ツンデレってやつ……じゃないよね!
一昨日は散々な一日だったよ。もう。
まず不幸その一、何の接点もない美少女のクラスメイトがバイト先の店に来た。ほとんど話したことのない、どちらかといえば恨まれてるような気がある深草さんが店に来た。その時点で僕にとってはプレッシャーなんですけど! 何の罰ゲームだと言いたい。僕は平穏な学園生活を望んでるんだぞ。友達が遊びに来た、とかならともかく学年一の美少女が何の関係もなく来た、なんて他の人に恨まれるじゃないか。別に深草さんに興味がある、なんていうわけじゃないしさ。まあ、お客さんとしてきた以上、店員として対応したけれども。でも、少しぎこちなくなってしまったのは許してくれ。
不幸その二、なぜか十条さんが深草さんと仲良くなった。しかも、深草さんに、僕と仲良くしてあげてと言っていた。なんでだよ! 僕そんなこと望んでないからね! 普通に普通な中位置で僕は青春を謳歌するんだ。だから深草さんは上のほうで頑張っといてください。そう思ってたのに、十条さんがそういうことを言ったせいで関わることになっちゃったらどうするんだよ。
不幸その三、このあたりから酷くなってくる。深草さんが店内で不良たちに絡まれた。しかも助け舟を出したら逆切れしてシャルを乱暴に扱おうとする始末。思わず手を叩いちゃったけどセーフだよね。しかも、そのあとコーヒーを投げつけられて火傷しました。最終的には十条さんが追い払ったからよかったけど。いや、よかったのか? よくないか、火傷したし。
そして最後にして最大の不運。深草さんに絡んでいた不良たちに再び絡まれる。まあ、こればっかりは、深草さんが絡まれてるのを見た僕が突っ込んでいったから、仕方ない感じもあるんだけどさ。だって、別に好きとかそういうわけじゃなくてもクラスメイトが絡まれてるの見たら放っておけないじゃん。しかもそれが女の子だし、危険じゃん。そういうわけでさっそうと飛び込んでいったわけなんですが。ボコボコにされました。いや、そんな暴力的じゃないと思ってたし。まあ、僕が自分の強さを見誤ってたっていうのもあるんだけどさ。でも、逃げるわけにもいかないじゃん。でもボコボコにされました。最終的に十条さんが現れてくれたおかげで何とかなりました、というかなったらしいけど、僕気絶しちゃったらしいので知りません。まあ、不幸中の幸いには深草さんが無事だったことかな。
そういうわけで、翌日僕が目覚めたのは病院でした。そのあとの検査やら検診やら手続きやらで、一日中潰されました。おかげでバイトに行けなかったよ。骨折とかそういうけがはなくてよかったけど、左手と右足に包帯巻かれました。あ、言っとくけど僕は厨二病じゃないからね。
その日も結局病院に泊まることになり、今日月曜日、ようやく退院することができた。といっても退院の手続きとかで学校遅刻することになっちゃったけどね。ああ、皆勤賞はこれでなくなっちゃったか。
「おはよー」
3時間目の前の教室を開ける。すると竹田が軽く言う。
「おう、重役出勤とはいい御身分で」
「そんなわけあるか」
軽くいなして席に着いた。後、前の席の人が固まってるんですけど。
「お、一昨日は、あ、ありがとうね。た、助かったよ」
そう言って深草さんは前を向いて口をつぐんでしまった。
これは、どういうことなんでしょう。まさかツンデレってやつ……じゃないよね!
ないな。自分の思考がないな。




