家庭教師のお仕事
翌日──とある一戸建てで。
「今の時期家庭教師って必要?」
「いえ、俺がブラッドレイン先生に逢いたかったからです。」
「あら。うれしい…けど、あんまり親に迷惑掛けないように」
参考書を片手に彼──田口真那斗は18歳の高校3年生。
リリアージュの受け持つ生徒の一人だ。
「…まだ、子供扱いなのか…先生」
「何ですか?業務に関係のない私語は時間のムダですよ?」
まだ、あどけない幼さを残してもその顔立ちは整っており、美形だ。性格はさっぱりしている。
そんな彼はリリアージュを初顔合わせの時から一目惚れで事ある毎に口説いている。
だが、リリアージュにとってはただの生徒の一人でしかない。
全て避してへし折っている。
「…分かった!分かりましたよ、先生!!」
「何がです?ほら、さっさとなさい」
口調は丁寧だが、伊達眼鏡の奥の蒼い瞳が田口を睨む。
「…ガード硬すぎ」
小さく呟かれた言葉を愛想笑いでスルーする。
「・・・遣る気がないなら、私はもう帰りますよ?何だったら本日で契約を打ち切っても構いません」
「──ッ!?勉強します!勉強しますからっ!!」
「そうですか…では、初めて下さい」
さっと表情を消して田口を睥睨する。
人間の男なんて子供だ、子供。恋愛の対象ですらない。
そもそも家庭教師として雇われている身でその家の“子供”に手を出してどうする?
親から苦情が来て食い扶持の一つが減るわ。
…いや、まあ…金には困って居ないが。