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僕の目指していた『日常』から外れている

「それじゃあ第二回の会議を始めます」

「はいはーい。私はタイムリープ物がいいと思いまーす」

 加乃先輩がさっそく発言する。この人はわざわざ空気をぶち壊しに行くなあ。

「でも僕、タイムリープ物の小説ってほとんど理解できないんだよね。なんというか、適当にごまかしてるようなそんな気がしちゃってさ」

「それじゃあ、推理物に一票」

「節操ないな!」

 この人はあとからあとからともかく案を飛ばしていくな。

「でも、アドベンチャーゲームって大体推理だと思いますけど」

 涼乃さんは無自覚に毒を吐くらしい。加乃先輩がカクって力が抜けたように崩れ落ちる。

「ゆーくん、涼ちゃんが酷いんだけど! もう私どうしたらいいか」

「はいはい、嘘泣きは面倒なのでやめてください」

「バレたか」

 いや、バレますから。流石に加乃先輩がそんな簡単に泣くとは思えないし。

「個人的にはヒロインが最後に黒幕でもあった男の子と和解して、恋愛関係になるっていうのがいいな」

「となると、男の子は操られてたって感じですか?」

「そそ。それで、男の子はヒロインの行動を誘導しようとするのね」

 何となく、加乃先輩の話についていける自分が怖い気がする。

「ということは、主人公が女の子で、チュートリアルでその男の子が操作方法を説明するって感じですか。チッ」

 彩里さんが妥当な案を出して舌打ちする。というか、なんで舌打ち?

「あいりんは腐女子だから!?」

「ふじょっ! むぐっ!」

 むががが、加乃先輩息が苦しいです。わかったからその手を下ろしてください。

 はあ、それにしても彩里さんが腐女子だとは思わなかった。あ、でも親衛隊の結構上の方の面々はあれだからなあ。ということは、涼乃さんと凛音さんもおかしいのか? そう思ったら加乃先輩の逆隣の涼乃さんに足を踏まれた。鋭い。

「それで簡単にオムニバス形式にするというのはどうでしょう? 大枠さえ決まれば後は分担作業にできますので」

「はいはーい。大枠やりたいです」

 涼乃さんと加乃先輩が発言する。まあ、加乃先輩は馬鹿だけど天才だし、どうにかしてくれることでしょう。

「それでは、その方針で行くということで」

 というか僕何もしてないんじゃないか?




「あ、そうだ。悠杜君と京香ちゃんの家に寄っていい? 取材したいんだよね」

「まあ、別にいいですけど。前も来てますし」

「2人の愛の巣に」

「誤解を招くような言い方するな!」

 これだから加乃先輩は油断ならないんだ。

「ちょっと悠杜君のお父さんと京香ちゃんのお母さんから話聞くだけだって」

「いや、ダメとは言ってませんが」

 会合が終わり、加乃先輩の家から電車で揺られていく。僕らの家もそう遠くない。


「それじゃあ、僕はフクロウたちの様子見てくるから。先に京香さんと家に行ってて」

「了解」

 2人と別れて未悠さんの家へ。いつものようにインターフォンを押して開けてもらう。合鍵を渡そうかとも言われたけど、そうすると引き返せなくなりそうで嫌だ。


 フクロウたちの様子は問題がなかった。むしろ問題があったのは我が家の方だ。

「そうなの、悠杜君家じゃ学校のことほとんど話さないから、加乃ちゃんが話してくれてうれしい」

「いつもフォローに回るのは大変ですよ」

「勝手に嘘を吹き込まないでもらえますか!」

 加乃先輩が夏乃さんにあることないこといろいろ吹き込んでいた。これだから加乃先輩は油断ならないんだ。

「心外だなー、私はないことしか吹き込んでないよ」

「さらにたちが悪いわ!」

「冗談だって。本当のことしか話してないから」

「だからといって誇張させるような表現をしないでください」

 僕はよく学んだんだ。真実しか話していないからと言って、加乃先輩が悪意なく話しているとは限らないということに。というか面白そうという理由で引っ掻き回すから。

「まあ、面白い人ですね。よかったら夕食も食べていきますか? 今日は夜勤じゃないので」

「ぜひ!」

 頭痛で頭が痛い。


 その後、なぜか我が家に泊まっていくことになって頭を抱えた。




「おはよー、悠杜君」

「げっ!?」

「今あからさまにいやそうな反応したよね」

「そんなことよりどうして先輩がここに……」

 そうでした。昨日お父さんと夏乃さんに乗せられて家に泊まっていったんだった。

「というか、いつもより元気ないですけど」

「徹夜でシナリオ考えてたからさ。ちょっと授業中に寝る」

「というか寝てくださいよ」

 ちらっと見たメモは全然出来上がらずにぐしゃぐしゃになっていた。加乃先輩って結構字がきれいな印象会ったのに、すごく雑に書かれている。

「まだ出来上がってないから。これは私がやらないといけないことだし」

「僕も協力するから寝てください」

「アハハハ」

 加乃先輩は笑っていたけど、人間である限り寝た方がいいと思う。自分が人間じゃないと主張するなら別だけど。でも。




「加乃先輩いますか?」

 昼休み、一緒にお弁当を食べようと加乃先輩を誘う。いつもなら授業が終わったら教室の前で僕たちを待っててくれるんだけど。

「加乃―呼ばれてるよ」

 別の先輩に呼ばれても反応しない。加乃先輩は一心不乱にメモ帳に向かって何かを書き足している。

「加乃先輩!」

「うわ! びっくりした。悠杜君じゃん、どうしたの?」

 そうやって一心不乱になっている加乃先輩は加乃先輩でいて加乃先輩じゃなくて。

「もう、やめませんか。別に、そこまで頑張らなくても」

「え、あ、そう見えた? それより食堂行こうか」

「はい」

 何となく、コレジャナイ感が募っていく気がして。




「悠杜君、ちょっと寄り道していかない?」

「ごめんなさい、用事あるので帰ります」

 放課後の未悠さんの誘いも断って。

 だけど、どんどん僕の目指していた『日常』から外れている気がして。




 だから、だろうか。

「すいません、この計画、やめませんか?」


 気づいたら、会合でそんなことを口走っていた。

加乃「マジで大変だ」

作者「生みの苦しみってやつだね。まあ、わかるよ」

加乃「楽しいんだけどね」

作者「うん、小説は頭の中で組み立てているときが一番楽しい」

加乃「こんな文章ゴミだよ、ゴミ」


作者「いや、いきなり全否定されてもそれはそれで困る」


※書くのも楽しいです。

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