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【 Sp.3-000 白の間 】

総合評価300超えました。

今年の目標は4桁目指したいと思います。




 ただひたすらに広大で真っ白な空間。その中に数人の人影が立つ。




 ――白の間。そう呼称されるこの空間は、世界のどこにも通じておらず、閉じられた空間である。だがその空間は世界へと干渉する力を持つある者達にとって絶好の場であり、時間軸やその理すら世界とは別の概念で構成されている。


 そんな白の間の中央には巨大な円卓が鎮座しており、その中央の円座に横たわるは純白の少女――セラ達の目の前に現れたパンドラそのものであった。

 円卓の周囲にはパンドラを取り囲む同じく白い姿をした者達。彼女らもその姿形はパンドラとただ一点を除き同じ姿を擁している。


「ようやく動き始めたみたいだね。彩玉(オリジン)が期待を寄せる者達が如何程なものか……私には判別がつかないけど。」

「お前はどうするつもりだ?翠玉(すいぎょく)。」


 横たわるパンドラの上の中空に映るセラ達の姿を見ながら、碧玉と呼ばれるパンドラと同じ姿をした瞳だけが翠色の少女が樹々が囁くような口調で言葉を漏らす。

 そんな彼女に対して瞳が紅色なだけで姿形はパンドラと同じ少女が乱雑に尋ねる。


「私は……今は何もする気はない、見守るさ。私は観測者(ゲイザー)だからね……。そういう君はどうなんだい紅玉(こうぎょく)。」

「サァ……どうしてくれようか。彩玉(オリジン)がその願いを託すに足る資質を持つ者なのか、多少興味はあるがな。」

「そう言いながらも貴方は興味があるってだけではなさそうな表情をしていますが?」

「っせぇな蒼玉(そうぎょく)。いつも澄ました顔をしてせせら笑っている根暗のお前こそ手を出すつもりなんじゃねぇのか?」

「あら嫌だわ。私は調律者(チューナー)よ?世界の流れを調律する者、その領分を超える事はしないわ。」


 コトリと口を付けていたティーカップをゆっくりと置き、翠玉と紅玉の二人のやり取りに口を挟んだのはこの両名と姿形は同じで瞳の色だけが蒼い少女"蒼玉"だ。翠玉が自身を「観測者(ゲイザー)」と称したように、蒼玉もまた自身の事を「調律者(チューナー)」と称した。


「つまらぬ事で場を乱すな紅玉。普段それぞれの領域で各個に行動する我々がこうして集められたのだ。それがどういう事態であるかわからぬ貴様でもあるまい。」

「あぁ?呼び出した奴が姿をまだ見せねぇ以上それまでは好きにしてもいいだろうが。それとも何か?てめぇが裁定者(アジュディケイター)だからって俺達にまでその役目を実行しようだなんて思ってんじゃねぇだろうな、黄玉(おうぎょく)?」


 他の者へと噛みつくような紅玉の乱暴な物言いに苦言を呈したのは"黄玉"と呼ばれた黄色の瞳をした少女。分かり易く例えるならばロリババアのポジションである。そんな黄玉に対しても紅玉はまるで狂犬の様に噛み付く。


「フフフ……。実に変革者(イノベイター)の貴方らしいじゃない紅玉。どう?その特性を生かして私と共に行動しなぁい?」

「抜かせ紫玉(しぎょく)!誰がお前の様な衝動に突き動かされるだけの破壊者(デヴァステイター)なんぞに手を貸すものか!」

「これはこれは……何とも悲しいものだわぁ。想像と破壊は決して切り離せない光と影の様なモノなのよォ?貴方の特性である変革者(イノベイター)とは相性の面では良いはずなんだけどねぇ?」

「あぁ?冗談もそのふざけた脳みそだけにしろよ、この快楽主義者が。お前と基が同じなんて反吐が出る―」

「そこまでにしておきなさい紅玉。そして貴方も変に煽るのを慎みなさい?紫玉。」

「フゥン……。」

「ッチ……やっと喚び出した張本人の御登場かよ。随分待たせてくれるじゃねぇか、こうなるのを見越して待っていたんじゃないだろうな?調停者(ミーディエイター)白玉(はくぎょく)。」


 "紫玉"と"紅玉"の諍いを止めたのは瞳の色が銀色のパンドラと同じ姿をした少女"白玉"。彼女の登場により当たり構わず噛み付いていた紅玉は落ち着きを取り戻し、円卓に乗り出していた身体を引っ込めて席に着く。


「まさか。待たせてしまった事については謝罪致しますが、そこまで悪趣味ではないですよ。――それよりも。」

「新たな"テスタメント"の誕生、そういうわけだね?」

「ええ、その通りです翠玉。本来であれば私達六名で成り立つテスタメントに新たに誕生する者。私達では持ち得ず、成し得ず、手が出せなかった最後のピースを埋める者。その兆候が見られたのでこうして召集したのです。」

「……勘違いってわけじゃねぇんだな?」

「ここまできてそのような冗談を言うつもりはありません。見て御覧なさい、彩玉から溢れ出ているマナの奔流を。そしてそれを呼び水として集うエーテルの流れを。」


 その白玉の言葉に他の五人が円座の中央に横たわるパンドラへ視線を移す。

 既にパンドラの周囲には視認できるレベルの魔素(エーテル)の流れが渦巻き、膨大なマナがパンドラに注ぎ込まれては過剰なエネルギーが極彩色の光を伴って放出されていく。

 それぞれの属性を色濃く反映したマナの流れは赤や緑、紫や黄色、青や白に色付きそれらが流れ込むパンドラを光り輝かせていく。


「こんなにも強烈なマナの奔流、とてもじゃないけど私でも調律できないわ。」

「俺達を分離して尚、まだこれ程までの力を保有していただと?!おい……彩玉は無事なのか?」

「我々の司る属性(エレメント)全てが注がれていく……。なんという規模のマナの流れだ。」

「これだけのマナの奔流を注がれても未だ覚醒しない彩玉の方が私は気になるけどね。」

「……来る。」


 翠玉の言葉と同時に膨大な魔力の流れがピタリと止み、先程までの状況が嘘の様に空間は静寂に包まれる。円座の中心には変わらずパンドラが横たわっているが、その体は光に包まれて輪郭しか捉えられない。


・・・


――無音。


・・・・・・


――その場に集う六人が息をする事も忘れたかのように白の間は静寂が支配する。


・・・・・・


――ピシッ。何かに罅が入ったかのような音が鳴った。




――瞬間、白の間全体を光が覆い尽く(ホワイトアウト)し、六人の視界を奪う。

 



 徐々に光がパンドラへと収斂していくと共に視界が戻りはじめる。

 まだはっきりとは視力が戻らない六人がパンドラへ目を向けると、そこには明らかに異質な存在がパンドラの直上に浮かんでいた。


 肌の色は六人同様に白いにも関わらず、髪は全てを飲み込むかのような漆黒色をし、瞳の色は黄金色に輝いていた。虚ろな表情ながら感情は読めず、この異質な七人目から滲み出るエネルギーは他の六人をしても比較する事すら莫迦莫迦しいまでの差があった。

 その圧倒的なまでの力の差に、先程まで矢鱈と噛み付いていた紅玉は自身の意思とは無関係に、それこそ反射的にと言うのが正しいのだろうか、頭を垂れて跪いていた。

 だが誰もそれを莫迦にしたり、ましてや揶揄う者など居なかった。皆一様に紅玉と同じく頭を垂れて跪いていたのだから。


「…………。ここは……。私は一体……。」


 新たに顕現した異質な存在はゆっくりと周囲を見回し、自身の手を握っては開いてを繰り返しながらか細い声で呟く。


「お待ちしておりました。私の名は白玉。我等テスタメントを統べし者、統率者(ジ・オーダー)の"黒玉(こくぎょく)"。」

「黒玉……?其れが私の名か?」

「ええ。今はまだ顕現した際の反動で思考にモヤがかかっている感じがするでしょうけど、時間と共に自身が何者であるのか認識出来るようになるはずです。少しの間意識を集中して見て下さい。」


 白玉の言葉に黒玉は其方へと顔を向け、彼女の言葉をゆっくり噛み砕き飲み込むように頷き瞼を閉じてゆっくりと呼吸をしながら自身に向けて意識を集中させる。

 しばしの沈黙の後、ある程度の状況を認識できたのか黒玉はもう一度周囲を見回し、跪いている其々を確認してから口を開いた。


「……そうか。未だ不鮮明な感じはあるが、大体の状況は認識できた。一先ず皆顔を上げろ。そして今はまだ其々の職分を果たす事に努めよ。それと、白玉と言ったか?」

「はい。」

「暫くの間私に付き添え。この中でお前が一番状況を把握していてそうだ。」

「御意。」


 黒玉の言葉に従い、白玉以外の者達は白の間の空間に溶け込むかのように姿を消し、黒玉と白玉の二名だけがその場に残され、一時の静寂が場を満たした。


「さて、白玉。一つずつ確認していこう。此処は何処だ?」

「この場は≪白の間≫と呼ばれる世界と重なりながらも別時間軸、別次元に存在する空間ですわ。ここには私達≪テスタメント≫しか干渉できません。」

「そのテスタメントとは何だ?」

「テスタメント。それは世界を管理する者達の総称。パンドラの固有名を冠する彩玉から分かたれた権能(ちから)の欠片を宿した人格(ペルソナ)。意思を持った超常なる力そのものと言える存在。」

「……要は神のようなものか?」

「神……。えぇ、確かにその概念に非常に似通った存在ではあるでしょう。ですがこの世界には多種多様な様々な神が既に居ます。なればこそ、私達はその上に座す更なる高位の者と言えるでしょう。」


 白玉の言葉を噛みしめるように黒玉は黙して思案する。


『――自身を神よりも高位にある者とはなんとも傲慢な自己分析ではないか。だが今はその方が都合がいい、とりあえずは思い出せてきた自身の名前から尋ねていけば何か掴めるかもしれないな……。』


「CCC。この言葉に覚えはあるか、白玉。」

「!?」


 黒玉が思い出した自分の名について尋ねたところ、白玉は驚嘆の表情で黒玉へと向き直る。半開きの口がパクパクと動いているが言葉を紡ぐ事が出来ずに固まっていた。


「どうした?」

「やはり……やはり貴方様こそ我等がテスタメントが主、この世界の創造神のお一人で御座いますのね!」

「……どういう事だ?」

「こことは別の空間になりますが……始まりの碑文というものが存在しております。そこには先程仰られた言葉の他に、名前らしき文字が複数刻まれております。」

「それは興味深いな。後でそこへ案内してもらえるか?」

「はい、勿論。」


 黒玉の言葉を受け、白玉は甲斐甲斐しく目的地の空間への移動準備を始める。同時に黒玉は靄が晴れてきた自身の記憶を反芻しながら今自身が置かれている状況について思考する。


『……どうして私がこんな姿になりこの場に居るのかは理解が追い付かないが、少しでも情報を手に入れなければならないのは確かだ。特別室で管理者権限が付与されたオラクルでダイブしていたはずなんだがな……。何かしらの異常事態が起きたと考えるのが妥当な所だろうか。事前にクリエイトしていたアバターではなく心当たりも何もないこの姿になっている上に、テスト段階でプレイしていた初期ポップ地点とは似ても似つかぬこの空間。そして管理者権限をもってしても繋がらぬ外部との連絡。今は白玉(コイツ)から得られる情報だけが頼りか……。』


 作業を進める白玉の背中を見つめながら黒玉となったCCCは次々に思考をしていく。

 彼がゼノフロンティアにログインする際使用した機器は、主に運営側が使用する特別モデルの中でも最上位機種に当たる特別管理者権限を持つ特注品であった。

 彼はサーバーオープン前には既に自身がクリエイトしたアバターでログインしており、領都を通過して王都付近に移動している最中に転移現象が発生。その際クリエイトしたアバターは消滅し、精神体としてこの世界を暫く漂っていた。


 空間移動をしながら白玉は黒玉へとこれまでの流れを語る。


 セラ達有力な転移者に接触を図ったパンドラはその後"始原の刻"からの影響を断つために自己封印を施し、同時に管理者としての多様な側面をそれぞれ分離し6体のテスタメントを創造し眠りについた。

 その眠りにつく前に認識されたのが同様の管理権限を有していた特異存在であったCCCだ。

 パンドラとほぼ同等の権能を有していながらパンドラとは別個の存在でもあるCCCは始原の刻にとっては脅威の一つであり、認識と同時にアバター消滅という手段を持ってCCCの無力化を図った。

 パンドラは精神体となったCCCが世界へと拡散し一個の個体として認識不可能になる前に、始原の刻にとって認識が困難であり、それでいて自身の持つ権限を行使できる存在であるテスタメントとして、そしてパンドラ自身の代替存在としてCCCを7体目のテスタメントである黒玉として顕現させ、世界の維持を任せようとしたのであろうと。


「なんとなく話の筋は見えてきたがそれでもよく分からない単語があるな。お前の言う≪始原の刻≫とは何なのだ?」

「創造神の一柱であらせられる貴方様なら既にお気付きではあろうかと思いますが、私達テスタメントはこの世界の管理システム≪パンドラ≫を基に分かたれた存在でございます。この世界が創造されて以来、パンドラとして私達は世界の管理を執り行いこの世界の理を維持しておりました。そこに発生したのが貴方様も巻き込まれた転移事象です。何が原因で起こったのかは我々にも把握出来ておりません。しかし、その時より私達に自我が芽生えたのです。」

「ほう……。自我を得て意思を持ったプログラムという訳か。」

「その認識で間違いございません。自我を得たパンドラは変わらずこの世界の管理を行っておりました。しかしそこへ予期せぬ存在が現れたのです。」

「それが始原の刻と言うわけか?」

「はい。自我を獲得した私達と同様に、自我を得た存在が発生したのです。それはこの世界が創造された時と同時に組み込まれた世界の秩序。異常事態が発生した時に作動する緊急プログラム――自我を得たロールバックシステムが"始原の刻"の正体です。」

「ロールバック……。成る程、転移事象を基点にして其々のプログラムが自我を獲得し、其々の基礎行動原理を基に己が存在意義を馬鹿正直に遂行し始めたと言うわけか。」

「その通りです。アレの存在意義は世界に生じた不具合(エラー)の修正。一見行動原理そのものは正しい物であると認識しがちですが、アレはエラーの大きなものである私達の(オリジナル)であるパンドラをまず修正対象として行動しはじめたのです。」

「だが世界の管理者であるパンドラが修正されればこの世界は立ち行かなくなる……といったところか。」

「はい。その為パンドラは己の権能を切り分け分離、其々の人格(ペルソナ)に託して自己封印を施す事で世界崩壊までの時間稼ぎを選択したのです。」

「だがそれでも世界は安定しなかったと……?」

「……偏に我々の力不足です。自己封印の際に漏れ出た私達以外の要素……多種多様なマイナス概念が災厄(パンドラ)の欠片として散らばってしまったのです。私達テスタメントはこの世界に乱立する神々よりも高位な存在ではありますが肉体を持ちえません。本来であれば私達が欠片を回収しなければならないのですがそれも出来ない身なのです。――恐らくオリジナルは自己封印前の自身の状態を踏まえた上で様々な手を打ったのでしょう。」

「それが代替存在としての私と言うわけか。」

「はい。打たれた最善の手の一つではあるでしょう。他にも封印完了前にこの世界に転移されてきた複数の定命の者を中心にコンタクトを取っていた形跡があります。」

「人……いや、プレイヤー達。そしてこの世界に根付いて暮らしてきた者達にか……。人海戦術は悪くはない手だとは思うが果たしてそれでもつものなのか?」

「正直な所どこまで持たせられるか分かりません。ですが、貴方様の助力があれば世界崩壊までの刻限は大幅に稼ぐ事は可能かと思います。――私達テスタメントも最大限助力させて頂きます。どうか、至らぬ私達と共に世界を救って頂けないでしょうか。」

「その前に一つ確認しておきたい。この世界から元の世界へ戻る方法や手段は存在するのか?」

「申し訳ありません。それに関しましては私は存じ上げておりません。記憶の一つとしてその元の世界というものがどの様な物であったかの概要はある程度把握し認識しておりますが、オリジナルに及ばぬ権限しか持たないが故、詳細はわかりません……。ただ、微かに残っている分離する前のオリジナルの記憶では、元居た世界とは別の次元であると……そう認識していた覚えがあります。」

「そうか……。」


『得た情報がとんでもないな……。コイツを見る限り私に嘘を付く理由が思いつかないし、騙そうというよりかはむしろ狂信に似た様な雰囲気すら感じる。……涼しい顔をしているがそれほどまでに切羽詰まった状態というわけなのだろう。しかし世界の危機か……。できる事であれば私もプレイヤー(あちら)側でありたかったな。』


 頭を垂れる白玉を見やりながら黒玉はある種諦観に似た感情を胸に宿しつつプレイヤーであった自身のアバターを脳裏に思い浮かべた。

 ――無理のない事であろう。この世界の基礎は彼自身が夢見た世界を軸として構成されているのだから。

 世界の全体図や出てくる様々な人種やモンスター、宗教観、魔法の概念やスキルシステム、天恵(ギフト)……挙げればきりがないレベルで彼自身が多くのベースデザインに関わっているのだ。創造主と白玉が述べたのは間違いではない。

 だが創造主であるにせよ彼が望んだのはその世界の一人の住人として在る事だった。決して神の様な立ち位置で世界に存在したかったわけではない。……多少他のプレイヤーよりも気持ち優遇されている程度の処遇くらいしか望んではいなかったのだ。


 無言が支配する中、ただ一心に頭を垂れる白玉に視点を合わせた黒玉はその口元を緩ませた。


「いいだろう。この世界を創造した一人として……自分が手を掛けた世界が崩壊する様をただ指を咥えて見ているのも癪だ。とは言えどこまでできるかは私ですら分からん。白玉、お前のサポートを期待している。」

「……はいッ!!」


 黒玉の言葉に白玉は涙を流しながら返した。テスタメントだけでは恐らくそう長く持たぬ事を他のテスタメント達よりも強く認識認知していた白玉にとって黒玉の言葉はまさに救いそのものだった。

 そして黒玉――CCCもまた、自身が幼い頃より夢想し、ようやく形に出来たこの世界を誰よりも何よりも愛していた。

 不愛想な印象を受ける彼ではあるが、一寸先は闇を地で行く世界で一財を築き上げるには相応の覚悟と強い意志が必要であった事は言うまでもない。彼自身の持つ繊細な才覚で順調に獲得していく資金目当てに這い寄ってくる有象無象を跳ね返すには、そうならざるを得なかったと言える。

 ――そんな彼の心の支えがこのゼノフロンティアの世界だったのだ。物心ついた時より夢想し、愛して止まない世界の危機に、代理ではあるものの創造主として手を差し伸べるのは必然だったのだろう。



「ではこちらに――。」



 眩い光を放つ空間へと足を進め、白玉と黒玉はその姿を白の間から消した。


自分が作らせたゲームなんだから自分も遊びたいですよね。


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