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今夜は気持ちよく眠れそうだ

「伏見悠杜」

「わっ」

 梯子を下りたとたん、急にかけられた声に驚く。

「ごめんなさい、出来心だったんです!」

 すいません、住居不法侵入ですけど見逃してください! 友達にプレゼントを渡してただけなんです!

「何を考えてるか知りませんが、とりあえず馬鹿なことはやめなさい」

「って、山科さん!?」

 警官かと思ってびっくりしたら、そこに立っていたのは山科さんだった。

「ええ、私です。とりあえずそこを退いてください。はしごが回収できません」

「ああ。あの、ありがとう。僕が来られるように、はしご置いといてくれて」

 パニックになる僕を横目に山科さんは淡々とはしごのロックを外し縮ませる。そして回収し終わったところで僕の手をつかんで深草さんの家から連れ出す。

「伏見悠杜、あなたに話があります」

「え、はい、何でしょう」

 深草さんの家から出たところで、外灯の下、話しかけられる。え、なに、僕怒られるの?

「すいませんでした」

 そう言って山科さんは頭を下げた。

 え、あの、ちょっと。どういうことですかコレ。

「あなたの言う通り、桜色の刺繍を用意した方が正解でした。そうとも気づかずに勝手なことを言って、ごめんなさい」

 いきなり謝られても、どう反応したらいいのかわかんないんですけど!

「え、あの、その。こっちこそ、遅れちゃったし、言うこと守らなかったのは僕だし……」

「ですが、お姉さまはとても楽しそうでした。申し訳ありません」

 思わず口ごもる。これ、なんて言ったらいいんだ? よし、話題を変えよう。それが一番だ。

「そ、そんなことより、はしご、ありがとう。あれのおかげで、深草さんにシャルが渡せたよ」

「それはどうも」

「どうして、僕を見限ったのに、あんなのものを?」

 ぱっと思いついたことに話題を振る。うん、さっきから結構疑問だったんだ、これ。山科さんの仕業だろうってのはわかったんだけど、なんであったのかよくわからなくて。

「ひょっとしたらあなたがお姉さまを訪ねるかもしれない、その可能性があったからです。もっとも、私の中ではほぼ0だと思ってましたが、違ったようです。侮ってすいません」

「い、いや、そんなことより、ありがとう」

「礼を言われることではありません」

 結局そこに帰結するの!? 僕どうしたらいいの! そうだ、よし、帰ろう。

「そ、それじゃあ夜も遅いし、これで」

「待ってください」

 腕をつかまれた。

「な、何でしょう?」

「今まで、今まで私は、お姉さまがあなたに興味を持つ理由がわかりませんでした。なんで、こんなさえないやつに興味を持つんだと」

 さえないやつって……。自分でもそんな気がしますけど。

「ですが、今日の様子を見て思いました。確かにあなたには、興味を持たれるに足る、十分な理由がある。それは私が保証します」

 いきなりそんなことを言われてもわけがわからないんですけど。

「まだ、認めたわけではありませんが、伏見悠杜、あなたはひょっとしたらお姉さまの横に立てうる存在かもしれません。それを覚えていてください」

 それだけ言ってしまうと、山科さんはさっさと闇の中へ歩いて行ってしまった。さっきのは何だったんだろう? 何かよくわからないけど、何となく、山科さんに認められた気がした。

 

 まあ、なんにせよ、肩の荷も下りたことだし、今日は気持ちよく眠れそうだ。それはよかったことだと思うな。

 

 

 

 ちなみにそのあと、あまりにもおなかがすいてカップ麺を買いに出かけたのは内緒だ。

第三章は、これにて完結となります。次回は閑章を挟んで、夏休み前くらいまでの話を書きたいなと思っています。

それから、更新頻度をちょっと落としたいと思います。大体週2くらいでできたらいいかなあと。その理由はいくつかありますが、一番は私の案が切れたからです。ごめんなさい><

その他、詳しくは活動報告に掲載する予定なので、そちらを見てください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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