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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!
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どっちにしろ逃げ場なかった!

 結局、僕は生徒会選挙に出ることになった。鳥羽の言った通り選挙に対立候補はいなくて、立候補したのは5人だけだった。まあ、対立候補がいたとしてもう今更なんだけどね。結果から言うと、山科さんたち親衛隊の手が回った僕が落選するはずもなく、僕は生徒会に入ることが決定したのだった。早速、放課後に生徒会室へと向かう。

「失礼します」

「お邪魔します」

 深草さんと共に生徒会室に入ると、そこには3人の男女と教師が待ち構えていた。

「おう、お前らが深草と伏見か。俺は生徒会長をしている小野之成(おのゆきなり)だ。これから一年、よろしく頼むぞ」

 そう言って奥の机に座っていた少年が自己紹介をする。イケメンだ。ついでに言うと他の2人も美少女だ。横にいた少女が口を開く。

「ユッキーの彼女の石田琳(いしだりん)です。一応書記だよ。よろしくね、副会長の未悠ちゃんと、それから庶務の悠杜君」

 石田先輩は小野先輩の彼女らしい。それ今言う必要あった?

「それで、私が会計の樟葉加乃(くずはかの)だよ。私はユッキー達と違って今年からだから、よろしくね」

 もう一人残っていた少女が言う。3人とも呆れるほどの美男美女だった。

「それで、俺が生徒会顧問の橋本(はしもと)だ。俺はあんまりかかわる気はないがこれから一年間よろしく頼むぞ」

 ちなみに橋本もイケメンであった。生徒会って恐ろしい。こんなところに僕がいていいんですかね。一応平均顔という自覚はあるけれど。

「まあ、今日は顔合わせだけだから、気楽にしてくれてかまわないよ」

 小野先輩が僕らに声をかける。すると早速樟葉先輩が僕に話しかけてきた。

「ねえ、悠杜知ってる? ここの生徒会にはあるジンクスがあるんだけどさ?」

 え、いきなりなんですか。あと、そのなめ回すような視線やめてもらえません?

「実はね、ここの生徒会って、カップルができやすいらしいの。だから、悠杜さえよければ、ね」

「先輩!」

 樟葉先輩の意味ありげな台詞に、深草さんが叫ぶ。まさか深草さんそれ知ってて僕を生徒会に入れようとしたの!? そんなわけないよね!

「もう、未悠ったら。妬かない妬かない。ジョークだってジョーク。安心してよ、私にねとる趣味はないからさ」

 そう言って、意味ありげに微笑む。この人、深草さんと別の意味で要警戒だ。

「っていうことで橋本先生でも狙おっかな。そしたらちょうどいいでしょ」

「何がちょうどいい、だ。生徒に手を出してみろ。俺のクビが飛ぶわ」

 そう言って樟葉先輩は談笑する。うん、気をつけよう。

 にしても、樟葉先輩の勘違いだよね! 深草さんが妬いてるわけじゃないよね! だって深草さんは僕に惚れてないんだから!




 その日はほとんど放課後いっぱいまで話しつくした。偶然だと思うけど、生徒会の全員が電車通学だと聞いた時にはびっくりした。そのおかげで帰り道も駄弁りながら帰り、小野先輩たちに前に立ち寄ったパン屋を教えたり、連絡先を交換したりできた。僕が本来描いていた平穏な日常とはだいぶ違った気がしたけれど、でも、こうやって高校生活を送るのも楽しいんじゃないかと思った。それによく考えれば部活に入らず本とバイトだけってのも寂しすぎる気もする。これでちょうどいい。そう思わないとやってられないや。

 小野先輩と石田先輩は方向が逆なので駅で別れ、樟葉先輩も降りる駅が違うので、電車内で別れて家へと帰る。深草さんとも家のすぐ近くで別れて、僕は家のベッドに寝転がっていた。父親はまだ仕事だ。


 プルルル、プルルル


 買ったばかりのスマホが鳴り響く。見たことない番号だ。誰だろう。

「もしもし」

「伏見悠杜、あなたに言っておこうと思っていたことがあります」

 このぞんざいな口調は山科さんだ。

「今朝のあなたのお姉さまの扱いは、到底許せるものではありません。ですが」

 あ、まだ折檻の途中だった……。

「ですが、お姉さまの笑顔に免じて、シメるのは保留にしといてあげます。覚えておいてください。これはあくまでも執行猶予ですから」

 あ、よかった。でも、深草さんと仲直りできたのも、山科さんのおかげだもんな。ひょっとしたら、こういう言い方しかできないけれど、あれは山科さんなりの優しさだったのかもしれない。

「なあ、一つ聞いてもいいか?」

「なんでしょう?」

 知らないうちに声が口をついて出ていた。

「もし、もしも僕があの時生徒会の紙を受け取ってなかったら、どうなってたんだ」

「そうですね、あなたの筆跡に偽装してサインした上で、当日はあなたを監禁して変装した上で私が立候補演説をするところでした」

 危なかった! 僕にはどっちにしろ逃げ場なかった! どっちにしろ入らされるなら、深草さんと良好な関係を築いといてよかった!

「今となっては意味のない仮定ですが」

 そう、山科さんは言う。ほっと僕は胸をなでおろした。

「そうそう、伏見悠杜、あなたに忠告しておこうと思います」

 油断したところで山科さんの怜悧な言葉が突き刺さる。

「私はまだ、あなたをお姉さまの横に立てる存在だとは思いません。現状、あなたが一番近いだけで。ですから、あなたにはそのための努力をしてもらいたいと思っています」

 そう言うと、山科さんは前触れもなく電話を切った。山科さんの意味不明な言葉が、しばらくの間僕を渦巻いていた。

これにて第一章は終了です。第二章は、深草さんが伏見君に惚れるまでの過去編を予定しております。拙い文章をここまでお読みくださり、ありがとうございました。

18/2/27:先生の名前を桂→橋本に変更しました。

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