僕は代理人じゃないんですけど!
翌日、僕はカフェ『シャルロット』でバイトに勤しんでいた。手の怪我も癒えてきたので、ようやくフクロウたちと触れ合える。ソフィアの肌触りがすごくモコモコで気持ちいいよ。シャルもこの店の看板娘だけど、シロフクロウのソフィアも結構かわいいんだよ。それに、魔法使いの映画の影響でシロフクロウが好きだっていう人も結構いるしね。にしても、コーヒーを挽くだけのバイトにならなくてよかった。軽食とかは十条さんの担当だけど、飲み物とかは結構任されるようになったし、洗い物もできるしね。ラテアートは別だけど。
そんな中、僕がどうしてソフィアと一緒にいたのかというと、シャルとアルが十条さんの方に行ってしまったからだ。普段はネットの奥にいることが多いけど、今はフロアにいるからね。それに、もともと十条さんが飼っていた子たちだし。
でもまあ、なんで今十条さんがフロアにいるかというと、今深草さんと会話をしているからなのであった。店内にお客さんはいないからいいんだけどね。それに、個人経営の喫茶店はこういうことができるからいいんだって十条さんも言ってたし。
「それで、ペットカフェをやることになったんです」
「そっか。案が通ってよかったじゃない」
「でも、フクロウを飼ってる人はいなくて。なので、私がフクロウを飼おうと思うんです」
「へー、未悠ちゃんもとうとうその段階に来たか。でも、フクロウって結構高いよ? 維持費も結構かかるらしいし」
どうやら、先達の十条さんにフクロウを飼う相談をしているらしい。
「そこらへんは大丈夫です! 誕生日プレゼントに飼ってもらうことになりましたし、おこづかいも結構もらってる方なので。貯金もありますし。ただ、問題になるのが」
「世話をどうするかってことだよね」
「そこなんです!」
やっぱり問題はそこですよね。フクロウって、こう見えて結構繊細だし。餌のヒヨコとかウズラとかも、鶏肉じゃ血がないから貧血になっちゃうし。餓死って言うのが死因で一番多いそうだからなあ。
「ところで未悠ちゃんは、ネズミとかって裁ける? ちょっとグロテスクな感じになっちゃうんだけど」
「いえ、それは大丈夫です。ここでも餌あげたりしてるじゃないですか。それに、生物の時間にカエルの解剖もやりましたし」
カエルの解剖か。なんか懐かしい気がするな。そこまで昔じゃないはずなのに、相当昔な気がする。深草さんと出会ってからの2か月が相当濃かったせいか。
「それはよかった。あとは、大きく考えとかないといけないのは、ゲージで飼うか放し飼いにするかだね」
「一応、放し飼いを考えてるんですけど」
「でもそれ、結構大変だよ。部屋まるまる一つ開けとかないといけないし、窓とかも閉めないといけないし、そこに止まり木用意したりとかも」
「一応、使ってない納戸があるのでそこを整理しようかなと。ただ、その辺りはノウハウがないので何とも」
「そうなんだよね。毎日体温と体重をチェックしないといけないとだし。私も調子が悪い子がいたら家に帰れないしね」
十条さんがはにかんだ。そうなんだ。そんなこともあるんだ。十条さんは確か一人暮らしだって言ってたから、まあそんなこともできるかもしれないけど。
「問題はそこなんです。あの、無理を承知で聞くんですけど、私の家でフクロウ飼うの手伝ってもらえませんか?」
「ごめんだけど、それは無理だね」
「やっぱりそうですよね」
そう言って深草さんが項垂れる。
「うん、私は一応店長だし、毎日ここに来ないといけないしさ。一応獣医さんの紹介とかだったらできるけど、そこまでの余裕はないかなあ。あ、でも、何だったら悠杜君を貸そうか?」
え、何をいきなり言い出すんですか!
「え、いいんですか?」
「いいよ。悠杜君はここ始める前からの付き合いだし、フクロウの飼い方もある程度は知ってるはずだから。ね?」
「やったあ。というわけで、悠杜君。これからよろしくね」
「え、あの、その」
ちょっと待って! いつの間にそうなってるの!? 僕は代理人じゃないんですけど!
「私からも頼めるかな。未悠ちゃんが飼いたいって言ってるから、飼わせてあげたくて、それに」
そう言って十条さんが僕に耳打ちする。
「これを機に付き合っちゃいなよ」
つ、つ、つ、付き合うってどういうことだよ! 勝手に話を進めないでくれ、黒幕め!




