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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!
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むせるから!

 結局、僕たちは遅刻することなく学校にたどり着くことができた。いや、あれだね。山科さんは味方にすると頼もしいけど、相手にするなんて考えたくないね。まあ、深草さんに害をなさなければ大丈夫だけど。

「じゃあ今日の運勢よろしく」

 深草さんがタロット占いを希望する。これも毎日の日課の一つだ。タロット占いが好きなんです。

「わかりましたよ」

 そういってタロットカードを取り出し、混ぜ始める。この瞬間だけは山科さんは口を挟んでこない。それはありがたいね。

「正位置の、『世界』ですか」

「どういう意味なの?」

 深草さんが聞く横で、山科さんが射殺すような視線を向けてくる。悪い運勢だったら容赦しないぞ、といった目で。心配しなくても深草さんの運は折り紙つきだよ。

「完璧、成就といった意味ですね。完全無欠とでも言いましょうか」

「よかった」

 深草さんが胸をなでおろす。僕も安心した。山科さんに殺されなくて。

「伏見悠杜、ちょっといいですか」

 そして有無を言わさず僕の手を引っ張って教室外に連れて行かれた。

「いいですか、無意味にお姉さまに好意を振りまくのはやめてください。あなたはお姉さまが認めているから被害を受けていないだけであって、そうでなければ今頃殺されていてもおかしくありません」

 はい。その通りです。ついでに言うと、深草さんに近づくためには、本人の許可が必要らしく、それを無視しようものなら親衛隊に物理的に制裁を食らうらしい。それを僕が免れているのはひとえに深草さんのおかげなのだとか。まあ、それはすごくありがたいのだけど。あとお姉さまって、山科さんの誕生日は4月23日で年上なんだけどな。

「もし、お姉さまを傷つけようものなら、社会的に殺されることを覚悟してください。いいですね。それから前みたいに占いの結果を偽るのもやめてください」

「それはやってないよ。世界の正位置は完璧とか、そういう言葉なんだ」

「いいですね」

「はい」

 口答えは許さない、とばかりに山科さんは去っていく。何度目だろう、このやり取りも。


 ちなみに自分も占ってみたら『塔』だった。何、この違いは。



 四時間目の文法英語が終わると、昼休みである。

「伏見君、一緒に」

 深草さんが言い終える前に引っ張られた。誰に? もちろん山科さんである。山科さんがいるときはたいてい引っ張って行かれる。

「伏見悠杜、さっさと来るのです」

 そして強引に僕を食堂へと連れて行く。言っとくけど僕より足速いからね! 僕50m7秒8だけど山科さん7秒2だからね! 全力疾走だからね!

 行き着く暇なく、深草さんの指定席、ではなく、左手一番奥の席に僕を座らせる。そしてかばんごと持ってきた中から弁当箱を取り出した。それも二つ。

 そう、二つである。ちなみにこれは、深草さんと違って僕に好意を抱いているとかいうわけではなく、深草さんの手料理を僕に食べさせないためである。僕は小食なので2人分なんて到底食べられないのだ。いざというときは自分が楯になって深草さんを守るのだとか。なので僕に好意というものは全くない。あ、深草さんもそうだったか。

 そして箸をとると片方の弁当箱からおかずを取り出し、僕の口に突っ込んだ。早すぎて反応できないし。

 深草さんいわく、山科さんの料理の腕は一級品、なのだそうだけれど、僕にはそれを味わう余裕などない。ついでに言えばあ~んに見えるがそれを楽しむ余裕もない。と言うのも走ってきて息を切らせている状態で矢継ぎ早に食べ物を口に放り込まれるのだ。味わってる余裕なんてあるか!

 ちょっと待って、白ご飯を流し込もうとしないで! まだ咀嚼してるから! むせるから!




 ちなみに余った深草さんのお弁当は山科さんがおいしくいただきました。むしろそっちが本命じゃないのか。

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