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寂しそうに見えた

 何かアプリ、恐らくゲームを作るということは決定したのだけれど、案が全くありません。だって僕小説も漫画も描いたことないし。夏休みの読書感想文でヒーヒーいってるんですよ? 無理です。

「よし、アルテミスもアポロンも元気そうだね。問題ないよ」

「よかった。帰ったら遊ぼうね」

 今は、未悠さんとフクロウたちの様子を見ている。まあ、じっとしててもいい考えが浮かぶとは思えないしね。それに、未悠さんもちょっと楽しそうだ。

「それじゃあ、行ってきます」

「お邪魔しました」

 朝の日課を終えて、京香さんと3人、駅までの道を歩く。と言ってもそこまで大して時間もかからないんだけど。

「今日の放課後、また会合です」

「わかった。開けとく」

 京香さんとこそこそ話をしながら。今日は未悠さんの調子がいいみたいだ。何かあったのかもしれない。最近どこか暗い感じがしてたから僕もうれしい。

「やっほー、ゆーくんみーちゃん京香ちゃん」

 電車で加乃先輩と同じになる。この人はいつも変わらずハイテンションだね。その能天気さを少し分けて欲しいなんて思ってみる。

「なんか失礼なこと考えてそうだけどまあいいや。それより未悠ちゃん。未悠ちゃんの好きなミステリーの新刊が発売だってさ。11月の末だからあと1月ちょっとだよ」

「そうなんですか! それは楽しみです」

「そう言えば、大分読書からご無沙汰してるな」

 中学の頃は、暇なときに結構本を読んでた。乱読派だし、途中で投げ出したのも多かったけど。それに、あくまでも1人でいるときの時間つぶしだし。

「よかったら、本貸そうか? お父さんが結構持ってるから」

「いや、別にいいです。最近あんまり時間が取れないんで」

「あー、確かに。高校の生徒会って実は結構忙しいよね」

 というか、未悠さんのお父さん読書家だったんだ。知らなかった。まあ僕は読書家って名乗ったら本物に怒られそうなレベルなので名乗りませんが。

「そうだ、悠杜君これ貸すね。なんとフクロウが登場するんだよ。結構面白かったし」

「あ、ありがとうございます」

 加乃先輩から本を受け取る。それはいいんだけど、読んでいる時間があるかどうか。

「ほら、駅着いたよ」

 電車の中で読もうにも未悠さんたちがいるし、2駅だけだからあんまり時間取れないし。

「それじゃあ、私は先行ってるね」

 どうやら加乃先輩は渡すだけだったらしい。小走りで学校へ向かって行った。あの人普段何やってるか謎だからな。




「それじゃあ、占いやるけど何を占えばいいかな?」

「それじゃあ、体育祭で勝てるかどうか!」

「そういう直接的なのはあんまり得意じゃないんだけど、まあいっか」

 楽しそうに笑う顔がすごく素敵だから、何となくそのままで構わないと思ってしまう。

 フクロウのタロットカードを切って並べる。さて、何が出るだろう。

「これは、『節制』の正位置ですか。一応いい運勢ですね」

「てことは、優勝かな?」

「うーん、そこまでの意味はないんですよね。調和とかそんな意味なので。でも、いい成績なのは間違いないと思いますよ」

 それから、タロットに描かれた2つの瓶を男性と女性に例えることもある。対立している2つの要素の調和の意味も。フクロウタロットには描かれてないけど。だとするならば、きっとそのころには二条の件も決着がつくはずだ。

「まあ、きっと僕たちなら勝てますよ。確か、加乃先輩も同じ赤組なんでしょ? 余裕ですって」

 気休め程度かもしれないけど、その笑顔を守りたいと思ったんだ。




「はい、兄さんお弁当です」

「ああ、ありがとう」

 食堂のいつもの席。そう言えば、未悠さんと初めて話したのはここだったかもしれない。ちなみに僕たちの机は近寄りがたいのか、普段は僕たち3人と加乃さんといういつものメンバーしか使わないみたいだ。

「相変わらずのシスコンだね」

「ち、ちがわい!」

 そんなわけないよね? 前従姉に惚れてたのもシスコンでは、ない、はず。うん、オッケー。

 ちなみに加乃さんは唐揚げラーメン定食を学食で頼んでいた。そう言えば加乃先輩の料理する姿を見たことがない気がする。

 そんなことを考えていたら。

「よう、邪魔するぜ」

「邪魔だと思っているのなら帰ってください」

 二条襲来。京香さんにも比較的温厚だと思われる加乃先輩にも嫌われてるのによく来るものだと思う。

「別にいいだろ。婚約者なんだし」

「違います。金輪際その予定はありません」

「いいじゃん、すぐそうなるんだから」

「空気読めてないよね」

 さりげなく僕の隣に移動してきた加乃先輩がボソッと一言。まあ確かにKYだよねとは思う。だって、微笑んでるけど未悠さんあんまり楽しくなさそうだもん。

「どうするんですか?」

「そうだね、私らにしかできない話をして追い出す」

 加乃先輩とこそこそ話をする。なんだかんだ言って加乃先輩は優秀だし。

「ところで、ボルテックスジェネレータって知ってる?」

「知ってる知ってる! あれはめっちゃかっこいいよね。フクロウはキュートだけどああいうかっこいい所もあるし」

 未悠さんが食いついた。二条は唖然とした顔をしている。

 ちなみにボルテックスジェネレータというのは意図的に乱気流を発生させて空気抵抗を安定させる機構だ。フクロウの羽の先もそうなっている。

「それから、あの手触りがいいんだよね」

「メンフクロウとかほんとに抱き心地がいいよね」

「そう、あとそれなんだけど、フクロウ世界のファンタジー小説があるんだって。知ってた?」

「え、嘘? それは読みたいかも」

 未悠さんが食いつく。確かに、そんなものがあれば絶対食いつくよな。千秋さんが持ってそうだけど。

「メンフクロウってあれだろ、あの、変なフクロウ」

「変じゃない!」

 そして二条は地雷を踏みに来た。知りもしないのに語っちゃダメだと思う。

「それにメンフクロウの他にもニセメンフクロウってのもいるんだから! すっごくかわいいんだよ! 変わった顔だけどそこに愛嬌があるんじゃない。それから、フクロウ科とメンフクロウ科って別れてるからね」

 マシンガントーク。だけどこれでも控えてる方だ。千秋さんとそれ以上に高度な話をしてるし。ちなみに僕はギリギリついていけるくらいです。

「フクロウ目って科は2つしかないんだよ。あと3つは絶滅しちゃったし」

「オジゴプチンにも会ってみたかった! 画像もあればいいんだけど」

 あ、二条完全に黙った。まあ、そりゃ無理だよね。僕たち以外でついていける人いたら尊敬する。

「加乃先輩、どうします?」

「まあ、もうちょいやっちゃえ」

 悪びれることなく死体蹴りを敢行する加乃先輩。ああ、調子に乗らせてしまった。




 そして放課後がやってくる。今日は体育委員会との会合があった。と言ってももう大詰めで、準備をどこがやるかの割り振りくらいだったけれど。生徒会は実はあんまり仕事ない。あ、それは文化祭に比べてという意味ね。

「悠杜君、6月に古書店言ったでしょ。あそこもう一回行こうかなって思うんだけど、悠杜君も一緒にどう?」

 解散になったタイミングで未悠さんが声をかけてくる。別の学年の体育委員らしき人の視線がちょっと痛いけど、まあ無視できるか。

「ごめんなさい、今日はちょっと用事入ってて」

「そっか、なら仕方ないや。ごめんね」

「いえ、いいです」

 未悠さんは口ではそう言って笑っていた。だけど、一瞬見えた顔はとても昏く、寂しそうに見えた。

加乃「作者が別の小説に現を抜かしているらしい」

未悠「そんな、いつになったら悠杜君は告白してくれるのさ!」

作者「ごめんなさい、わからないや」

加乃「そんな、この章のサブタイあれだよ?」

作者「気づいても告白するとは言ってない」


悠杜「(どうして殴られたんだ……)」


更新頻度下がりそうです

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