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完全に忘れてた……

 その事件は、月曜日の朝早く人知れず始まっていた。

 というのは嘘で、完全に僕が忘れていただけである。というのも、深草さんと山科さん、それに生徒会の面々は完璧に覚えていたからである。誰か一人ぐらい忘れとこうよ。

 で、その元凶の人たる(完全にこじつけ)鳥羽は、朝の学活でこう言い放ったのである。

「わかってると思うが、今日から中間テスト2週間前だ。各々勉強をしっかりしておくように」

 そう言われた教室は大混乱。まさに上を下への大騒ぎ、なんてこともなく、せいぜい忘れていた生徒数名が焦り、ものぐさな生徒数名がだるそうな眼付に変わっただけだった。

「そういえば、昼生徒会だけど知ってる?」

「うん、だから食堂でご飯食べたらすぐ行こうと思って」

「昼食べながらだよ」

「マジですか?」

 昼休みになって深草さんと言葉を交わす。

「じゃあ、昼ごはんどうしよう」

「心配しないでも、私のとか先輩のを分けてもらえるよ」

「はあ」

 だめだ、最近深草さんのお弁当があることを基準に考えてしまっている気がする。これはいつ終わるとも知れない気まぐれ。本人の前では言えないけど。

 そうして僕らは生徒会室へと向かうのだった。

 

「待っていたぞ、FFコンビ」

「ちょっと待ってください、FFコンビって何ですか?」

「ん、何も、二人ともイニシャルがFだろう。だからだ」

 そう言って小野先輩は笑う。

「ささ、三人とも席につけ」

「三人って、僕らだけなんじゃ……」

 すると、生徒会の先輩方は無言で後ろを指さした。

「って山科さん! 何でここに!」

「彼女は優秀だからね。私が呼んだんだ」

 そう言って樟葉先輩は笑う。山科さんは無言で席に着いた。深草さんもすでに席についている。

「それじゃあ、早速議題に入ろうと思う。食べながらでいいから聞いてほしい。みんな気づいているかもしれないが、今月末、つまり2週間後、定期テストがある」

 そこで小野先輩は石田先輩の弁当箱から唐揚げを取って食べた。あ、そういえばこの二人付き合ってたね。何かよく知らないジンクス通りにさ。ははは……。

「で、そこで我々は、生徒会役員としての面子を保つために、いい成績を残さなければならない。そこで!」

 小野先輩が机をたたく。

「生徒会員で、勉強会を行う!」

 言ってることはまともなんだけど、彼女に出汁巻きを食べさせられながらだから説得力に欠ける。

「ま、之成が琳といたいって理由もあるんだけどね」

 横で樟葉先輩が囁く。あ、やっぱり。

「特に、伏見、君には三十位以内を取ってもらうからな。覚悟しとけ」

「は、はい」

 反射的に答えちゃったけど大丈夫か、これ? 僕入学時の成績92位だぞ。

「それじゃあ、また放課後に、生徒会室に集合。解散」

 小野先輩が言う。これで、安心してお昼ごはんに取り掛かれる。でも、深草さんが作ってきてくれてよかった。その真意のほどはどうであれ。

 でも、小野先輩と石田先輩のバカップルぶりには、本当に場が白ける。

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