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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
どうして義妹(姉)ができるんだ!
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告白された……

 それは、期末試験が終わって、後はただ夏休みに入るのを待つのみとなった火曜日の出来事だった。

 いつも通りの日常。深草さんと山科さんと共に待ち合わせて、電車で学校に向かう。しいてちょっとした変化をあげるとするならば、樟葉先輩が電車に乗ってくる位置が変わって、3人でじゃなく4人でしゃべりながら登校することになったくらいだろうか。いつも通りたわいもない話をして、笑って。まあ、男友達というわけではないけれど、僕が夢見ていた高校生活だと言えたのかもしれない。

 そんないつも通りの日常の中で学校に向かった僕だったが、事件は下駄箱で起こった。いや、潜んでいたというべきか。

「何、これ?」

 茶色の郵便用の封筒の表面に、『伏見悠杜様』と書かれている。なんだ、これ。研ぎ澄まされた僕の第六感が警鐘を鳴らしているぞ。

「ラブレター、ではないようですね」

 山科さんが言う。うん、丁寧に書いてあるけれど、これは恐らく男の字だ。

「中見てみようよ」

 深草さんがそう言う。元より中身は確認する予定でしたが、まあ、ここで開けてもいいか。ラブレターなわけはないし、それなら恥ずかしがる必要もない。

「あれ、ゆーくんどしたの?」

「ああ、何か変なものが靴箱に入ってまして」

 上履きに履き替えた樟葉先輩が寄ってくる。

「へえ、面白そう」

 面白そうって、他人ごとだと思って楽しまないでくださいよ。

「とりあえず開けてみますね」

 そう言って封筒の中身を確認してみる。便箋が一枚。深草さんと樟葉先輩が横からのぞき込む。それを見た僕たちは、言葉を失った。

 そこには、こう書かれていた。

 『今日の昼休み、一人で体育館裏まで来てください』

 ……なんだこれ。

「……ひょっとして、果たし状じゃないでしょうね?」

「いや、そうなんじゃない」

 嘘だと信じたい。でも、男の字で体育館裏に呼び出されたら、ねえ。それ以外の選択肢が思い浮かばないよ。樟葉先輩が言ったことはたぶん間違いじゃないんだろうなあ。

「恐らく、回りくどいですが果たし状のようですね。しかし、どうしましょう。当然監視要員は付けますが一人で、と指示がありますしね」

 山科さんまで言う。うわあ、果たし状とかまじで嫌なんですけど。というか僕何かしました? 何もしてないですよね? 気に障るようなことって、深草さんがらみしかないんですけど。それに、それ全部僕のせいじゃないよね? 逆恨みだよね? はあ。まあ、だからといって深草さんを恨むのはお門違いだというのはわかってるんだけどさ。というか、監視要員はやっぱりつけるのね。

「まあ、普通に考えて体育館の上から見張るしかないよね」

「体育館の上!? というか、普通なんですか!?」

 僕の言葉に、樟葉先輩と山科さんはさも当然といったような顔をする。

「それくらい、普通にできるわよ」

「そこしかないのですから仕方ありません」

 もう嫌だこの非常識な人たち。

 

 

 

 昼休みまでの時間を僕は悶々としながら過ごした。果たし状って、僕は何をすればいいの? 山科さんと樟葉先輩がいるのは安心できるけど、何を言われるんだろう。

 深草さんのお弁当を食堂でにらまれながら食べている間も、集中力が散ってしまう。そういや、食費がだいぶ浮いて助かってるな。そう言えば、最近は山科さんにご飯を突っ込まれることもなくなったし。

「それじゃあ、気をつけてね」

「あ、ああ。行ってきます」

 なんかすごくがちがちなんですけど。前線に赴く兵士の気分なんですけど。

 そんなことを考えながら、山科さんが体育館の中に入っていくのを見送る。中から上へ出る……らしい。

 そして、件の体育館裏には、一人の男子生徒が待っていた。実は女子で、なんていう甘酸っぱい展開ではなかったらしい。いや、果たし状だろうと思ってたわけだけれど。それに、もし女子だったとしても僕は恋愛はしたくないのでお断りだったけど。

「ああ、伏見悠杜君、だね。僕は桂光弥といいます」

 丁寧な物腰なんかに騙されないぞ。さあ、どう来る気だ?

「端的に言います。伏見悠杜君。君のことが好きです、付き合ってください」

 ……あれ?

 ……あれれ?

 えっと、ナニイッテンダコノヒト? ちょっとわけがわからない。

 えっと、まず彼は僕をここに呼び出して、それで好きだといったということは、あれは果たし状じゃなくて、ラブレターだったということで、つまり彼は、僕のことが好きな同性愛者ということで……。

「えええええ!?」

「あの」

「無理ですぅー!」

 三十六計逃げるに如かず。さっさと退散。こんなの嫌な予感しかしない! 僕は男の子が好きなわけじゃないし! というか普通に女の子が好きだし! 退散。逃げ出す。以上。

 にしても、僕、告白されたんだよね? なんか、いやな感覚なんですけど?

「ねえ、何があったの? 上まで聞こえなかったんだけど」

 追いついてきた、樟葉先輩が言う。ああ、聞こえなかったのか。

「それが、実は果たし状じゃなくラブレターで、告白されまして」

「何それ!? 面白そう!」

 あ、樟葉先輩の面白そうなことに片っ端から首を突っ込む修正を忘れてた……。

 

 その後、僕は樟葉先輩に根掘り葉掘り搾り取られましたとさ。この人、天敵だよ。

タイトルから、深草さんに告白されたのだと思った方、残念でした。何となく面白そうなキャラクターが思いついたので入れてみました。この後の予定はあんまりないです。竹田君と同じくらいの頻度になるかな?

それから、章タイトルですが、勘のいい人は勘づいているんじゃないでしょうか。まあ、それ以外にも詰め込むつもりではいますが。

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