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振られたらしい

大変遅くなりました

 二年参りに行くのは、我が家で毎年恒例のことだ。去年からは葵も起きていられるようになった。

 今年受験するらしい葵に風邪をひかせるわけにはいかないので、しっかりとみんなマスクをして着こんでから神社へと向かう。家から徒歩で30分ぐらいのところにある神社だ。流石にこの人数じゃ車にも乗り切れないしね。流石に伯父さんのミニバンに9人は無理だ。まあ、茜姉がいればもう一台運転できるから大丈夫なんだけど。

「人あんまりいないね」

「まあ、二年参りに行く人なんてどっちかと言えば少数派だからなあ」

 未悠さんとそんなことを話す。神社に近づけばもうちょっと人がいるんだけど、まだまだ遠いからね。

「私は、初めてだなあ。悠杜君は毎年行ってるの?」

「まあね。我が家の習慣みたいなもの」

「それは私も初めて知りました」

 去年までは6人だったんだけど、今年はかなり人数が多いな。

「おーい、夜遅いからあんまりはしゃぎまわるなよ」

「あ、お兄ちゃんごめん」

 走り回る問題児2人に声をかける。というか、車どおりがないからって言っても一応ここ車道だからな。後ろ向きに歩くのは危険すぎる。

「いえーい」

「ちょっ、えっ、葵!?」

 いきなり飛びつかれるとすごくびっくりするんですけど。というか、歩きにくい。

「じゃあ私も」

 そう言って未悠さんが腕を絡ませてくる。ちょっと嫉妬したとか? かわいいな。

「それじゃあ私も~」

「ぐはっ」

 予想してたから何とか耐えられたけどさ、加乃先輩後ろから圧し掛からないで。潰れるから。

「加乃先輩、いい加減やめてください。間に合わなくなります」

「ごめんごめん。ほらほら」

 すぐに退いてくれたけど。

「でも、高校入ってからだいぶ変わったんじゃないか? ほら、中学時代は、あれだ。ひいき目に見ても友達少なかった方だと思うんだが」

「そう、ですね。変わったかもしれません」

 竹田以外にあと何人いたかというところだ。少なくとも両手を必要としない。だけど。

「でも、高校に入って、未悠さんと出会って僕も大分変わりましたから」

「みたいだね」

 伯父さんが言う。確かに、いい兆候かもしれない。

「今は、この子たち以外にも友達いるんでだろう?」

「そうですね、最近だと二条グループだったかの御曹司とも縁ができましたし」

「楽しそうで何よりだよ」

 そう言って伯父さんがほほ笑む。そう言えば、最近はずっと楽しいことばっかりだな。未悠さんとも付き合ったし、利頼君と勝負したのも大変だったけど楽しかった。……まあ、バカノ先輩も含めていいか。

「なんかいまそこはかとなくけなされた気がする」

「気のせいだ」

 そう言えばこの人はエスパーでした。


 なんてことを言っているうちに、神社にやってきた。結構有名どころで、全国から人が来るらしい。まあ、そんなこと気にしないけど。

「人多いからはぐれないように。一応、集合場所はこの駐車場ね」

「はーい」

 葵が返事をする。いつものことだから他のみんなは頷くだけだ。

「それじゃあ、行こうか」

 父さんの言葉で一の鳥居をくぐった。手水所を過ぎて二の鳥居の手前でいつも待機している。

「お、もうあと2分だよ、急がないと」

 そんなことを言いながら手を洗う。ちべたい。

「あ、ハンカチ忘れた」

「葵はもうちょっと注意深くなろうな」

 そんなことを言いながら先に使い終わったハンカチを渡す。僕が持ってたからよかったものの、いつもどうしてるんだか。

「ね、ね、悠杜君。二年参りって、どうやるの?」

 こっそりと未悠さんが耳打ちしてくる。

「うーん、特に何もせずに待って、で年が明けた瞬間に今年もよろしくお願いしますって感じかな」

「それと、その直前にジャンプしたら地球からいなかったことになるよ」

「それはすごいですね」

「いや、そんなことないから」

 バカノ先輩は葵に変なことを吹き込むのやめて欲しい。

「後葵、それは周りの人に迷惑かかるから禁止な」

 それを言うと、葵はえーという顔をした。まあ、やる人いるんだろうけど、でもかなり混んできたし。

「ほら、後30秒だよ」

 未悠さんが時計を見ながら言う。そして、僕と目が合った。やっぱり、最初にあいさつするのは未悠さんだよね。

「10、9、8……」

 どこからともなくカウントダウンが始まる。あ、姉さん、加乃先輩抑えといて。

「3、2、1!」

「あけましておめでとうございます!」

 スマホのTV中継が信念を告げると同時に、一斉に礼をする。そして、未悠さんとちょっと笑った。

「それじゃあ、本殿の方にお参りに行きますか」

 初詣だ。


 お賽銭には、未悠さんと付き合えたことにも感謝して500円玉投げ込んでおいた。神社って大抵縁結びを売りにしてるらしいし。

「悠杜君、お守り買って来たよ」

「おー、何買ったの?」

「交通安全とか、健康とか……」

 ちょっと視線をそらされる。何か隠してるのかな? まあ、僕もその2つに商売繁盛を買ったけど。

「後は?」

「えっと、その、恋愛をね」

 照れながらそれを見せてくれる。ハート形の奴だ。そう言えばそんなのもあった。

「あ、じゃあ僕もお揃いで買ってくる」

「え!? どういうこと?」

 慌てふためく未悠さんも見てるのは楽しいけど、せっかく恋人なんだし、お揃いのにしたいじゃん。完全なペアルックとかは恥ずかしいけど、お守りくらいなら。

 そんなことを思って購入する。

「おーい、悠杜君こっちこっち!」

 ちょっとはぐれてしまったが、加乃先輩がみんなをまとめてくれていた。あれ、生徒会のメンバーしかいないや。どうやら抜け出してきたらしい。

「加乃先輩どこに行くんですか!」

「秘密~」

 こういう時は大抵良からぬことを企んでいるのだが。まあ、いいか。

「あ、ちょっとここで待ってて」

 そう言い残すなり、加乃先輩はすすッと人の間をかき分けていってしまった。

「あ、未悠さん買ってきましたよ。お揃いですね」

 袋を開けて早速お守りを見せびらかす。恥ずかしいような、でもちょっとうれしいようなそんな表情だ。

「未悠さんと一緒、嬉しいですよ」

「あ、ありがと……」

「はい、もらってきたよ!」

 加乃先輩に邪魔された。ていうか、なんだこれ。

「甘酒だよ」

「しれっと酒を飲ませようとしないで!」

 この人が飲酒癖あるのは知ってたけどさ! お祭り騒ぎに乗じてそんなことはしないでほしい。

「ごめんごめん。だけど、ここの甘酒はアルコール入ってないから。それはちゃんと調べたよ。ほら、どうぞ」

「ならいいですけど」

 未悠さんが受け取ったのを見て僕も渋々甘酒を受け取った。アルコールの香りはしない。じゃあ、問題ないか。

「ほら、新年を祝って。カンパイ!」

 加乃先輩が口にしたのに合わせて、甘酒を流し込んだ。うん、十分おいしい。

「ところで、あなたのだけ色が違うような気がしましたが」

「私のは甘酒じゃなくておとそだからね」

 やっぱり! 何かやると思ってた!

「加乃先輩! 何度も言ってますけど未成年が飲酒しちゃダメですからね」

「わかってるわかってる」

 いや、絶対こいつ分かってないって。

 今日こそはしっかりと頭に叩き込んでやる。そう思った時だった。

「あー、お兄ちゃんたち何か飲んでる!」

 葵が吶喊してきた。だから、そうやって、抱き着くのはやめてくれ。前よりは多少筋肉がついたけど。

「あ、私の余ってるけどちょっと飲む?」

「あ、欲しいです」

 そのまま未悠さんからコップを受け取る。本当に自由奔放な子だ。

「でも、葵も恋人いるんだろ。そういうのは、不用意にしない方がいいと思うけど」

 だから、その発言が爆弾になるなんて予想がつかなかった。

「……られたもん」

「え?」

「だから、振られたもん。だから、私今フリーだもん。だから別に関係ないもん」

「その……、それはすまん」

 なんか変なことを言ってしまったみたいで、咄嗟に謝る。そうか。どうやら葵は振られたらしい。だから、こんなにボディタッチをしてきたのか。

「ううん、気にしてないから」

「ああ、みんなここにいたのか。参拝終わったら帰ろうと思うんだが、もう大丈夫か?」

「あ、はい。一応」

 だから、その後の空気が少し微妙になってしまった。


 ……新年なのに、少し不穏だ。

加乃「作者―、せっかく令和になったんだし一緒に飲も……、あれ?」


加乃「誰もいない、これは置手紙か? 何々?」

作者「突発的に新しい小説を書きたい症候群に罹患したので暫く旅に出ます」

加乃「はああああぁぁぁぁああ!?」


作者「そういうわけで失礼」

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