十分な鑑定ができるようになる。
「じゃ始めるぜ……。ふむ、これは――」
じっくりと一つ一つのアイテムを鑑定していくモーリィに皆の視線は釘付けになる。購入したアイテムはとりあえずはファミーリア資金から捻出しているので、アイテムの能力と合致するか使いたいと思った者が要望して貸与するという事は決めてある。
簡単そうなものから鑑定していった結果と使用者は次の通りだ。
赤色に染められた革製のベルト・・・
正式名:クリムゾンドレイクレザーベルト 【階級:ユニーク】
効果としては強い火属性耐性が付与され、同時に火属性攻撃能力が中程度上昇する。
→マリーが装備。
アイスピックの様な独特な形状のダガー・・・
正式名:血吸いの大針 【階級:レア】
効果としては突き刺した相手の生命力を一定量自己回復に当てる事ができる。
→セトが所持。
錆が浮き出てる包丁のようなもの・・・
正式名:肉削ぎ包丁 【階級:マジック】
効果は対象の遺体に突き刺すと、可食部を自動的に剥ぎ取り入手する事が可能となる。熟練度により量は変動。デメリットとして突き刺した対象が変化するドロップは全て肉になる為期待できない。
→モーリィの研磨作業が済み次第チグサへ貸与。
錆が浮き出ているフライパン・・・
正式名:上級料理人のフライパン 【階級:マジック】
効果は調理した食材の旨味を逃さない。一般の物より保温能力に優れる。
→モーリィの研磨作業が済み次第チグサへ貸与。
地味な編込み靴・・・
正式名:先見の網込み靴 【階級:レア】
効果は装着者の回避率上昇(小)と移動速度上昇(小)。女性専用。
→クロさんが装備。
意外にもそこそこ使えるアイテムが多い気がする。特に肉削ぎ包丁や苦行者のフライパンはダンジョンでの食料確保でもかなり役立つだろうし日常でも役立つに違いない。ただ現状では錆びたままなのでモーリィの手入れで元の状態に戻さないと効果は発揮されないみたいだ。まぁ錆びついたまま効果があると言われても、その状態で剥いだ肉を食べたいとは思えないだろうけどね。
気になっていた幾何学的な模様が彫りこまれたペンライトの様な棒はモーリィが鑑定してもハッキリとした情報が得られず、恐らくは小型のワンドじゃないかと言っていたのでとりあえず見つけたリツが所持しておく事となりこの日は解散となった。
自室に戻ってからは書店で手に入れた魔法書の中から習得可能な魔法を習得してからお風呂を頂き、風呂から上がってからは明日潜る予定のダンジョンについて記された内容を熟読してから就寝した。
王都はかなり広く巡回馬車、巡回竜車が運航されているほどです。
それぞれの区画ごとにある程度の役割分けがされていますが西区の奥には娼館などが林立する歓楽街があり、東区の魔法学院付近には学院で教鞭をとる教師たちの住宅や生徒たちの寮となる家屋が多数並んでいたりします。
魔法学院にドワーフの姿が見えないのは在籍している者が0人という訳ではありませんが片手の指程も居ないからです。元来この世界のドワーフの魔法適性はそこまで高い水準にはなく、どちらかと言うと付与魔法等に特化した尖がった適性である事が殆どです。
一部には攻撃魔法を使いこなす大魔導士の域に達したドワーフも居ますが、そのような者はごく少数の限られた存在であり英雄視されていたりします。




