閑話 大谷拓都の野望 1
突然だが、俺のクラスにはとんでもない美少女がいる。学年一、いや、学校一とでも言っていいくらいだ。モデルなんかをやっててもおかしくないくらいの美少女だ。名前は深草未悠。彼女を取り巻く噂は数知れないとか。まあ、俺には関係ないことだが。
それはともかく、俺にはここで高校生活を送るにあたって、大きな野望があった。それは、それは。
彼女を作る、だ。
中学の時はマジ羨ましかったんだよなあ、バスケ部の部活仲間に惚気話聞かされてよ。だから、俺は決心した。絶対に、高校の間に彼女を作って見せると。
幸いにして、大多数の男どもは、深草さんに夢中だ。まあ、その深草さんは、同じクラスの伏見に夢中だから、徒労に終わるだろうがな。伏見悠杜、深草さん絡みで何かと噂の多い人物だ。俺の友人でもあるな。でもその間に、俺は彼女を作ってリア充の仲間入りをするのだ!
というわけで、俺は学級委員の坂本さんに狙いを定めた。坂本三希、深草さんの影に隠れてはいるものの(まあそのおかげでライバルが少なくて助かるんだが)、彼女もかなりの美少女だ。ミスコンでもいいところまで行くんじゃないかな、なんてね。しかも、学級委員をしていることからわかるように、気立てもよくて、みんなに優しい、まさに俺のタイプど真ん中だ。というわけで、狙いを定めたわけだ。
幸いにして、入学二日目に接触する機会があった。大多数の男が深草さんにつられて食堂に行っている隙に、孤立しないようにと坂本さんが俺を昼めしに誘ってくれたのだ。正確に言えば、俺たちを、だけどな。でもこの時ばっかりはいつも弁当を作ってくれてる親に感謝したね。朝練のせいで早くに家を出るにもかかわらず、早起きして弁当を毎日こさえてくれてるんだから。食堂に行っていたら接触するチャンスがなかったよ。まあ、本当のことを言えば、その時に坂本さんに惚れたんだけどな。
そして、そこでの会話の結果、俺は坂本さんが園芸部を作ると聞いて、そこに入部することにした。バスケ部も続けながらの兼部だ。あれは骨が折れたなあ。練習には干渉しない範囲で関わるという条件で何とか許可を得られたよ。朝練の前とか、部活のない昼休みとかに花壇に水をやったり、草抜きをやったりしてます。まあ、朝練前には坂本さんはいないのだけど。
そうやって順調に距離を縮めつつある俺ではあるのだが、いかんせん接点が少ない。そこで、だ。俺は思いついた。せっかくの中間テスト前、勉強会を行わない手はないと。そこで勉強もできる姿を見せて、俺をかっこよく見せようと。まあ、これも、週明けになって勉強会をやったらしいクラスメイトの噂話を聞いて思いついたんだけどな。テスト一週間前からは部活も停止されるから、勉強会をやるのにはぴったりだ。
ただ、園芸部のよしみとして誘うというのも、ちょっとおかしい。園芸部にいるのは俺以外だと女子と名義貸しの男子だけだから何かおかしい気がする。そもそも、俺はほとんど参加できてないしな。というか一番の理由は照れくさいからなんだけど。
そこで、だ。俺はいいことを思いついた。二日目に昼ご飯を一緒に食べたメンバーということで誘えばいいじゃないかと。これなら、比較的自然だし、何よりも、話題性がある。実は、そのメンバーの中には、渦中の人伏見がいるのだ。これを利用しない手はない。言い方は悪いが、伏見を餌として利用させてもらおう。きっと坂本さんも、渦中の伏見に興味があるに違いない。ということで、俺の方針は決定したのだったが。
「僕、放課後ずっと生徒会で勉強会させられてるし、忙しいので」
青白い顔した伏見に断られた。
「だったら、土日にでも」
「土日は、バイトがあるので無理です」
俺氏、あえなく陥落。
いや、ここで引き下がるわけにはいかない。なんとしてでも坂本さんとの距離を縮めるのだ。
「なあ、伏見のバイト先ってどこだ?」
「え、『シャルロット』って名前のフクロウカフェだけど」
「じゃあ、そこでやろうぜ、勉強会。それなら文句ねえだろ」
「え~!」
驚いた顔をして伏見が言う。よかった、天は俺を見放さなかった。それなら、伏見を巻き込んで、坂本さんが釣れる! 多分!
「頼むよ、伏見。友人の頼みだと思ってさ」
「はあ~、一応聞くだけ聞いてみますけど無理かもしれませんからね」
疲れている様子で伏見が言う。お前も、大変なんだな。そう思いながら、伏見が電話をかけるのを心待ちにして聞いていた。
「一応、オーケー出たよ。坂本さんと木野さんには僕から話をしといたらいい?」
「恩に着るぜ伏見! ありがとよ!」
そう言って伏見の手を握る。伏見は相変わらず疲れ切った顔をしていた。
「それじゃあ、土曜日の午後1時に昼めし食って『シャルロット』に集合ってことで、よろしく」
伏見にそう告げる。疲れ切った様子だったしな、あとで缶コーヒーでも買っといてやろうか。100円のやつ。
ここに来て唐突に大谷君再登場! 坂本さんと幸せになれるといいですね
ちなみになぜ閑話なのかというと、伏見君視点の物語が全く思い浮かばなかったからです。あしからず




