表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
聞いてほしいことがあるんだ
166/181

深草未悠 なんでもないことのはずなのに

今年中にもう一話投稿できるといいな

 結局いけなかったな、なんて溜息を漏らす。

 わかってる。きっと、たぶんみんな、私のことを受け入れてくれるんだろうなって。だけど、2週間以上顔を合わせてない。

 そう思ったら怖くなって、足が床に張り付いたみたいに動けなくなっちゃった。そんなことないってわかっていても、考えれば考えるほど深みにはまってしまう。その考えに囚われて、相変わらずベッドで膝を抱えていた。

 着替えることはできたのに。研修旅行の準備もできたのに、トランクに詰めてあるのに。後は私の家を出て、学校の前に止まっているはずのバスに乗り込むだけなのに。そこまで準備したというのに。結局私は何もできなかった。

 頑張って準備したのになあ。

 生徒会のみんなで京都に下調べに出かけて、いろんなところ回ったり、ホテルの設備とか確かめたり。タイムテーブルとかも頭突き合わせて決めて、ここに行こうなんてことをみんなで相談して、ずっと準備してたのに。全部、無駄になっちゃった。

 自分が嫌になる。何でもないことのはずなのに、引っかかっちゃってさ。思うようにいかないんだ。美少女だなんだってもてはやされてても、ちっともやりたいことができやしない。

 目覚まし時計がカチカチという音がする。一つ音が聞こえるたびに、また何かがせりあがってくる。

 時間がない。すぐ出ないと、間に合わない。バスは私を置いて出発してしまう。早く、ここを出ないと。

 そう思えば思うほど焦りだす。こんなところにいちゃダメだって。みんなと一緒に研修旅行に行かなきゃって。だけど、前へ前へと行こうとするのは気持ちだけで、私の体は拒絶するだけだ。

 カチ、カチ

 時計の針が動いていく。その音が、やけにうるさい。頭の音が反響する。やめて、そんな音を追い詰めないで。時間が過ぎていくたびに、どんどん締まっていく。

 行きたかった。京都、行きたかった。みんなと一緒に。

 京香や、彩里ちゃん、三希ちゃん、拓都君。利頼君も、ちょっとは大丈夫になったし。後、康行君。それから、当然、悠杜君。あんな風にみんなと一緒に、研修旅行行きたかったのになあ。

 悠杜君、どうしてるだろ。

 疲れて、ベッドに寝っ転がる。布団で目を覆った。今は光を見たくない。

 たぶん、みんなバスの中に集まってるんだろうな。それで、私がいないことにも気づいている。やっぱり来られなかったんだって思ってるんだろうな。

 時計の針がさらに回る。

 なんでもないことのはずなのに。ずっと、普通に学校に行けていたはず。あの人ももういない。それなのに、こんなにも怖く感じるなんて。


 時間が過ぎた。すっと、楽になっていくような、そんな気がする。なぜかって、もう、出発予定時刻を過ぎたからだ。もう、バスは出発したはずだ。もう手遅れだとわかると、すっとせりあがって来たものが下りていく。諦めがついたせいだ。

 悔しい。それと同時に、ちょっとほっとしてる自分がいた。もう頑張らなくていいんだって。

 あれ、まただ。こんなに涙もろくなかったはずなのに、最近ずいぶん泣くようになっちゃった。昔は感情の振れ幅すら小さかったというのにさ。なんで、止まってくれないんだろう。

 そんなにショックだったんだ、私。なのに、動けないなんて、何やってるんだろう。ちょっと惨めになる。行きたかったはずなのに、自室で泣くことしかできないなんて。


「泣かないでよ。そんな顔見たくない」

「悠杜、君!?」


 え、なんでこんなところにいるの!? 鍵は確かにかけてなかったけど! じゃなくて!


「なんで! バスはもう出発したんじゃ!」

「実は、アルテミスとアポロンの世話頼むの忘れてたことに気づいて、いてもたってもいられなくなっちゃって」

「馬鹿! なんで!」

 それが強がりだってことくらい、考えなくてもわかる。だけど、それだけに何をさせてるんだって思う。

「携帯で誰かに連絡とればいいじゃん!」

「あ。完全に忘れてた。それに、未悠さんのことも心配だったし」

「忘れたままでよかったのに!」

 なんでよ。どうしてよ。どうして、悠杜君はそうやって私のことを気にかけてくるの。私のことなんかほっといて京都に行ってほしいのに、私を理由に残ってほしくないのにさ。迷惑なんて掛けたくないのに。

「それは、無理。だって、未悠さんと一緒じゃないと、楽しくないし。せっかく行くんだったら、一緒に回りたい。未悠さん1人置いていくなんてできないよ」

 だけど、悠杜君はそんなことを言ってさ。わかってる。そういう人だって。私が好きになったのもそういう悠杜君だし。だけど、そう思うのはやめられないよ。

「私のためにそんなことしなくていいのに」

「僕は僕の意思で行かないって決めた。それは笑わないでほしい。僕が未悠さんと一緒にいたいからそうしてるだけ」

 何で、そんなことを言っちゃうんだよ、君は。そんなこと言われたら、泣くに泣けない。

「ほら、笑って」

 無理やりにでも、笑顔を作らないとって思わせるなんて。




 ちょっと落ち着いた。生徒会室で遊んでるときみたいに。

 悠杜君が口を開く。

「ねえ、せっかく学校をずる休みしたんだからさ、映画でも見に行かない? 2人きりで」

「え、でも」

「学校さぼるのも、さぼって映画行くのも大差ないって、ほら行こう」

「わ、ちょっと待って!」

 手を引っ張られる。ええ、でも大っぴらにさぼるのはちょっと。そう思ったけど。

 ちょっと楽しいかもしれない。そんな思いもして、引っ張られるままに任せてみよう。そんなことを考えた。

加乃「メリークリスマス!」

作者「メリークリスマス! でも、ここ来て大丈夫だった?」

加乃「大丈夫だって、クリスマスまでには帰ってきてる設定だから」

作者「いやメタ的なこと言わない」

加乃「それより、料理料理。楽しみにしてたんだぞ」

作者「そだねー、カンパーイ!」

加乃「カンパーイ! 久々のアルコール染み渡るわー」※未成年の飲酒はやめましょう

作者「私ももらい。バンクーバーには流石に持ち込めなかったもんね」※未成年の飲酒はやめましょう


なお、この暴走を止める人たちは誰もいない模様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ