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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
聞いてほしいことがあるんだ
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聞いてほしいことがあるんだ

「悠杜君、本当に大丈夫?」

「大丈夫、ただの寝不足だから」

 未悠さんに心配される。そんなに酷い顔をしてたか。

 昨日悶々としてろくに眠れなかったし、その後も朝ごはん食べて、お土産買って荷物発送の手続きして、チェックアウトして。結構忙しかった。新幹線の中でなら寝られるかもしれないけど、せっかく京都に来たんだしもう少し観光して回りたい。それに、まだ終わってないんだ。

「でも、ずっと眠そうだったよ? 銀閣寺ちゃんと見てた?」

「見てたって。枯山水見事だったし、京都タワーも見てた」

「ならいいけど……」

 いけない。未悠さんにちょっと心配されてる。まだ帰るわけにはいかないのに。

「次は、どこ行こうか? 帰りの新幹線からして、回れるのは後2か所くらいじゃない?」

「悠杜君、伏見稲荷にもう一回行きたいって言ってたでしょ? そこにしない?」

「でも、遠いし、ラストの方がいいんじゃ……」

「悠杜君疲れてるみたいだし、早めに帰ろ? 新幹線も時間が決まってるわけじゃないんだし」

 それは、流石にちょっと。僕のせいで観光が満足にできなるのは申し訳ないし。

 そう思っていたら、未悠さんに指でつんつんってつつかれる。

「そんな顔しない。体調崩したら元も子もないじゃん。それに、この旅行だって元々は私が学校に行けなかったせいでしょ? 十分堪能したって」

 そう言って笑う。

 そう言えば、ずっと未悠さん楽しそうだったな。旅行始まってから、観光したり、お土産買ったり。ホテルでご飯食べたときも、昨日僕をからかった時も、楽しんでるように見えた。

「それに、寝不足になったのって昨日私がからかったせいでもあるじゃん。気にしないって」

「でも、さ」

「はい、それじゃあ伏見稲荷行くよ」

 そう言って、未悠さんは僕の手を引く。反駁しようとしたけど無駄だったみたい。まあ、いいか。少し予定が狂ったけど、決着をつけよう。

「あ、その前にソフトクリーム食べていい?」

 そう言っている間に、未悠さんは財布を取り出していた。




「雪が降ってたらよかったのに」

 そんなことを呟く。地下から地上へ。電車が走り出たときの景色は相変わらずの晴れ模様だった。

「仕方ないって、盆地だし。それに、一応京都って東京よりも南にあるからね」

「そうだったんだ。知らなかった」

 まあ、でも、もし降ってたらちょっとロマンチックだなって思っただけだ。


 時期に、電車が伏見稲荷駅に到着する。ここからは徒歩だ。電車の中で少し体を休めた。頑張って山を登らないとな。本殿自体は近いけど、願掛けで千本鳥居を抜けた先に行きたい。

「疲れてるなら、千本鳥居全部通るのはやめにしない? 私も疲れちゃった」

「あは、僕も限界みたいです」

 そう思ってたけど、思ってた以上に体にガタが来てた。寝不足のせいもあるし、動き回って疲れ切ってる。体力ないなあ。加乃先輩なら千本鳥居抜けてさらに山奥まで言ってたかもしれないけどさ。

 本当は、もっといい場所があったはずなんだけどね。仕方ない。妥協しよう。でも、とりあえず狐のお守りは買う。かわいいし、なにより、伏見稲荷大社はそういう神社らしいし。

「狐かわいいよね。私もつい買っちゃった」

 お守りを見せびらかしながら未悠さんが笑う。大鳥居の下。チャンスは今だろう。

「深草未悠さん」

「なに、改まって?」

「聞いてほしいことがあるんだ」

 目を見据える。未悠さんは瞳を動かすことなく、真っすぐ見つめ返してきた。

「ずっと伝えようと思ってたことなんだけど。この場所がちょうどいいと思ってさ。それで、ここを選ばさせてもらった。何といっても『伏見』稲荷大社だし、それに、この辺りの地名に深草ってのもあるし。それに、狐様は縁結びの神様だから」

 本当は、勇気が出なかっただけなんだけどね。でも、もうすぐ加乃先輩が帰ってくるし時間がない。何より、苦しんでる未悠さんを見て力になりたいって思ったんだ。

 友達としてじゃなく、その一段上のステップで。

「……それって」

「うん、そう。未悠さん。僕は、あなたのことが好きです。付き合ってください」

「は、あ、あわわ……」

 未悠さんが口元を抑える。白い息が舞った。


 ……あれ、なんかミスった!? 何も反応がないんだけど?


 やばい、恥ずかしくなってきた。直視できなくて目をつぶっちゃう。


「……い」

「え……?」

 薄く目を開ける。どっちだ? いいのか、悪いのか!?

 成功率は高いと思ってた。だけど、不安で。でも、


「これから、よろしくお願いしますね、悠杜君」


 腕に抱き着いてきた感覚で、理解できた。

 僕たちは、恋人になったのだと。付き合うことができたのだと。


「あの、そろそろ帰る? なんかすごく眠そう」

「あ、ごめん。ちょっと気が抜けちゃって。締まらないなあ」

「でも、別にいいと思う」


 未悠さんが顔を赤らめる。その笑顔がすごくかわいかった。


 帰ろう。京都旅行で、しっかりと目的は果たした。これからは、恋人になった僕たちの時間が来るはずだから。




 帰りの新幹線、眠って起きてみたら膝で未悠さんが寝ていた。

これにて、この章は終わりです。お待たせして申し訳ありませんでした。

実は、二人の名前は適当に決めたんですが、後からちょうどいいなと思って伏見稲荷で告白させることにしました。だから偶然だったりします。

それと、恋人になりましたが、まだストーリーは終わるわけではありません。最終章、一波乱残ってます。これから更新していく予定なので、ぜひお楽しみに!

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