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生徒会の『愚者』

「それじゃあ、勉強会を始めようか」

 樟葉先輩が音頭を取る。小野先輩と石田先輩は知りません。僕も、問題集に取り掛からなくちゃ。

 授業の終わった放課後、僕ら生徒会の6人は、生徒会室に集まっていた。今思ったけど、これって、小野先輩が石田先輩とイチャイチャしたいから提案したとかじゃないよね。だとしたらいい迷惑だ。

「伏見君、ここ、間違えてるよ。三乗を因数分解するときは、最後の符号は-じゃなくて+だよ」

「え、そうなんですか?」

「そう、変わるのは最初と次だけね。覚えとくといいよ」

 深草さんに言われて因数分解の問題を修正する。教師は黒板に公式を書くだけだから分かり辛いよ。深草さんの教え方はわかりやすいな。

「ちなみに二乗の和は、二乗の差の公式のBの後にiつけるだけだから」

「虚数は一年生の範囲じゃありませんからね」

 樟葉先輩の台詞に深草さんが突っ込む。

「さらにちなみに、複素数と三角関数は相性がいいんだよ」

「それまだ習ってませんから」

 樟葉先輩はどうやらどうやら調子がよさそうだ。深草さんが振り回されてるように見える。僕もだけど。

「にしても一年生はいいよね、教科少ないし」

「多いですよ!」

 いや、中学まで国社理数英+αでしたからね。

「だって、中間は国語と地歴、公民、あと生物と化学と数学二時間とコミュ英に英表。9時間だけじゃん。二年は12時間だよ。4/3倍だよ。4/3倍! 多いって」

「1.3倍って言った方が分かりやすいと思いますけど」

「いや~、それは正確じゃないからさ。やっぱり、正確な数字で言ってあげたいじゃん」

 いや、樟葉先輩、そのこだわり方はよくわかりませんから。それから、9時間でも多いじゃないですか。1.8倍ですからね。ほぼ2倍!

「ま、少年よ。君は君で頑張り給え。私は諦めるから」

「諦めちゃダメですからね」

「ははは」

 そう言って笑いながら、樟葉先輩は僕の頭をなでる。樟葉先輩は『愚者』だな。型に捕らわれない。いい意味でも悪い意味でも。そして、左手で撫でながらも、樟葉先輩のシャーペンは止まらなかった。

「Boys, be ambitious like this old man!」

「あなたは老人じゃないでしょうが!」

 思わず突っ込みを入れる。それと、大志を抱くって関係なくない?

「いや、今のコミュ英がこれなのさ」

「今やってるのは世界史でしょうが!」

 そうやって樟葉先輩はよくボケをぶっこんでくれていた。でも、深草さんの教え方はわかりやすかったし、樟葉先輩も時々、気が向いたとき教えてくれた。おかげでテスト勉強がよくはかどった気がする。山科さんは終始無言だったし、『恋人』たちは終始いちゃついていたけどさ。

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