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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!
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覚悟を決めるしかない!

 山科さんにたっぷり折檻されたあとで僕は学校に向かった。と言ってもだいぶ手加減されてたし、続きがあるとも言われたけど。ああ怖い。詳細は言わないよ、だって思い出したくないもの。

 そんなこんなで僕は学校にたどり着いた。途中で痴漢に会いかけたけど。だって普段深草さんと並んでるからわかりにくいけど山科さんもかなりの美少女だからね。まあ、山科さんに触れる前に撃退されたけど。ついでに僕にも蹴りが飛んできたけど。

 学校に着いても先についていた深草さんは話してはくれなかった。まあ、当然だよね。それだけの事をした自覚がある。そういうわけで占いは今日はお休みである。自分のだけやるのも虚しいし。山科さんが無言で見えないように足を踏んできた。かなり痛かった。

 授業中も当然こっちを見ているはずもなく、LL教室の移動のときも、化学実験室の移動のときも一人だった。正確に言うなら山科さんに折檻されながらだったので、一人ではなかったが。

 僕は、こんな学校生活を望んでいたはず。学年一の美少女に絡まれることなんかない、平穏な生活を望んでいたはず。今からでもあれは深草さんの気まぐれだったといえばきっと竹田あたりと楽しい学校生活を送れることだろう。

 なのに、どうして、こんなにも僕は空虚な気持ちになるのだろうか。体の一部を持っていかれたかのような、そんな気持ちに陥るのだろう。どうして少し、残念だと思ってしまうのだろう。食堂の昼ごはんも、栄養バランスが考えられてておいしいはずなのに、どうして何か足りない味になるんだろう。


「何か私の顔についているとでも」

 向かいの席に座った山科さんが言う。相変わらず足は踏んづけられたままだ。でもそのつっけんどんな言い草がなぜかとても懐かしい気がした。

「いや、なんでもないよ。ただ」

「ただ、何なんですか」

 ただ、何なんだろう。このもやもやした気持ちは。ああ、そうか。

「いや、少し寂しいなって思っただけさ」

 山科さんの顔が少し険しくなる。

「何なんだろうな、いなくなって清々したと思っていたけど、実際は、一緒に居て楽しかった、んだろうな、たぶん」

 そうだ、今わかった。僕はなんだかんだで迷惑だとは思っていたけど、それと同時に楽しいとも思っていたんだ。もちろんそこに恋愛感情は存在しないはず――それも相互にだけれども、決していなくなれなんて思ってなかった。深草さんが僕の前から去って数時間だけど、そんな時間で寂しくなるなんてな。皮肉なものだ。

「戻りたいですか」

 山科さんが聞く。心なしか、足が緩んだ気がした。

 そうだ、自分の答えは決まってる。

「ああ、戻りたいよ。戻れるなら、ね」

「でしたら提案がないこともありません」

 相変わらずの口調。でも、少し喜んでる気がした。

「これを」

 そう言って差し出されたのは、原稿の部分がびっしりと埋められた立候補届けだった。ご丁寧に名前の欄だけ空けてある。

「わかった」

 それを、僕は受け取って名前を書く。山科さんの手が伸びてきたところを押し留めた。

「これは、自分で出しにいく。でもその前に、深草さんに謝ろうと思うんだ。だから」

 そう、これが僕の答え。浅ましくも昨日までの僕が気づけなかった答えだ。

「だから、山科さん、力を貸してくれ」

「私はお姉さまのためになること以外はしません。伏見悠杜、あなたのために何かするということもありません」

 山科さんが言う。

「ですが、あなたが謝る場所をセッティングすることは、お姉さまのためになると判断しました。いいでしょう。私に任せてください」

 そう言って、山科さんは、確かに微笑んだ。

 別に、深草さんのことが好きなわけじゃない。それは断じてない。だけど、それでも、誰かが傷つくのを見るのは悲しいことで、誰かを傷つけるのは取っても虚しいことだ。そんなことしても何にもならないってことくらい分かってるから。だったら、それを謝るしかないじゃないか。別に好きじゃない人でも、嫌いだということとイコールじゃないんだから。

 そうだ、僕は、昨日までの騒がしい、けれども深草さんといられたあの日常が、とても楽しかったんだ。それを取り戻したいなら、本当に元に戻りたいと願うなら、覚悟を決めるしかない!

18/1/9:ご指摘ありがとうございます。前話と不自然なところがあったので(というか人名の打ち間違い……なんてミスをやってんだ私は)、そこを修正しました。

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