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【 Ep.2-014 スィーダ平原の脅威 】



 ケントを釣り役にして適度な数のキラーアントを引いて来ては殲滅を繰り返す。時折キラーアントに混ざってジャイアントロリポリが襲ってきたり、グラスイーターやギガヤンマの奇襲などを受けるが、この人数での戦いに慣れてきた事もありそこまで苦労する事なく殲滅していき、順調に調査を進める事が出来た。

 状況的に連戦になる場面はあるものの、周囲の安全を確保して適度に休憩を入れて行動しているので、マナ不足に陥るといったような致命的な状況は回避できている。そうして何度目かの休憩を入れていた時の事だ――




「結局さぁ、キラーアントの弱点は火属性魔法、触角、腹部、後は関節部って事であってるよな?」

「大まかにはそれで問題ないかと。もう一つ付け加えるとするならば、水属性魔法の一部も他の属性魔法よりかは効果が高いというとこですかね。」


 見通しの利くちょっとした丘の上で休憩を取りながら、キラーアントの生態について確認も兼ねてケントが尋ね、チグサが更に補足情報を付け加える。


「ライブラリと見比べて変わっている点は、集団行動時の個体数の増加と連携行動の上手さってところよね。」

「注意点としては触角を斬り飛ばしたりした場合は、若干の攻撃力の上昇と攻撃性が上がるって所だね。」


 ライブラリを開いて掲載データとの差異を確認しながらシオンがメモを書き進める。隣に座っているリツもシオンにアドバイスをしてサポートしている。

 

「レポートとしてより良いものにするなら、エリアの情報もより正確に報告を上げたいところっすね。モンスターの出現傾向とかあれば危険なエリアを回避しながら採集したりとかできそうっすから。」

「一応大まかな分布図なら記録していますので、村に戻り次第私の方でそこは手を加えておきますよ。」

「あ、マジっすか?助かるっすよクロさん。」


 シキとクロさんはマップ情報に関する部分を担当しているので、その部分について相談し合いながら作業を進めている。

 ボクはというと、インベントリから倒した敵からドロップしたり採集したアイテムを一部取り出して簡単な確認作業をしている最中だ。


「このジャイアントロリポリの外郭とか日本鎧の大袖の構造に似てて防具の素材に使えそう。こっちのグラスイーターの後ろ脚の腱とか翅も使い道多そうだね。」

「そうですね。ギガヤンマの翅や頭部をはじめ、キラーアントの胸部の外殻も使い道が多そうです。」


 遭遇頻度の低いギガヤンマやグラスイーターの素材は売っても高く買取されそうだし、素材としても中々良さそうな感じがする。キラーアントの胸部外殻は少し加工するだけでも胸当てとして使えるくらいの防御力がある。ドロップや採集情報もライブラリの更新データとして有用な情報だろう。


 ベネとマリー、セトは見張りに立ってそれぞれ120度ずつ警戒範囲を担当して周囲の警戒にあたっている。因みに休憩毎に見張り番は交代する持ち回り制だ。

 そんな三人のうち、遠くに巨大な蟻塚の見える方向を担当していたベネが口を開いた。


「皆、休憩は終わりだ。東側からデカイ蟻がこっちに向かってきている。まだ距離はあるが、一直線に此方に進んできているぞ。」


 ベネの一言で皆それぞれアイテムをインベントリに仕舞ったり、レポートを閉じて戦闘態勢へと移行する。


「数は?」

「目視できた数でいいなら七匹。そのうちの一匹が他よりデカイな。」


 背中に懸架していた森羅晩鐘を利き手で引き抜きながらベネに敵の数を尋ねる。キラーアントが七匹でそのうち一匹が他より大きいとなるとネームドモンスターだろうか?何にしてもこれまでとは違うパターンでの襲撃なので警戒度合いを強めてそれぞれ待ち受ける。


 それぞれに強化魔法(バフ)を掛けて迎撃する態勢を整え、1分が経過したあたりでその集団は姿を現した。

 先陣を切るは二匹のキラーアント。その後ろにも二列でキラーアントが続き、更にその後方に首周りに飾りのような突起が目立つ頭部が大きいキラーアントが二匹が続き、最後にベネが言っていたデカいキラーアントが姿を現した。デカさもさることながら、頭部はその体と比較してアンバランスとも言えるまで肥大化し、ゴツゴツとした角状の突起が幾つか生えていて防御力も相当なものであると思われた。

 

「みんな気を付けて!前の四匹は普通のキラーアントだけど、一番デカい奴はキラーアントオフィサー、首飾りみたいなのがついてる二匹がキラーアントソルジャーよ!」

「"将校(オフィサー)"に"兵士(ソルジャー)"だぁ?それって基本巣の内部とその周囲の限られたエリアにしか居ないはずじゃ?」

「そんなの知らないわよ。現に目の前に居てるんだからそれが答えでしょ。」

「理由は倒してから考えればいい。行くよ、みんな!」


 ライブラリを開いていたシオンがデータを照合してそれぞれの名前を叫ぶ。敵の先頭が交戦範囲に入ると同時にケントが<挑発(タウント)>を使用して敵対値(ヘイト)を稼ぐ。普通のキラーアントはそのままケントに攻撃を仕掛ける動きを取るが、将校(オフィサー)と称される他の個体より大きなソレはスキルが利いていないのか、ケントに襲い掛かる仕草も取らずボク達パーティから一定の距離を置いて止まり、感情の見えない複眼で此方を値踏みするかのように見つめている。

 そのオフィサーの横には此方もまた<挑発(タウント)>に釣られないソルジャーが二匹挟む様にして此方を窺っている。


 これまでとは明らかに違う敵の行動に嫌な予感がする。想い起してみれば、事前に渡されたこの平原に出没するモンスターのリストにキラーアントオフィサーの名称は載っていなかった。キラーアントソルジャーは稀に遭遇するという情報は出てはいたが、眼前のこの状況はその情報を上回る危険性をパーティ全体へと認識させるには十分な事態だ。

 とは言え、オフィサーとソルジャーに注意ばかり払っているわけにもいかない。現にケントへは四匹のキラーアントが襲い掛かっているのだから。


「チグサとシキは右翼から、ボクとセトは左翼!マリーは隙を見て魔法攻撃を。シオンはケントの回復をメインにリツはそのサポート、クロさんは弱化魔法(デバフ)で支援。ベネは後衛陣の守備に専念、あの三匹の動きから目を離さないで。他も常にあの三匹を警戒しつつやるよ!」


 そう指示を飛ばしケントの左側にセトと展開し、近いキラーアントに早速攻撃を加えていく。オフィサーとソルジャーが本格的な行動をとる前に出来る限り数を減らしておきたい。


「セト、こっちに気を引くからその間に触角を処理して!」


 言い出すな否やセラの猛攻がキラーアントを襲う。大振りな攻撃はダメージ期待値に対して隙も大きく、オフィサーとソルジャーがいつ動き出すかわからない状態で出すわけにはいかないため、槍の基本スキルである<刺突>を主体にして攻撃を加えて防御に意識を誘導させ、セトが狙い易い様に徐々に位置をずらして行く。

 チラリとオフィサー達の方を伺うと、まるでキラーアントを実験台にして此方の力量を図るかのように先程の位置から動かずに観察しているように見えた。

 

 シュッ!という音と共にセトの手から放たれた投げナイフがキラーアントの触角を綺麗に二つ飛ばし、大事な器官を失ったキラーアントは混乱状態に陥り、その隙を見逃さなかったセラの<パワースマッシュ>によって頭部と胸部を繋ぐ体節を正確に叩き切った。

 逆側のチグサとシキのペアも同様に、チグサが触角を斬り飛ばしてそこへシキの<寸勁>を頭部へ当てて内部を破壊して倒している。

 対処する相手が二匹のキラーアントであるケントは、これまでの戦闘で相手の行動パターンを大体把握したおかげで相手の攻撃を難なく往なし、<シールドスマイト>で片方を一定距離を取って停止しているキラーアントオフィサー達の前の方へとノックバックさせ、残りのキラーアントへ<シールドスタン>を決めて<気絶(スタン)>効果が発生したのを確認した後横へずれ、そこへマリーの<火矢(ファイアアロー)>が飛来してキラーアントの頭部へ突き刺さった。

 突き刺さった<火矢(ファイアアロー)>の鏃に当たる部分は硬い頭部の外殻を貫いており、程なくそこからボッと火が噴き出し、まだ意識のあったキラーアントを頭の内部から焼き殺した。

 上位種を除いて一匹だけとなったケントに吹き飛ばされたキラーアントは、数的不利などお構いなしにケントへ再度襲い掛かろうと一直線に向かってくるが、タイミングを合わせた<シールドスマッシュ>で頭部を盾と地面によって挟まれ、そこへチグサの振るう一閃で頭部と胸部が切り離され絶命した。


 ガチガチガチチチチッ!!!!!!


 唐突に鳴らされたその音の方へと顔を向けると、キラーアントソルジャーが首周りの飾りの様な突起を誇示するかのように振るい、通常のキラーアントよりも大型な大顎を擦り合わせて音を鳴らしていた。


「来るぞ!!!」


 ケントが言うのが速いかというタイミングで二匹のキラーアントソルジャーが猛牛の如き勢いで此方へ突進してくる。

 一列縦隊で突進を仕掛けてきたソルジャーは、前方の一体がケントに襲い掛かるも盾によって阻まれるが、後方に居たもう一匹は止められた方の背中を駆け上って後方に居たマリー達へ跳びかかる。


「そうはっ、させんッッ!!!!」


 ブゴォォオオオオオッ!!という轟音と共に下から掬い上げられたベネデクトの戦斧が跳びかかってきたソルジャーの大顎とぶつかり合う。

 ガギィィイインと金属同士がぶつかったような音を鳴らした後、ベネデクトの戦斧の刃はキラーアントソルジャーの大顎で止められた。


「止めたところで攻撃はまだ終わってねぇぞ!!!」


 ベネデクトはそう発しながら刃先に食らい付いているキラーアントソルジャーをそのまま戦斧ごと振り回して地面に叩き付けようとするが、キラーアントソルジャーは大顎を刃から放そうともせずに食らい付いたまま腹部を折り曲げ先端から液体を噴射した。


 ジュゥウウウウ……


「ッぐゥゥゥゥウウおおああああああありゃあぁぁぁあああああああーーーッ!!!」


 ゴシャッ!!!ピギュブジュ!!!


 キラーアントソルジャーが放った液体、それは恐らくギ酸。現実世界ではその毒性はピンキリではあるものの、純粋な物質で言えば劇物にも指定される。

 後ろにシオンやマリー達後衛陣がいる為避けるという行動が出来なかったのだろうベネは、ギ酸を浴びた肌に水疱を作りながらもそのまま戦斧を地面へ叩きつけてキラーアントソルジャーを始末した。


「ベネ!!」

「大丈夫なん?!」

「大丈夫だ、ヒリヒリ痛いが死にはしない。」

「死んでないってだけで大丈夫じゃないでしょうが!<治癒(キュア)>!」


 シオンの回復魔法によって、ダメージを受けて水疱も消えていく。マリーもその様子を見てホッとした表情を見せるがその表情もすぐに凛とした表情へと戻る。まだキラーアントソルジャーといまだに動きを見せないキラーアントオフィサーが残っているのだ。


「そっちは無事か、ベネ!?」

「ああ、ダメージは食らったがすぐに回復して問題ない。」


 前方に集中して後方確認できないケントが声を掛けて確認しながらもう一匹のキラーアントソルジャーの攻撃を捌く。

 一匹だけとなったキラーアントソルジャーはケントだけでなく、セラやセト、チグサとシキの攻撃にも対応しながら果敢に攻め立ててくる。単純な強さの比較として、通常のキラーアントを"1"の強さで基準にすると、ソルジャーは"3"に相当するだけの差がある。


 だがいくら三倍の強さを誇ると言えども、数的優位をひっくり返すまでには至らず、其々の攻撃を受けきれずにダメージを重ねついに力尽きた。


 最後に残ったキラーアントオフィサーは尚も一歩も動かず此方の様子を観察していたが、キラーアントソルジャーが息絶えたのを確認するとゆっくりとその頭部を持ち上げ、角状の突起の中に紛れていた穴の開いた器官から『ブォオオオオオ』という音を鳴らし、胸部背面側の気門からもピュウという音を立てて呼吸をした。


 呼吸を終えたのであろうキラーアントオフィサーは此方に向けて大顎を開いて威嚇した後、これまでとは態度を一変させて此方へ向けて攻撃を開始した。


 ガシッガシッ……ガッ!!!


 前脚で地面をかいた後、その巨体に似つかわしくない速度で加速して突っ込んでくる。強靭な六本脚から生み出される運動エネルギーをそのまま突進力とした強力な突進スキル<猛突進(ブルチャージ)>を繰り出してきた。

 これまでキラーアントソルジャーの<突進(チャージ)>を捌いていたケントだったが、体格も違い更には頭部に突起を生やしたオフィサーの<猛突進(ブルチャージ)>を受けきる自信は流石に湧かない。


「あれは受け止めれねぇ!みんな避けるぞ!!」


 ゴオッ!という音を立てて巨大な弾丸と化したオフィサーの<猛突進(ブルチャージ)>を、これまで何度も見てきた<突進(チャージ)>の経験から薄くはなったが微かに見える攻撃予測線のおかげでギリギリ回避する。


「なんて強さしてんすかコイツ……。」


 息を飲みながらそう漏らすシキの目線はオフィサーが駆け抜けた後の地面に向けられている。未だ勢いを止められないオフィサーを警戒しながら其方へ目を向けると、突進力を生み出すために深く地面に突き刺された脚の後が進行方向とは逆方向に大きく抉られている。

 プレイ序盤に戦ったマイティボアも<突進(チャージ)>を使用してきたが、その通り過ぎた後でもここまで強烈な足跡にはなっていなかった。


「どうすんだあれ。攻撃しようにもあんな突進は止めれねえぞ。」

「腹部をすれ違いざまに斬ってみましたが、他と違って刃が弾かれました。」

「あんな速さで動かれたら流石にうちらも魔法あてれんし、それ以前に詠唱に集中でけへんで。」


 連発出来るかは不明だが、<猛突進(ブルチャージ)>を何度も使用されればいずれ避け切れずに誰かが致命傷を受けかねない。だが現状有効な対抗策が思い浮かばない。


「リツ、全員に<纏風脚(エアステップ)>撒いて!あれが止まったとこを狙って攻撃するよ。」


 すぐさまリツから全員へ<纏風脚(エアステップ)>が撒かれ、オフィサーの<猛突進(ブルチャージ)>への対策を取った上で攻撃の糸口を掴むための行動を開始する。


 バフを掛け終えたと同時に転進し終えたオフィサーが再度<猛突進(ブルチャージ)>を仕掛けてくるが、<纏風脚(エアステップ)>により回避能力が向上した為、初見時よりも難なく回避する事が可能となり全員無傷で回避した後はオフィサーの動きを注意深く観察する。


(これだ!!)


 猛烈な勢いで駆け抜けていくオフィサーを注意深く観たセラは"何か"に気付く。


「みんな、気付いた?」

「何が?」

「わからへん、なんや?」

「もしかしてっすけど……脚の動かし方っすか?」


 セラの確認にシキ以外が首を振るが、シキもセラと同様に気付いた事を口にした。


「うん、脚の動かし方であってる。左側の中央の脚が動いてる時は右側の外側の脚二本が動いていて、残りの三本の脚は止まってる。左側の外側の二本の脚が動いてる時は右側の中央の脚は動いていて他の三本は止まっている。蟻の脚の動かし方なんて今まで知らなかったけど、でかくなったおかげで分かり易くなってるね。」

「あの速さなのによく分かりましたね。」

「二人ともアニールだから動体視力が高いんじゃない?」

「ならうちの旦那はどーなんよ?」

「……牛だからじゃね?」

「あー……なんか納得。」

「言ってる場合か!もう一回来るぞ!!」


 軽くディスられているベネデクトの注意喚起によって三度目の<猛突進(ブルチャージ)>を回避する。今回は皆話に上がった脚の動きに注目して確認している。


「なるほど、確かにあの脚の動き……。状況を打破できるかもしれませんね。」

「けど今のままじゃ相手が速すぎて有効打が与えられないよ?」


 リツの言うように今のままではオフィサーに攻撃してもその速さゆえに正確に部位破壊を狙う事は不可能だ。だけど―


「ベネ、生活魔法の<穴掘(ディグ)>なら何回使える?」

「ん?あぁ、そうだな……俺のマナポイント的に3回がいい所だろうな。」

「なら次あいつの攻撃回避したら通過した後に全部使用して。」

「おう、任せとけ。」

「セト、ベネが<穴掘(ディグ)>を使った所へボク達は<手水(ハンドウォータ)>を使用して泥濘(ぬかるみ)を作るよ。」

「は、はい。」

「成程、相手の<猛突進(ブルチャージ)>でこの辺りの地面は大分抉られていますし、この状態でその方法を取れば泥濘は作れますね。」


 そう、チグサの言うようにオフィサーの<猛突進(ブルチャージ)>の影響で、通過した後の地面が強く抉られてそこかしこが柔らかい地面になっている。そこを更に掘って水を流し込めば如何にオフィサーの突進力が凄くても、泥に脚を取られて速度は落ちるはずだ。


「なら俺はそこへ上手く誘うのが仕事ってわけだな?」

「いけそう?」

「ああ、やって見せるさ!」


 メインタンクのケントは自分の仕事をすぐさま理解して確認をセラにとる。時間がないとはいえ急いだ結果失敗するわけにはいかない為、こういう所はしっかり意思疎通のコミュニケーションをとるのだ。


「次、くるぞ!!」


 ベネの警告と共にオフィサーの強力な突進が迫ってくる。だがバフが乗った状態である事と動きが直線である為、その動きに目が慣れた天兎メンバーは難なく回避できるようになっていた。


「ベネ!!」

「任せろ、<穴掘(ディグ)>!<穴掘(ディグ)>!!<穴掘(ディグ)>!!!」


 ベネの連続詠唱でオフィサーの通過した後の地面にドリル状の穴が開いていく。


「「<手水(ハンドウォータ)>!!」」


 セラとセトの二人もベネデクトに続いて詠唱し、掌から勢いよく放水し始める。

 キラーアントオフィサーの<猛突進(ブルチャージ)>の往復で緩くなっていた地面は、それぞれの魔法でズブズブの泥濘が出来上がっていく。

 

「っしゃ、後は俺が誘導する!」


 気合いを入れるケントを先頭に鶴翼の形に布陣して次の<猛突進(ブルチャージ)>に備える。すぐさま反転したオフィサーが此方に向けて猛突進をしてくるのが見えた。


 ガンガンガン!


 向かってくるオフィサーに向けてケントが自身の盾を激しく打ち鳴らして<挑発(タウント)>をしかけて敵対値(ヘイト)を更に稼ぐと、オフィサーはやや広がって布陣している他の面々を無視してケントにまっすぐ突撃していく。


 ケントまで後10m……7m……5、4、3――   ゴッ!!


「っぶねええええええええ!!!」


 ギリギリまで引きつけたケントは、手持ちの盾を相手に投げつけ目くらましがわりにしてバッと横跳びでギリギリ回避した。


 頭部にケントの盾が直撃しても尚オフィサーの突進は一切ぶれる事なく直進を続けるが、セラ達が仕掛けた即席の泥濘ゾーンに足を踏み入れた瞬間バランスを大きく崩すが、即座に他の脚が支える事により直ぐに体勢を立て直してそのまま突進を続ける。だが泥濘の効果は確かにあるらしく、その速度は明らかに落ちている。


「今だ!」

「フンッ!」

「ッハ!!!」


 セラ、ベネデクト、チグサの三つの剣閃が奔り、それぞれ正確に止まっている脚の関節部を斬り落とす。


『ギイイイイイイイィィィイイイイイイイイッッ!!!!!!!!』


 悲鳴と共に自立出来なくなったオフィサーは体勢を崩しながら泥濘を滑り進む。その先には構えを取っているシキとマリーが待ち受けていた。


「フォーーーースバスタァァァアアアーーーッ!!!」

「―――集い、纏まれ、一筋の焔!盛る炎よ、我が敵を穿て!<焔穿(ピアシングフレイム)>!!」


 ミシッと言う音と共に、泥濘の終着地点で気を練っていたシキのスキルがオフィサーの頭部に刺さり、その頑強な外殻から浸透した気の波が内部を破壊する。

 同時にマリーの放った<焔穿(ピアシングフレイム)>が動きの止まったオフィサーの頭部を穿ち、内部から体を焼き焦がしていく。


 共に溜めの必要なスキルと、そこそこ長めの詠唱を必要とする魔法である。仲間が必ずやりきると信頼していなければ自殺行為にも等しい行動だが、何年も共に狩りだけでなく、戦場で背中を預けあった者同士、なんだかんだ言い合いはすれども互いの腕を信頼しているからこそできる芸当だ。


「やったか?!」

「手応えありっすよ!!」

「相手の死を確認できるまでは油断せぬ様。」

「んじゃとりあえず頭斬りおとしとこ!せやっ!!!」


 ズバァンッ!!


 ゴロリと巨大なオフィサーの首が地面に転がり落ち、身体の節々から煙を上げてズゥンとその巨躯を大地に横たわらせたキラーアントオフィサーの姿を確認して、ようやくセラ達天兎メンバーは安堵の表情を浮かべた。




久しぶりの更新です。

忙しい時期を乗り越えたので継続して更新出来る様に書き進めていきたいと思います。

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