懸案事項がまた一つ増えた!
月曜日、あいも変わらず染みる指先を抱えながら、僕は深草さんと山科さんとともに学校へ向かった。あ、あと痴漢はもう山科さんに任せました。それに一々関わる気力ないので。もう。
相変わらず占いの結果は凶だったけれど、学校についた僕を待ち受けていたのはさらに悪い知らせだった。いや、それは僕自身のせいではあるのだけれど。とにかく、その知らせは、学級委員の坂本さんからもたらされたのだった。
「伏見君、バイト先の人に許可取ってもらえた?」
「あ」
どうしよう、完全に忘れてたなんて、この流れじゃ言えない。
「まさか、忘れてたなんてことないよね?」
「ごめんなさい完全に忘れてました」
勢いあまって土下座して頭を打ち付けた。痛い。根は小心者なんですよ!
そして珍しく溜息を吐く坂本さん。かたじけない。
「はあ~、生徒会員なんだからしっかりしてよ! いい、今日の放課後に聞きに行くこと! わかった!?」
「え、でも、用事が」
「返事は!」
「はい!」
うわ、一瞬すごく怖かった。うう、山科さんに話を通しておかないとだよ。
「というわけで、ちょっと寄って帰らないといけなくなりました」
「はあ、文化祭の件でしたら仕方ありません。しかし、今日からはいつも以上にしごきますからね! 今日からは製作ですから」
はい、というわけで一応山科さんから寄り道の許可はいただきましたが、あとで何かすごく怖いこと言われた! え、さらにしごくってどういうことなの! めっちゃ怖いんですけど!
そして放課後、僕はフクロウカフェ『シャルロット』に来ていた。なぜか、深草さんも一緒に。
「なんでここにいるんですか!」
「いや、だって私がフクロウカフェやりたいって言いだした張本人だからね。伏見君と一緒に行った方がいいでしょ」
いや、一応筋は通ってるけどさ。こんなの予定になかった! けががばれたらどうするんだ! 知らないもん。僕もう知らないもん。幸いにして何とかバレなかったけど。ちなみに十条さんにはこのことは話してある。
「うーん、それはちょっと難しいんじゃないかな。ここにいるフクロウたちは基本的におとなしいけど、知らない場所に連れてくと興奮するかもしれないし」
「やっぱり難しいですか。千秋さんのところのフクロウが借りられれば、と思ったんですけど」
「たとえ私が貸し出すのを許可したとしても、フクロウたちにはストレスがかかるし。他に借りる当てもないんでしょ?」
「ええ、そうなんです」
深草さんが気落ちした様子で頷く。十条さんの言葉ももっともだ。僕だってシャルやアルにストレスはかけたくない。仕方がない、あきらめるか。
「フクロウカフェって銘打つくらいだったら、5、6羽はほしいところだからね。いっそのこと、他の種類のペットもつれてきて、ペットカフェって名前にする? それだったら、1、2羽で済むと思うけど」
「いいですね、それ!」
深草さんが目を光らせて言う。でも、僕としては面倒そうだから反対なんだけどな。というか、僕の負担がすごく多くなりそうだ。
「ただ、うちからは貸せないし、フクロウを貸してくれる人もいないと思うよ」
「それくらいだったら、誕生日プレゼントに親にねだってみます」
ギクッ、とする。誕生日プレゼントって、十条さん、そこで意味ありげに僕に微笑むのやめてもらえません? 緊張で傷口が開いたらどうなるんだ!
「じゃあ、そういう方針で頑張ってみてよ。フクロウ飼いのノウハウだったら私も悠杜君も教えられると思うからさ」
十条さんがほほ笑む。だから、僕を巻き込まないでもらえますか!
「それじゃあ、今日はありがとね。また来てね~」
その声とともに僕らは『シャルロット』を後にした。うう、懸案事項がまた一つ増えちゃったよ。全部深草さんが中心なんだけどさ。
でもその日はいいこともあった。やっと、絆創膏が解禁されたのだ。理由は、さすがに生地に血が付くとまずいかららしい。僕が慎重にゆっくり縫い上げていく横で、山科さんはもう1羽をサクサクと仕上げていく。さすがです。僕の方は終わりが見えないけど。
でも、絆創膏が使えるありがたさをようやく感じられるよ。学校ではNGって言われたけど、でも、薄く刺しただけだったら絆創膏貫通しないし。いや、助かった。ところで山科さん、これ、いつまで続けるの? 親には晩御飯は要らないって言っておいたけど。
え、集中力が途切れるまでずっとですか。そうですか。
祝、50話達成!
読んでくださった皆様、ありがとうございます。それから、これからもぜひ、『学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!』をよろしくお願いします。
一応、200話くらいで完結するといいなあ……




