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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
僕はそんなに神経太くない!
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十条さんはやっぱり強かった

 そこから一週間、なんとか君の襲撃はなかった。うん、本当に人の名前覚えられないんだよねえ。特に、関わりたくないと思う人は。ともかく、僕たちは平和だったわけだ。山科さんが木曜日休んだけど、翌朝はすごく元気そうだったし、大丈夫だったのだろう、うん。

 勉強の方も順調に進んでいた。樟葉先輩はどうかわからないけど、深草さんの教え方はうまい。大部分を理解できたんじゃないだろうか。期末試験は保健体育が増えて10教科だけど、恐らく上位三十傑には入れるのではないかと楽観している。まあ、流石に前回からは順位を落とすだろうけれど。

 知恵熱で倒れたりすることもなく、樟葉先輩のトリビアに惑わされることもなく。いや、それはだいぶ惑わされたか。ちなみにトリビアとはもともとありふれたことで役に立たない知識らしい。樟葉先輩が教えてくれた。いらねえ。

 そんな中、僕はいつも通り『シャルロット』でバイトをしていた。暇なのか、送りに来たついでに樟葉先輩がフクロウカフェでだいぶ長居をしている。というか、料金もらってないし、十条さんと話がついているのかな? 親衛隊恐ろしいわ。

 ちなみに、大谷君たちと来週の日曜日、つまり、テスト前日にここで勉強会をやることになった。前回の反省を生かして、お金は割り勘にするらしい。ちなみに土曜日じゃないのは、深草さんが土曜日に来るから避けようというのがその理由だ。まあ、深草さんと関係するといろいろありそうだし、仕方ないんじゃないかな?

「それじゃあ、お昼ご飯ごちになりました~」

 そう言い残して樟葉先輩は帰って行った。お昼ご飯の分の代金を残して。どうやら、本当に親衛隊と十条さんには何かあるらしい。なんか綿で首を絞められてるような気がして怖いわ。

 帰りしなにソフィアをなでていく。シロフクロウがお気に召したようでよかった。

 

 

 

 その後も特に問題なくお客さんがはけて、いつも通り15時に深草さんが来た。深草さんとテスト勉強に興じ、珍しくこの時間に訪れたカップルの相手をし、シャルたちに餌をやる。何となくだけれど、誕生日の一件以来、深草さんはシャルを溺愛しているように見える。他の子たちにも優しいんだけれど、とりわけシャルにかまうようになったというか、なんというか。やっぱり、山科さんとぬいぐるみを作ったから愛着がわいたんだろうか。僕が作ったから、ではないと信じたい。うん、そうだよね。信じない信じない。

 そんなことを考えていると、あっという間に閉店時間になってしまった。

「あ、未悠ちゃんに悠杜君。ちょっと待っといてね。すぐ、片付けの方終わらせるから」

「あれ、普段なら、先帰っといてって言われるところなのに」

 十条さんの台詞に思わず呟く。

「ああ、それは、悠杜君、今、狙われてるんでしょ? 家まで付き添うから、ちょっと待っててってこと」

 ……そういうことか。要するに、親衛隊とつながりがあると。この人、ひょっとして№3だったりしないだろうな? いや、ありうるかも。

「まあ、それなら僕も手伝いますよ。一応バイトですし」

「それじゃあ、洗い物の方頼める?」

「わかりました。深草さんはフクロウたちの相手でもしておいてください」

 そう言い残して僕は厨房へと入っていった。もう、手は染みないからばっちりだね。

 

 

 

「よし、それじゃあ二人とも、家まで送っていくよ」

 そう言われて、僕たちは『シャルロット』を後にした。別に、襲撃されると決まったわけじゃないし、結構家も近いんだけどな。そんなことを考えていたのがいけなかったのかもしれない。

「見つけたぞ、伏見!」

 どこからともかく現れた、え~と、誰だっけ? ともかくしつこい人が因縁を吹っかけてきた。もう『塔』でいいや。悪い意味しか持たないし。

「君が、伏見君に付きまとってると聞かされた人物だね。悪いけど、引き下がってもらえないかな」

「てめえ邪魔すんな!」

 十条さんの説得を無視し、『塔』がいきなり襲い掛かる……、こともなく一本背負いで投げられた。そのまま関節技に移行する。

「痛い、痛いからやめてくれ!」

「君がやめるならそういうけど」

 そう言って十条さんがやめた瞬間に、起き上がる反応を利用して蹴りを放とうとする。汚い。卑怯だ。ま、そんな技通用しなかったんだけど。

 十条さんはその蹴りを鮮やかにかわすと足をつかんで遠心力で放り投げた。まあ、背中から落ちたし大丈夫だろう。

「ちくしょう、覚えてやがれ!」

 三流の悪役のような台詞をかまして、『塔』は逃げ去っていった。

「さて、それじゃあ帰ろうか」

 そう言って十条さんは汗を拭った。僕たちは、それを黙って見ていただけだった。流石は十条さん。やっぱり強い。

 なんか、この人たち敵に回したくないな。怖い。

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