【 Ep.2-008 欺瞞作戦 】
プレイイングGMであるカサネさんの覚悟を決めた表情、そして深々と頭を下げてプレイヤー側にお願いを頼み込む姿を見たボク達は一瞬息を飲む。
「まずは頭あげてぇや、カサネさん。ワテは協力するんは吝かやないんやけど、どうやって他の奴らの動きを制限するつもりなんや?」
「そうですね、それについては私が悪者になろうと思っています」
「悪者……?なんや言うてる意味がよーわかりまへんのやけど」
「簡単な話ですよ。現状プレイヤー達が当てにしているのはまだ運営側ですよね?そこを利用させてもらいます。既に私は自らがプレイイングGMであるという事を明かしていて、多くのプレイヤーがそう認識していると思います。この状況を最大限に生かし、運営側の対応として復旧対応の為に七日間はこのエリアから出ないように通告を出すつもりでいます」
「よーするに運営側の復旧対応の為にこのエリアから出るなっちゅー話をしてプレイヤーを騙して留まらせるって話やんな?」
「ええ、そうです」
「待って下さい!そんな事したら七日過ぎた後のあなた自身はどうされるんですか!?騙されたと気付いたプレイヤーが何をするか……危険なのではないんですか?」
カサネさんのお願いについてはボクも協力するつもりではある。協力の約束をした手前という事情もあるが、今のこの状況について可能な限り情報を集めるには都合がいいし、義理というものもある。
マルコがどんな手段で他のプレイヤー達をこのエリア内に留めるのか問い、その回答に対してホイミさんはカサネさんの身の安否を心配するが、ボクの予想が合っていればその心配は杞憂だと思う。なんせカサネさんはGMだったのだから相応のステータスを持っているはずだ。
「あぁ、その問題は想定済みですよ。七日過ぎた後については正直に先程の推論が裏付けされたものとして公表し、その後の行動についてはそれぞれのプレイヤーに任せるしかないでしょうね。勿論ホイミ氏の言う私の身の安全という問題はあるんですが、これもまたどうにかなると思っています」
「他のプレイヤーも馬鹿じゃねえんだ、俺達は腕に覚えがあるとは言ってもそれ以上の奴は必ず出てくるだろうし、数に任せて攻め立てられればあんただって無事じゃ済まないはずだろ」
「今の私のステータスなんだけどね、一部異常が生じているもののGM専用のステータスのままなんです。つまりは専用のスキルと魔法も一部はそのまま使えるって話。えーっと……そうですね、その一部ではあるのですけど時空間魔法っていう特殊な魔法を私は使えるんです。想定されていた使用用途は問題を起こした処罰対象者を別空間へと隔離して警告をしたり、キャラクターを一次凍結をしたりとかする為の魔法です。その手の特殊な魔法なんですが、君達は疑問に思ったことはない?この村と呼ぶには少し大きすぎる中に凡そ一万人ものプレイヤーがどこに宿泊しているのか」
「そういえば不思議に思っとったんですわ!いくらなんでもプレイヤー数に対しての宿の数が足らへんのにそこらで寝てる奴見ぃひんなぁって」
「そう、そこで私の時空間魔法の出番というわけです。時空間魔法の中の一つに空間拡張というものがあって、指定した座標の空間を任意の広さまで拡張する事が出来るんです。この魔法を応用したものは君達も身に着けているはずですよ」
「あっ、もしかしてこのインベントリポーチがそれかいな?」
「ええ、ご名答。ポーチを対象に空間拡張の魔法を魔法付与したものがそれです。それと同じ事をここの村の宿全てにしてきたってわけです。おかげで魔力切れ擦れ擦れまでいってこの状態ですけどね」
(GMとしての能力は予想していたけどここまでとは……少しどころじゃないぶっ壊れ能力じゃないですかね……)
そうセラが思うのも無理はない。この場に集った面々もその馬鹿げた能力に呆けている状態だ。だが、そこまで突出したステータスを有しているのなら先ほどの懸念はそこまで問題ではなくなるだろう。
「いや、いくら時空間魔法が優れているといっても、あんた自身を守れる魔法ってわけじゃねぇだろう。自衛用の魔法も習得済みなんだろうが、魔力だって有限な以上魔力切れを狙われたら無事に済むとは思えねぇ」
「確かにその指摘は間違ってはいないですね。だけどそれもこの上級マナポーションがあれば恐らく事足りるでしょう。君達同様私達にも専用のインベントリポーチが用意されていて、一部のアイテムはそのまま残っていたんですよ」
「だがそれでも絶対って事はねぇ。俺たちプレイヤーにとって、この状況下であんたに居なくなられたら運営側との接点が一つ消える事になっちまう。それにこの世界について恐らく一番の知識を持っているあんたを失えばそれだけで俺たち含めたプレイヤーの生存率に関わりかねん」
カサネさんの説明にもベックは食い下がり懸念を伝える。彼の言う通り、現時点でカサネさんを失う事はボク達プレイヤー側の立場で見れば大きな損失になりかねない事態だ。領都にもう一名プレイイングGMが居るとはいえ、現実世界への接点となりうる可能性を持つ運営側の人間を失えばそれだけ現実世界への帰還の可能性が下がるのは必至だ。
冷静であれば運営側の人間を害するなんて行動をとればどうなるか火を見るより明らかなものだが、騙されたと感じて激高し興奮状態にある状態であるならばそう言った判断は恐らくできないだろう。
また知識の点で見ても損失は計り知れないともいえる。転移したとはいえ、なんだかんだでこの世界はゲームのゼノフロンティアの設定がベースにあるのか、様々な事象がそこに起因している。運営側のカサネさんであれば、ベースであるゼノフロンティアの仕様や知識をプレイヤー側より多く有しているのは間違いない。
以上の点を考慮すれば、確かにベックの様に慎重に慎重を重ねた懸念を示すのは当然とも言える。だが同時に当の本人もその点においては十分理解して考えているはずだ。
「そうですね、君達がそう考えるのは至極当然の事だね。勿論私自身単独で行動するという事はしないつもりですよ。だからこそ君達と協力関係を結んだ事を公表し、迂闊に手を出せない為の抑止力になってもらいたいのです。勿論それだけではなく、村の守備兵の方々にも協力をして頂くつもりです」
「そういう事ならいくらでも俺たちを利用してくれればいい。あんたの身辺警護なりいくらでも使ってくれ」
「私達はこの村を拠点に救護関係で支援させていただきますよ」
「ワテらは戦闘面は他の皆さん方と違って得意やないんで、流通方面での支援をできる限りやらせてもらいますわ」
カサネさんより改めて協力を求められ、ベックを筆頭にしたフロントラインはカサネさんの身辺警護を、ホイミさん達戦場の看護師は救護関係でプレイヤー達の支援を、マルコ達黄金の交易路は流通方面で支援をすると表明した。
「ではボク達はこの村の周辺の安全確保と治安維持で協力させて頂きます」
「俺たちは領都方面へ向かいたいと思います」
実のところ転移後の村の周りのモンスターの様子に一部変化がみられているらしい。この情報は配られた資料の中に不確定情報として記載されていたのだが、どのモンスターがどのように変化しているのかがよくわからないという。実力的な問題を踏まえれば、そういった調査に向かうべきはボク達か白鯨が妥当だろう。ただ、人員的な面を考慮した場合最も適任なのがボク達天兎なのは間違いない。
セルはボクの言葉を受け意図を読んだのだろう、先行しているプレイヤーがいると思われる領都へ向かう事を宣言した。ボク達と同等かそれ以上の実力を持つと思われる白鯨であれば、領都への道中遭遇するであろうモンスターへの対応を心配する必要性は限りなくゼロに近い。彼らもまたユニークモンスターからドロップしたと思われる魔晶核を保有しているのだから。
「あぁ、君たちになら安心して任せられます。後ほど出立に必要な物資を手配しますね」
「ほんなら後はこっからのそれぞれの予定の詰め作業かいな?」
「そうですね、大筋の方針は決まったのでここからは細かな詰めの話を進めましょう」
――そうして今後の流れについて細かな部分が詰められていった。
各パーティの持ち回りや担当箇所や時間の割り当てが決められ、この村へ持ち込まれる物資を可能な限り均等にいきわたるようにする為、黄金の交易路には特別に先行する形で商会設立許可証が発行された。戦場の看護師には治療院と教会への紹介状と冒険者ギルド公認の認定回復士の称号が付与され、白鯨は移動手段として冒険者ギルドが馬車を手配し、領都までの必要物資とあちらのプレイイングGMへの紹介状等の面会上必要になる物を用意され、天兎も調査の為の支援物資の提供と必要と思われる情報の提供を受ける事が決定された。
それら全ての決定事項は冒険者ギルドからの特別指名依頼という形でそれぞれのパーティとファミーリアに依頼され、各位合意の下受注する形で処理された。これにより主に村の中を行動範囲とするフロントライン、戦場の看護師や黄金の交易路も安定した収入を得る事が可能となり、期間内の生活基盤をひとまず確保する事が可能となった。
諸々の手続きが済んだ後、正午より冒険者ギルド代表兼プレイイングGMであるカサネさんがプレイヤーへ向けたアナウンスがあるという告知が出され、正午前に再集合という確認をして一旦解散という流れになった。
ようやく落ち着いてき始めたのですが、一週間後にまたそれなりの規模の行事が……。
可能な限り投稿できるように頑張ります。
章ごとの登場人物の軽い紹介とか地名、魔法の一覧とかあった方がいいですかね?




