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こういう時の竹田だよ

 ようやくテストが終わった。まじで疲れた。

 あの後バイトに遅刻したり、テスト期間が始まっても午後は生徒会室で勉強させられたり、心休まる暇がなかったけど、ようやく勉強から解放されるんだ! これをどれほど待ちわびたことか。もう当分勉強はやりたくない。具体的に言えば2週間くらい。でもこれで成績悪かったら泣くよ。泣いてひきこもるよ。ひきこもるは冗談だけどさ。

 でも今日はテスト4日目、つまり最終日なのです。それもついさっき終わったので、午後からは一日フリーなのです。ああ、こんな休日いつ以来だろう。今日は何しようかな。昼寝でもしてようか。でも、せっかくだから何か凝った料理でもしてみようかな。普段はできないし。

「昼ご飯何作ろうかな~」

 テストが終わった帰り道、何の気なしに呟く。

「あれ、伏見君家人いないの?」

「あ、僕父子家庭なんで。親は仕事だし」

「あの、なんかごめんね、お母さんのこととか聞いちゃって」

 隣を歩いていた深草さんが言う。そういえばそんなことを言われてた気もする。聞き流してたけど。

「それより、せっかくだったら私が作ろうか?」

「いえ、いいですよ。こう見えて、料理は結構できるんですよ」

 深草さんの申し出を断る。これ、なんか嫌な予感しかしないんですけど。深草さんの家になんか行かないからね! だって彼女は僕に惚れてないんだから!

「へえ、でも、私も結構得意なの、知ってるでしょ。伏見君よりは料理できると思うけどな」

「めんどくさいのでお弁当は作ってませんけど、僕だって料理できるんですよ」

 実際、僕は料理が結構できたりする。時間があるときはちょっと凝った料理に挑戦したくなるんだよね。

「なかなか言うじゃない。だったら勝負する? まさか逃げるなんて言わないわよね?」

「わかりました、料理対決、受けて立ちましょう!」

「じゃあ、伏見君の家のキッチン借りるわよ」

 しまった! 言質取られた! まさかそんな風に攻めてくるなんて! どうしよう、これ。

「まさか、自信がないの?」

「そんなわけないじゃないですか!」

 言い返す。仕方ない、キッチンは貸すことになったけど、料理勝負は負けないんだからね!

「よし、それじゃあ、負けたほうが勝ったほうの言うことを何でも一つ聞くってルールでね」

 はい? ってちょっと待って! そんなの聞いてないんだけど。

「だってそのほうが面白いじゃない。自信あるんでしょ」

「はい……」

 そして相変わらず反省しない僕であった。

 

 

 

 そして約一時間後。二人ともメニューは出来上がっていた。深草さんは和風に、味噌汁と煮物、卵焼きに白和え。普段から料理しているだけあって、なかなか見事だ。香りも食欲をそそる。

 一方僕はオムハヤシ。ふわふわのオムライスにかけられたハヤシライスがうまくマッチしてすごくおいしいはずだ。そしてこれをふわふわに包むのは難しい。なかなかのものだと思う。

「どうしよう、ね」

「そうですね」

 ただしここで問題が一つ。二人とも、2人前で作ってしまった。何をやってるんだ。

「余るね」

「そうなりますね」

 どうしよう。これ。せっかく作った料理を捨てるのはもったいないし……。

「とりあえず、お互いが相手の作ったものを食べるとして……」

「残りをどうするかですね」

 とりあえず、冷めないうちに食べ始める。僕少食だからあんまり食べられないしなあ。

 深草さんの料理はとてもおいしかった。家庭の味がして、とても暖かみのある味がした。ただ、残念なことに僕のと比べられない。

「そうだ!」

 思いついた僕は叫ぶ。

「何?」

「こういう時の竹田だよ」

 そう言って僕は、スマホから竹田に電話を掛けた。

「もしもし」

『もしもし、伏見か?』

 竹田にはワンコールでつながった。

「そうだよ。今昼ご飯って食べた?」

『食べたがそれが何なんだ』

「いや、今深草さんの手料理が家にあるんだけどさ」

『なんだと!? 理由を言え、理由を!」

 よし、食いついた。

「いや、紆余曲折は省くけど料理対決をすることになってさ。でも僕って小食じゃん。だから余っちゃってさ。もったいないから食べに来ないか」

『すぐ行く』

「あ、先に言っとくけど全部食べてね。残すのもったいないし」

『当り前よ! 誰が深草さんの作った料理を残すかよ! そこで待ってな』

 そう言って竹田からの電話が切れた。よし、言質は取ったぞ。

「伏見君、悪そうな顔してるよ」

 おっといけないいけない。

 

 

 

 竹田は2分とかからずにやってきた。

「はい、料理。全部食べてね」

「了解。って多くね!」

「知らないよ~、全部食べるって言ったもんね」

 竹田が大げさに反応する。

「いくら何でもこの量は辛いって」

「がんばれ、竹田。深草さんが見てるぞ」

「でもよお」

 まあ、昼ごはん食べた直後に2人前だからね。多いのはわかる。

「はい、食べた食べた」

 そう言って急かす。ああ、なんか久しぶりにすっきりしたかも。気持ちがいいや。竹田、冥福を祈る。冗談だけど。

 

 その後、何とかすべての料理(僕のも食べさせた)を食べた竹田は、口元を抑えてふらふらしながらも帰っていった。竹田、グッジョブ。

 

 

 

 あ、料理対決の決着つけるの忘れた。

ここから+αの始まりです(というかむしろそっちか本題)

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