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【 Ep.2-020 ハルキニアと周辺国家 】



 ――現在二十七の領地を誇るハルキニア王国。その成り立ちは古く、現在より凡そ700年前ほど昔、小国"テンペルト"に生まれた統一王"ハルト・エル・ヴァーミリア"は周辺国を次々に征服し、大小様々な都市国家が入り乱れて覇権を争っていたハルキニアの地を統一。

 領土の中心に位置したハルカニス湖とその周囲に築かれていた要塞都市ハーゲンテを首都に制定して遷都、名を王都ハルカニスと変えて発展させ今日のハルキニア王国の礎を築いた。

 現在の国王は第23代目であり名を"リーブラ・エル・ヴァーミリア"と言い、王族でありながらも功績を立てた冒険者を名誉子爵に取り立てる等、幅広く人材の登用を行うなど懐の深さを見せ"賢王"と称されている。


 ハルキニア王国は西部には【パルキア戦王国】と国境を有し、南部は【レ・ノルン獣王国】、東部は【アガスセティア法国】、北部は【レガリア連合国】と国境を接している。

 南部のレ・ノルン獣王国と北部のレガリア連合国とは良好な関係を築いており同盟関係にある。アガスセティア法国とは相互不可侵の条約を締結しており比較的平和な状況ではあるが、西部のパルキア戦王国とは長く戦争状態にあり、大規模な戦闘は発生していないものの小競り合いは西部国境線では多く発生している。


 国土は肥沃な土地に恵まれ、他国からは豊穣の国と呼ばれる事もある。四季に似た季節があるが冬はなく、代わりに雨の季節と呼ばれる時期がある。

 西部を除けば比較的平和な国家ではあるが国土には幾つかのダンジョンや魔物の生息地が点在しており、そこより発生する魔物への対応にも力を入れている事で知られる。

 国に属する兵士は各地の村や町、都市の守備に割り当てられており、西部にも人員を割いている状態である事から人的資産の割り当てはできない状態ではあるが、冒険者の自由を約束し、冒険者ギルドを通じて活動させる事によりダンジョンや魔物の生息地から人々を守っている。

 現在そう言った手法は多くの国々で採用されてはいるが、そう言った先進的な取り組みを多く始めたがこのハルキニア王国である。


 この国の冒険者達にとって必ず話題に上るのが三大ダンジョンの話である。


 ――ダンジョンとは、空間中に漂う魔力の淀みが溜まりやすい場所等にダンジョンコアが形成され、周囲一帯を巻き込みながら時間と共に成長する生態構造物の総称である。

 多くの魔導士や研究者がダンジョンについて調査を行うも、発生するタイミングやダンジョンの成長する速度、内部構造やその構造体の材質の差、内部に発生するモンスター等の種類や強さなどそれぞれ基準が存在しない事以上の結論は出ていない。

 つまりはよく分からないが、一応は"生物"としての性質も示す構造物らしい。


 そんなダンジョンで有名な場所がこのハルキニア王国には三カ所があるという。

 一つ目が「ガラテア大迷宮」。王都ハルカニスの近く、古都ラーバリウム跡地に誕生したというそのダンジョンは、現在分かっているだけでも72階層もの深度を誇り、多くの冒険者パーティやファミーリアがダンジョンコアの制圧を夢見て日夜攻略に励んでいるという。

 二つ目が「ゲルクト大墳墓」。統一王ハルトの母国であるテンペルトの地に出没したこのダンジョンは、墳墓の名の通り多くのアンデッドが棲息する大規模ダンジョンの一つで、此方も50階層の深度まで確認されているという。

 三つ目が「ヴァイラス蟲宮」と呼ばれるダンジョンで、三組の冒険者パーティが合同で発見したという。場所は現在のアートゥラ辺境伯領のスィーダ平原奥にある巨大蟻塚の最奥部、女王の間の奥より侵入するという他ではあまり見る事の出来ない特殊なダンジョン形態をしており、キラーアントの巣の中を進んでからの攻略となる為殆ど調査の手が入っていないという。


 この三大ダンジョンの他にも各領地には小中様々なダンジョンが点在しており、攻略されて消滅するダンジョンや新たに発生するダンジョンがあったりと、冒険者達は功績を上げようと攻略に励んでいるらしい。



 次に文化についてだが、多神教である「ルクス聖教」を国教に制定しており、多くの者達が信仰している。国教はルクス聖教であるものの、他の宗教についても寛容であり信仰の自由も認められている。

 ルクス聖教には「火の神:アグニメルキド」、「水の神:ヴァルアクィラ」、「風の神:セルヴエアー」、「地の神:グラムエンデ」、「光の神:リヒトセフォー」、「闇の神:ゼブルフォス」の六つの神々を主神と定めていて、ボクが神殿で見た六体の神像はそれらを象徴していたらしい。

 その教えは調和・協和・平和の三軸を基に、真理・真実・真正を求めるといった物であり、ハルキニア以外の他の国々でも多く受け入れられている宗教で、最もメジャーであると言っても過言ではない。

 礼拝の作法も特に厳しいわけでもなく、両手を合わせて拝むもよし、指を組んで祈るもよし、五体投地で崇拝するもよしと自由であるとの事。

 またこの国では奴隷制度は撤廃されており、国内での移動についても厳しい制限などはしていない。加えて人種による差別も存在しないので、そういった開かれた国のイメージが広まって、国外からの移住者も多く流入する熱量のある国と本には記されている。



 次にハルキニア王国の西に位置する"エルマン大帝"治めるパルキア戦王国について。

 パルキアは比較的近年に台頭してきた国であるが、国土の大半が荒廃した土地であまり作物は育たず、ゆえに僅かな水源を巡っての内乱も絶えない戦乱の国である。ハルキニア王国に侵略戦争を仕掛けるのはそういった食糧面を理由としている部分が多い。

 ただ国としては貧しくはなく、領土各地に鉱物系モンスターを中心に生成するダンジョンが多く存在し、それらの魔物から得られる産出物を冒険者達から一定割合徴収する事で国家を運営している。

 またこのパルキア戦王国の首都ドライツェフェルト・フォートレースは巨大な神獣そのものに築かれており、「移動城塞」として知られていて難攻不落である。この国が比較的若い国であるにも拘らず、ハルキニアに匹敵するまでの領土を支配するに至った理由の一つとしてこの存在が大きい。

 そしてこの国は「リベラルタ正教」を国教としている。リベラルタ正教はルクス聖教とはかけ離れた思想をしており、教えの根幹は"弱肉強食"と言えば理解しやすいだろう。

 力ある者こそが絶対正義であり、弱者はその糧になる他ない。その為この国では奴隷制度が存在しており、戦奴、農奴、性奴など多方面においてその姿を目にする機会があるだろう。腕に覚えのある元冒険者の戦闘奴隷などはこの国出身である事が多いという。



 続いてハルキニア王国の東に位置するアガスセティア法国について。

 アガスセティア法国はハルキニアと同じくルクス聖教を国教として定めている宗教国家であり、首都である法都セルケンティアは歴史的建造物が多く立ち並び、多くのルクス聖教徒の巡礼の地となっており、日本でいう所の京都や奈良にあたるような都市と言えそうだ。

 国家元首はルクス聖教の法王が務めるが、内政については法王庁所属の12名の枢機卿により意思決定がなされている。

 国境は峻嶮な山々に囲まれた天然の要害となっており、国土は全体的に盆地状の平地が多くを占めていて大小様々な河川が有名な観光地でもある"シヴラド湖"へと流れ込んでいる。

 一見穏やかに見えるこの国ではあるが、更に東に国を構えている「ハノス聖王国」と戦争状態にあり、国教であるルクス聖教の教えとは裏腹に東部地域では血生臭い戦闘が勃発している。

 この戦争は比較的最近発生した物らしく、一説には宗教の教えの捉え方の違いによる宗教戦争であるとか、魔族が関わっている陰謀である等様々な噂が飛び交っている。

 元々はこの両国は一つの大きな宗教国家であったらしい。



 また南に位置するレ・ノルン獣王国はその名の通り獣人族が多く住み着いている国家で、獣王が治める王都ラ・バノンは多くの獣人族達のみならず、一部の魔族、一定の文化圏を築いている亜人種達が交流していると言う。

 この国の人々はリベラルタ正教を多く信奉しているが、自然信奉をしている者も多く内在しているお陰か、パルキアの様に血気盛んな戦乱の国にはなっていない。良くも悪くも大らかな国柄である事が特徴である。

 国を治める獣王は、10年に一度各部族より選び抜かれた代表達による7の競技の結果で選ばれるユニークな制度を採用している。

 ハルキニアとは遥か西方に位置する一つの大陸を制覇した強大な軍事力を誇る帝国との侵略戦争時より同盟を結び、以降この関係は獣王が代替わりをしても継承されている。



 最後に北に位置するレガリア連合国は先に述べた帝国の侵略戦争の際、大小様々な国々が帝国へと対抗する為に手を結んだのがその始まりと言われている。独立国家の集まりである為其々の国で独自の文化が醸成されているが、帝国が西方の大陸へ引き上げた今でもこの連合体が維持されているのはパルキア戦王国が台頭したからだと言える。

 連合国というあくまでも一つの国家としての体裁を整える為、所属各国より代表を選出しての評議会を設置しており、そこでの話し合いにより連合国全体の方針が決定される特殊な形態をとっている。形式上評議会議長が国家元首的扱いをされる事となっている。

 賢帝レガドゥスの旅路によると、小人族が寄り集まった国や虫を使役する文化のある国など、様々な国が共同体として一つの国家形態を成しているのは大変珍しいものであったとの事だ。


 連邦やら共和国やらと何がどう厳密に違う差なのかは説明はされていないが、この世界においてその辺りにツッコミを入れるのも野暮というものだろう。

 目を通した書籍から得られた情報を整理すると大体が今の様なものである。クロさんとも擦り合わせを行ってみたがほぼ同じような感じだったので認識の齟齬はないと思う。



 読み進めて見て思うのは、個人的にはやはりダンジョンという存在に興味をそそられる。

 この先旅をしていく中で、冒険者となったボク達には避けては通れない存在である事は間違いない。本や画面の中にその姿を見て、頭の中で想像していた世界そのものが今ボク達がいる場所なんだ。


 未だ本調子ではない身体ではあるものの、自身の中の深いトコロが熱く疼くのを感じる。



 ――熱に中てられた身体を冷やそうと背筋を伸ばして欠伸を掻いて辺りに目をやる。

 五冊は少ないかと思ったが、集中して読んでいたせいもあってか窓から差し込んでくる明りは橙色に染まり始め、大分傾いて来ていた。




普通に説明回的な感じ。

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