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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
どうして義妹(姉)ができるんだ!
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言わんこっちゃない……

「知らない天井だ」

 意識が戻ると、どうやら僕は寝かされていたらしい。見覚えのない天井が目に映った。まあ、ないことはないんだけど。

「それ、言いたかっただけだよね?」

「正解」

 深草さんが上からのぞき込んでくる。あ、膝枕じゃないんだ。そんなどうでもいいことを考えてしまった。大分頭がボーとしてるな。

「まったく困りましたよ。温泉で眠ってのぼせて溺れるなんて」

「それに関しては滅相もございませんです、はい」

 山科さんの辛らつな言葉。寝ちゃってた僕が一方的に悪いよね。

 体を起こして現状を確認する。えっと、ここはどうやら深草さんたちの部屋みたいだ。まあ、鍵は十条さんが持っていっちゃってたから当然か。

「とりあえず、水を飲んでください。それと塩も」

 手渡されたコップをつかむ。やば、滑り落ちそうだ。

 そう言えば、僕のそばには心配そうな深草さんと世話をしてくれてる山科さんがいるけど、樟葉先輩が見当たらないや。

「あれ、樟葉先輩は?」

 こういうことになったら真っ先にちょっかい掛けてきそうなのに。

「少々刺激が強かったようで?」

「え、何の?」

 そう言うと山科さんは僕の体を指さす。え、何?

 僕は特におかしなところはないと思う。浴衣着てるし、下着もちゃんと履いて帯も閉めてるし。あ。

「……そういや、僕温泉で倒れてたんだったよね?」

「ようやく気づきましたか」

 ってことは僕はタオル一枚で倒れてたわけで、つまりはそこから僕を湯船から出して体をふき着替えさせた人がいるわけで、それというのはつまり、僕の無防備な姿を見られたわけで。うわ、めちゃ恥ずかしいんですけど。

「仕方がないので私と加乃さんで服を着せました。大変だったんですよ。それに、脱衣所は男女別ですから」

「……う、すいません」

 返す言葉もないです。うう、なんであそこで溺れたんだ。樟葉先輩も大変だけど。僕もめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。

 顔が熱くなるのがわかる。とりあえず下向こう。隠したい、隠れたい。

 そう思ってたら山科さんが耳元に息を吹きかけてた。

「ちなみにお姉さまは指の隙間からチラ見してましたよ」

「その情報に何の意味が!」

 ということはつまり、えーと、あーと、これがこうだからああなって。

 ああ、頭がくらくらする。それより水、水。というか、めまいがしてきた。あ。

 

 

 

 再び倒れた後、今度は山科さんに過剰というほどスポーツドリンクを飲まされた。おなかがチャポチャポなるくらい。いくら何でも過剰過ぎだよ。たぶん。

 それから戻ってきた樟葉先輩にお腹を思い切り殴られた。苦しい。

 まあ、それはともかく。問題は夕食である。

 秘湯に行ってきた十条さんがさっぱりした顔で帰って来た。汗まみれだけど。

 ヨカッタデスネ。こっちはそれどころじゃなかったんですよ。まあ、ともかく。

 十条さん曰く、豪華絢爛らしいのでとても楽しみにしていた。

 料理はコース形式の和食。えっと、懐石料理っていうんだっけこんなの。

「ちなみに、懐石ってのは懐を温める石のことだよ」

 どうでもいい情報をありがとうございます樟葉先輩。ちなみに席は僕の右隣りが樟葉先輩。左隣に深草さん、対面に山科さんと十条さんである。なんか仕組まれた気がするけどまあいいか。

「このお吸い物、なかなか変わってておいしいよね」

 十条さんが舌鼓を打ちながら言う。僕、少食だから既に結構お腹いっぱいなんですけど。それに、スポドリも飲み過ぎたし。でもまだ、意味ありげに固形燃料のついた小鍋置きが鎮座してるんだよね。一人に一つずつ。絶対何かある。

「はいこちら。地元産の豚肉のステーキと焼き野菜です。固形燃料がなくなったらお召し上がりください」

 そらみたことか。メインディッシュの時点で腹八分なんですけど。食いだめ決行するべきか否か。しかも、相当ダメージ残るんだよねえ。明日も観光するんだし、やめとこうか。

 案の定豚肉が3切ほど残った。ちなみに野菜は食べた。

「あれ、悠杜君もう食べないの?」

「ええ、もうお腹いっぱいなので」

 樟葉先輩が残ったお肉を見て目を光らせる。ちなみに深草さんは少々しんどそうだがまだ大丈夫で、他の2人は顔色一つ変えてなかった。化け物か。化け物だった。

「私も結構限界だけど、それくらいならギリ入るよ? それ、もらっていい?」

「どうぞどうぞ」

 というかこの人が一番おかしいな。駅弁食べて、チョコ5箱開けて、天ざる御前食べてるにもかかわらず僕以上に食べられてるんだから。まあ、流石に限界らしく体を投げ出しているけど。

 そう思っていたらそれ以上の絶望が僕と樟葉先輩にやってきた。

「はいこちら。本日のメインの川魚の刺身でございます。本日は鮎を使っております」

 メインディッシュ別にあった!

 仲居さんが悪魔に見えたのはきっと僕だけではなかったはず。ちなみに僕は一切れだけもらってギブアップした。樟葉先輩は、根性だ、とか言いながら食べていた。僕の分まで。馬鹿か。馬鹿だった。紙一重で馬鹿だったこの人。

「食べ物を残すのは私の主義に反します。うっぷ」

「いや、無理しない方がいいですよ」

 そんなになるなら他の人に食べてもらえばいいのに。

 ちなみに深草さんはギブアップして山科さんに食べてもらい、山科さんと十条さんもペースが大きく落ちていた。うん、普通に人だった。

 と、これで終わればよかったのだが。

「そしてこちらが枝豆と生姜の炊き込みご飯になります」

 きっと仲居さんは樟葉先輩にとってはムッシュ・ド・パリに見えただろう。ちなみに樟葉トリビアより、パリの死刑執行人に与えられる称号だそうだ。

「先輩、無茶しても何にもなりませんよ?」

「いや、私は食べる! 断じて食べ物は残さない!」

 馬鹿だ。大馬鹿だ。それ以上の何かがここにいる。

 ああ、おそろしや、おそろしや。食べ物というのは怖いものだ。そう言えば樟葉先輩が教えてくれた国民性ジョークの中に、日本人は拉致されても領土を主張されても勝手に上陸されても占領されても核爆弾を落とされても怒らないけど、食べ物に関してだけは怒るという話があったな。あの時は笑い転げたものだ。

「はあ、流石に、もう、無理。のどまで来てる。吐きそう」

「吐かないでくださいよ!?」

 吐いたら真っ先に被害かかるの僕ですからね!

「ああ、ようやく終わった。私は勝った」

 何にだ、と言いたいところだが、僕らの机には何も残っていなかった。流石に他の3人も苦しそうではあるが樟葉先輩ほどではない。それと、よく見てみたら他の人たちの机は大なり小なり何か残ってた。うん、この人が異常なだけだ。もう大食いタレントにでもなれよ。

 そう思ってたら再び仲居さんの登場である。

「こちら、デザートの杏仁豆腐になります」

「ごめん、ちょっとトイレ」

 そう言って樟葉先輩は席を立った。言わんこっちゃない……。

 

 ちなみに樟葉先輩の分は深草さんがおいしくいただきました。なんでも杏仁豆腐が好物なのだそうだ。

作者も中華料理の食べ過ぎで一度吐いたことがあります……。不毛な戦いだった。

それと今更ですがこの旅行は樟葉先輩回です

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