表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/181

緊張して上手く話せなかっただけなんです

 その日、僕は寝坊して弁当を忘れた。

 いや、別にそこまで寝坊したわけじゃない。ただ、弁当を作るほどの時間が無かったというだけだ。コンビニで弁当を買う暇もなく、食堂を利用しようと思った。ただ、それだけのつもりだった。

「竹田、食堂行かないか?」

 竹田に声をかける。

「いや、俺は……いいわ」

 歯切れの悪い台詞が帰ってくる。どういうことだ。

「あれを、見ちまったからな。当分食堂は利用したくないぜ」

 おい、なにがあったんだ。不安にさせるようなことを言うなよ。

「まあ、頑張れ」

 達観したような表情で竹田は僕の肩に手を置いた。

「じゃあ、大谷君も一緒に」

「いや、俺もいいよ」

 大谷君を誘ってみたけど断られた。何、戦場に向かう親友を送るような目は。なんなの、これ。僕一人で行くしかないの!?

「すまん、一人で頼む」

 その台詞を怪訝けげんに思いながら、僕は食堂へと向かうのだった。




 食堂に入って、カレーうどんを注文する。右手一番奥の長机が空いていたので、そこの端に腰掛けた。友達がいないので1人で静かに食べたいと思ったから。カレーうどんをすする。

 え、何。僕何かしましたか? 同じ机に座った少女に思い切りガン飛ばされてるんですけど。クラスメイトの深草さんだよね。何、僕に恨みなんかないはずですけど。

「私に関わらないで。どうせ大した用もないんでしょう」

「まあね、用は特にないよ。ここ空いてるから使ってるだけ」

 とりあえず、無難に答えとこう。どこで地雷踏むかわからないし。すると深草さんは僕をにらみつけて来た。え、何? 何でしょう? 適当に愛想笑いをする。というか、確かにかわいいけどなんかちょっと怖いや。

「あなた、占いが得意だったよね」

「そうだよ、深草さんも占ってみる?」

 とりあえず振られた話に乗ってみる。緊張して上手く話せないよ。というか何話せばいいの。

「それじゃあ、お願いしようかしら」

「了解」

 ああ、これでようやく視線から逃れられる。

 そして繰り出して引いたカードは逆位置の『恋人』だった。ヤバイじゃんこれ。誘惑とか悪い意味じゃん。これ、悪い結果いったら詰むやつだよね。

「出ましたよ、えっと、逆位置の『恋人』ですか。……そうですね、このタロットには深い絆や結婚を表すんです。深草さんもいい相手と出会えるといいですね」

 適当に微笑んどく。これで変に恨まれることはないよね。とりあえずここから逃げ出させてください。あんまりかかわりたくないので。




 でも僕は知らなかった。翌日思わぬ形で再開することを。そして、この時、歯車は狂い始めていたことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ