深草未悠 私は、伏見君のことが、好きだ!
翌朝、千秋さんに教えられた家に行くと、確かにその表札には伏見と書かれていた。ここが、伏見君の家なんだ。こ、これから登下校をするんだよね。気張らない気張らない。
「まったく、お姉さまを待たせるとは」
「それに関しては、私が早く来すぎたせいもあるからさ」
京香の呟きに答える。かれこれ30分近く待ってるよ。まあ、私が万が一と思って早く来すぎたせいなんだけどね。
「あ、あれ! 深草さん!?」
ようやく家から出てきた伏見君が驚きの声を上げる。でも、伏見君が驚いたせいで私の心は少し落ち着いたかも。
「あのね、千秋さんが家近くだって教えてくれたから、せっかくだから、一緒に」
「そういうことです。私としては大変不本意ですが、早く行きますよ伏見悠杜」
「京香、ほぼ初対面なんだからいきなりそんなこと言わなくても」
「とにかく時間の無駄です。歩きますよ」
そう言って今日がが伏見君の手を掴んで歩き出す。伏見君は訳が分からなさそうなまま家から出てきた。
「あ、あの、これは」
「一緒に登校してもらえる?」
「しないとは言いませんよね」
「あ、は、はい」
京香がさらに一押しする。押し切っちゃった感があるけど、ま、いっか。
「それより伏見君、占いのカードっていつも持ち歩いてるの」
「ええ、一応。ここに」
そう言って伏見君はポケットからカードを取り出す。
「ねえ、じゃあ占ってもらえる?」
「あの、それは、タロットカードは机の上で混ぜるので、ちょっと、それは無理です」
「それは残念」
会話を振ると、伏見君はやや緊張しながらも答えてくれる。こういうことだよね、千秋さんが言ってた、長い時間一緒にいるって。こうやって、いろんなことを話してけばいいんだよね。掴みは失敗しちゃったけどさ。
「深草さんって意外とフレンドリーなんですね。前食堂であった時はすごい怖かったですけど」
「あ、ごめんね。あの時は気が立ってたからさ。ついね」
うん、意外と普通に会話できたよ。やろうと思えばできるもんだね。
「それじゃあ、僕はこの辺で」
「何も、同じクラスなんだから遠慮しなくてもいいのに」
下駄箱の辺りで別れようとしてきた伏見君を引き留める。ちなみに京香は不干渉だ。あんまり私が干渉されるの好きじゃないの知ってくれてるからね。
「え、いや、でも」
「ほらすぐそこなんだしさ」
腕をつかむと伏見君は逃げ出そうとする。それを私は追いかけた。といっても早歩きだけどね。教室に入る寸前で伏見君の腕を掴みなおした。
「お、伏見。って深草さんと登場かよ!」
伏見君の友達の竹内君が驚きの声を上げる。そこで別れてカバンを机に掛けた。
「おい伏見! 何抜け駆けしてやがんだ!」
「そもそもお姉さまはあなたたちのものではありませんが」
なんか不良君が伏見君に絡む。むう、伏見君に危害加えるなら許さないよ。
「おい、ちょっとトイレまで面かせ!」
バン
「私のことで伏見君にちょっかい掛けたら許さないからね」
そうだ、この隙に伏見君のことについて言っとかなきゃ。
「あと、この際言っときますが嫉妬なんて感情で不利益なことする人は一生軽蔑しますから」
これで、伏見君に変なことをたくらむ人はいないよね。それは最悪だからね。京香も言う。
「とりあえずその辺で正座しなさい」
今はまだ、この気持ちを伏見君には伝えられないけど、いつか気づいてもらえるといいな。私が、伏見君のことが好きだってことに。
そして、ゴールデンウィークだったり、席替えだったりでいろいろあったのだが、それはまた別のお話。
これにて第二章は終了です。今後とも、『学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない』をよろしくお願いします。




