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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
どうして義妹(姉)ができるんだ!
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なんで竹田を誘っちゃったんだろう?

「あ、悠杜君、こっちです」

 駅まで父親を迎えに言った僕に、山科さんが手を振る。いつもと口調が全然違うんですけど。家で猫かぶってるとか。

「あ、すいません。今日はお招きいただきありがとうございます。伏見悠杜の父の宗介(そうすけ)です」

「いえいえ、京香の母の夏乃(なつの)です。今日はお忙しい中……」

 親二人が社交辞令に興じる中で、それを横目に見ながら山科さんに話しかける。

「山科さんって、そんなに猫かぶってたんですか?」

「あなたの父親の心証をよくしといた方がいいでしょう?」

 地味に足先を踏まないで。わかった、わかったから。

「家ではあなたの知ってる通りですよ。こういうこともできるというだけですからね」

 わかったから足をのけてください。ヒールがあるのかいつもより痛いんです。

「京香、悠杜君と話してないで行きましょう?」

「わかった」

 そう言って去り際、山科さんは僕に注意をしていった。

「くれぐれも、粗相をしないでね」

 そうは言われても、何が粗相なのかわからない。

 

 

 

 深草さんが食事券をもらってきたレストランはそこそこ高級そうなイタリアンレストランだった。窓際の席に子ども二人、つまり僕と深草さんが奥、大人二人が向かい合う形だ。

「今日はお招きいただき、ありがとうございます」

「いえいえ、こちらも娘からもらっただけですし、気にしないでください」

 山科夏乃さんが言う。そういや手に入れたって言ってたな。あれ、山科さんが手に入れたって意味だったのね。

「でもうれしいです。京香は、あまり人づきあいが得意といった方ではないので、悠杜君みたいな、気の置けない、しかも異性の友人ができて少し安心です」

「いえいえ、僕なんて山科さんには、っ! ……京香さんにはお世話になりっぱなしですよ」

 足を踏まれる。下の名前で呼んだらいいのか?

「生徒会も京香さんに大分手伝ってもらってますし。しかも、食事まで誘ってもらって」

「そんなことないですよ。京香から聞きましたよ。こないだは悠杜君に危ない所で助けられたって」

 とりあえず、謙遜しつつ地雷を踏まないように、適当に話をしとけばいいのか? でも、カンペがないからめちゃくちゃ不安なんですけど。

「それも、ちょっと遅れてしまっただけですし、それに、お恥ずかしい話、少し怪我をしてしまいまして」

「でも、京香がほめてましたよ」

 いや、こんなふうに改めて食事の席で話題にされると気恥ずかしいな。僕としては、ほとんど何もしてないし、少し申し訳なくもあったのだが。

「っ!」

「どうかしました?」

「いや、何でもないです」

 山科さんにつま先を踏まれる。だからそれ痛いって。

「伏見悠杜、社交辞令でニマニマしないでください」

「してないって」 

 小声で耳にささやいてくる。

「それで、どうしたらいいの?」

「普段の食事のことを。そこから流していきます」

「了解」

 カンペがないのは大変だ。こうやってこそこそするだけでも不審がられる。

「お待たせしました」

 ちょうどいいタイミングで前菜が届いたので、作戦会議を中断して食事に取り掛かる。

「あ、おいしいですね」

「ですね。普段は家ではこういうもの、なかなか食べられないので新鮮でおいしいです」

 どう、これで間違ってない? そんな視線を向けると、山科さんにこっちみんなとばかり母親の方を向かれた。

「そうですね。うちは男二人なので、料理も素っ気なくて。一応、悠杜が少し料理が得意なんですが、なかなかこういった本格的な料理は難しくて。それに、子どもの学費なりなんなりでそうそう外食するわけにもいけませんし」

「そうですね、私のところも、京香がたまにどこからか食事券をもらってきたりすることがあるんですけど、そう言ったこと以外は散財もできませんしね。お金のかかる年頃ですし。片親だとどうしても忙しくなりがちですよね」

「ええ、よくわかりますよ」

 何となく不愉快なよくわからないトークが始まる。そう思ったら山科さんに足を緩く踏んづけられる。

「何?」

「今です。私たちだけで盛り上がって、二人が会話をしやすいようにしましょう」

 なるほど。4人いて2人が内輪の内容で盛り上がったら、残りの2人は自動的に話すようになるというわけか。それじゃあ、料理もあることだし、あの話でもするか。

「そういや、イタリアンで思い出したんだけど、前に深草さんと料理対決した時にオムライスを作ってさ」

「ちょっと、その話詳しく教えてください!」

 思ってたよりも食いついてきた!

「いや、中間試験の後に料理対決をすることになって、それで、僕の家で作って勝負したんですよ」

「思ってたより進んでるじゃないですか! なんでそんな大事なこと私に教えてくれなかったんですか!」

 と言われても、なあ。

「純粋に思い浮かばなくて」

「はあ、これだから使えないんです」

 言われようが酷いと思う。

 横を向いてジュースを口に含む。そして放った一言が致命的だった。

「ただ、両方2人分作っちゃって余ってさ。それで、竹田を呼んで全部食べさせたんだよね」

「……なんで」

 山科さんの表情が一気に曇る。あれ、僕今地雷踏んだ? 何が地雷だったんですか?

「なんで私を誘ってくれなかったんですか! お姉さまの料理なら食べに行ったのに」

「あ……、悪い」

 そういや料理対決の時は山科さんのこと眼中になかったよ。なんで竹田を誘っちゃったんだろう?

 

 その後、完全に怒りモードになった山科さんに、夏休み中に3人で料理大会をすることを確約されたのだった。それで一応は怒りを収めてくれたけれど、他の話題に振っても親二人を離させるための義理的に話をしているような感じだった。それにしても話に出てくる中で6:3:1くらいで樟葉先輩、深草さん、その他だった。あの人はどこまで僕を侵略する気なんだ?

 それはそうと、顔合わせは成功と言っていいんじゃないかと思う。父親と山科さんの母親は仲良さそうに話してたし。ただ、ずっと左足を踏まれたせいで、立ち上がるときにびっこを引いたようになってしまったことを怪しまれてなきゃいいけど。

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