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【 Ep.1-023 分配品 】



「―――ここは……」


 薄っすらと差し込む光にぼんやりとしていた意識が徐々に覚醒し、セラがゆっくりと瞼を上げる。


「お、気が付いたかセラ」

「もー……ほんっと無茶するよ……心配したんだよ?こっちの身にもなって欲しいよ」


 安堵の表情を浮かべるケントとリツがセラの顔を覗き込む。≪天恵(ギフト)≫の使用によりマナ欠乏症を起こして倒れたセラの治療に当たったリツが文句を言うのも仕方ない事だろう。


「ごめんリツ。アイツは……?」


 倒れる前までの記憶では、巨大な「マンハント ハンギング」の口腔部に自らの得物を叩き込んだところまでしか覚えていない。


「勝ったよ、セラのおかげでね」

「そっか……倒せてよかった」


 セラの疑問へケントは簡潔に答える。フゥと息をつき、事態を飲み込み始めたセラ。どうやら"とっておき"は上手くいったようだ。


「ところで皆は?」

「無事だよ。ほら起き上がって」


 差し出されたリツの右手を握ってセラは上半身を起こす。上半身を起こしたセラに気が付いた、"悠久"の5人と"月光"の3人が近寄ってくる。皆それぞれ軽い負傷は残っているものの、表情は一様に明るい。


「気が付いたみたいだね」


 エイジが爽やかに語り掛ける。


「そっちは全員無事?」

「最初にやられた一人を除いてみんな無事さ。本当に助かったよ、パーティを代表して礼を言わせてほしい。君達が居なければ全滅どころかこのパーティにMPKトレインを引き起こしたっていう汚名を被らなければならなくなるところだった」

「いいって。成り行きだったし」


 照れくさそうなセラの反応に思わずエイジはホッと安心した表情を見せ、悠久のメンバーは微笑む。実際問題セラ達の助勢が無ければ確実に全滅してデスペナを被っていただろう事は嫌でもわかるレベルの相手だったのだ。そんなモンスターをあのまま引き回して逃げていたら、道中遭遇するであろう他のパーティを巻き込んで間接的に殺す事になっていたかもしれないのだ。


「俺達も助かった。あんた達がいなけりゃ間違いなく全滅してデスペナ背負ってたところだ。感謝する」


 パーティ"月光"を代表してリーダーのザインが頭を下げる。残りの2名もザインに合わせて頭を下げてくるあたり、結構礼儀正しい連中なのかもしれない。


「そっちも気にしなくていいって」


 はにかむセラの顔を見て月光の3人組は少し顔を赤らめる。今の当人にその自覚はないが、セラのアバターは間違いなくかわいさの極致たるレベルである。そんな少女の顔を直視した三人は、例えそれが電子世界の虚像(アバター)だと認識していても照れずにはいられなかった。


「あ、そういえばボクらの事は?」

「大丈夫。セラが気絶している間に俺達の事は紹介しておいたよ」


 とっさのレイド戦突入だった為、自分たちの紹介はケント任せでしっかりやっていなかった事に気付くも、その辺りはケントとリツがセラの意識が無い間にフォローしていた。頼りになる仲間である。


「俺達も終わった後で紹介されて驚きもしたけど、逆に納得も出来た。まさか君達が"あの"天兎のメンバーで、君が"悪魔の帝王"のセラだなんてね」

「あぁ、俺も驚いた。確かに口調は荒かったが、指示については的確だった…と俺は思う。正直あのまま逃走してても逃げ切れる自信はなかったしな……」


 セラはジト目で『どんな説明したんだお前』と目線をケントに向けるが、その表情からは悪気はないんだから許してやれと言っている。どっちにしろここはラインアークではないし、有名人に遭ったみたいな感覚での発言だろうと思い、それ以上の言及は避けた。


「ところで、アレどうしよう?」


 リツに指さされた先には「マンハント ハンギング」が落とした物と思われる大量のドロップアイテムが落ちている。武具類だけでも余裕で人数分はありそうな感じで、お金も水溜まりと誤解するような感じで地面に広がっている。


「……なにあの量」

「あいつが消えた後大量にドロップしてね、分配しようにもあんな感じだし、一番の功労者のセラをほっといて決める事は出来ないってどっちのパーティも言い張ってさ」

「事情は理解したけど、そっちはほしいもんあったりしないの?」

「ない事もないんだが、ルート権も含めて考えれば分配方法の決定権は君達にあると俺は思う」

「俺達もそうだな。どういう方法であれ俺達は文句を言うつもりはない。ドロップの取得優先権はそっちにあるはずだ」


 「悠久」と「月光」の両パーティ共に我先にという考えではないようで、一番の功労者であるセラ達「天兎」に優先ルート権があり、分配方法の決定権もあると主張している。実際システム上でも、「マンハント ハンギング」に最もダメージを与え、ラストアタックも取ったセラに優先ルート権がある。ドロップアイテムの内訳も高レアリティな物は貢献度に応じて排出されるらしく、多くあるドロップアイテムの中にはそれぞれに対応した得物が多く見られる。


「んぁ~……。ならそうだなぁ……ドロップアイテムの中のお金はここに居る人数で頭割り。ドロップアイテムの武具は「天兎」「悠久」「月光」の順で1つずつ取得。消耗品は使用した人へ割り振って補填。足りなかったりしたら余りの武具を売り払ってそこから補填。または補填が十分な場合はパーティ単位で等分して分配。こういう感じでどうかな?」

「俺達はそれで問題ない。」


 悠久のメンバーに顔を向けて意思を確認したエイジがセラの提案に答える。


「俺達もその方法で大丈夫だ」


 月光の三人もそれぞれ顔を見合わせて頷き、リーダーのザインが答える。


「うっし!じゃあ分配方法決まったし、早速セラから一番気に入ったモンとって来いよ!」


 バンッ!とケントに背中を押されてドロップアイテムの方向へとセラは押し出された。無造作に転がるドロップ品の数々の山の中、まるでここで出会うのが運命付けられていたかの様な存在がセラの目を惹いた。





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