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加乃先輩にシリアスな空気は似合わない

「聞いた、悠杜君? 当て馬君も騎馬戦だって。やっつけちゃってね」

「簡単に言わないでくださいよ」

 偶然にも加乃先輩と同じ電車に乗り合わせた。まあ、加乃先輩のことだから狙っていたという可能性も大いにありそうだけど。

「いやあ、2人の男が未悠ちゃんを取り合って騎馬戦で勝負か。見ごたえあるね」

「そんなことしませんから!」

 というか、この人は一体どこからそういう情報を仕入れてるんだろうね。京香さんよりも情報網が広い。

「え、クラスメイトに取材したり盗み聞きしたりハッキングしたり。あとは、盗聴器もあるよ」

「とりあえず、犯罪行為はやめてください」

 さりげなくサイコメトリーするのはいつものことだからいいとしても犯罪行為はいろいろと問題があると思う。いや、心を読むのだっておかしいんだけどさ。加乃先輩だと何でもありだと思ってしまうし。なんて言ったってバカノ先輩だから。

「でも、悠杜君、気をつけた方がいいよ? あの子、結構やる気だから」

「と言われても、どうすればいいやら」

「んー、とりあえずスリ師捕まえたから、説明頼むね」

 この人はさりげなく会話しながらなんてことをしてるんだろう。これ、僕の財布だし。

「未悠ちゃんと京香ちゃんは先行ってていいよ。悠杜君は私が責任もって送り届けるからさ」

「わかりました」

「悠杜君、気をつけてね」

 まあ、スリの被害に遭いかけたと言えば行くしかあるまい。というか駅員室の常連になっている気がする。


「お疲れ様です。いつも通り、これで大丈夫ですよ」

「それじゃあ、失礼します。悠杜君、走るよ」

「えええ!? まだ走らなくても遅刻しないんじゃ!」

 時間はまだあるよね!? というか、事情があるから間に合わなくても話せば遅刻扱いされないし、1限目にも余裕で間に合うと思うんだけど!

「いいから走る。ほら、早く」

「僕先輩ほど体力ないですって!」

 どっちかと言えばインドア派なんだよ。というか、半年近く一緒にいるんだからそれくらい分かっているだろうに!

「体力つけないといけないんだし、それに、ちょっと聞いておきたいことがあるの。だから早く」

 まだ少しのんびりしている生徒たちの横を駆け抜けていく生徒会会計と庶務。どんな奇異な視線で見られているのか。

「部活動対抗リレーは優勝するからね!」

 いや、そんなふうに言われても困りますけど。あ、でも無駄に高スペックな人たちがそろってるから僕がそこそこスピードを出せば対戦次第では勝てるかもなーなんて現実逃避をしてみる。

 でも、息は正直苦しいです。

「って、どこ行くんですか!」

「裏門から入ろうと思ってね。ちょっと偵察」

 ……手首をつかまれたので振り払うこともできない。というか、加乃先輩からは逃げられない気がするんだよね。なんかすべて手の中というか。


「こっちこっち」

「さりげなくはしごを登ろうとしないでください!」

 行くけどさ。別に高所恐怖症じゃないから行くけど。これ絶対バカノ先輩が設置したものだと思う。

「いたよ」

 上って端までたどり着いたところで加乃先輩が立ち止まる。ちょうど校舎からは見えないところ。加乃先輩の視線をたどってみると二条がそこにいた。

「……そういうわけだから、頼むぞ」

「わかってます。ただ、あまりうまくいくとは思えないのですが」

「いいからいけ。出来るだけ嫌味っぽくな」

 どう見ても密談としか思えないような会話を取り巻きの生徒と話している。加乃先輩が何か知らないがメモを取っていた。

「話には聞いてたけど、やっぱり悠杜君の悪いうわさを流そうとしてるみたいだね。まあ、そんな程度で揺らぐとは思えないけど。まあ、ある程度の罰は受けてもらいましょうか」

 軽い調子で加乃先輩が言う。だけど、昨日の千秋さんと同じで、どこか冷たい気がした。

「あーあ、失敗したかな。あんな性格だとは思わなかったよ」

「加乃先輩、二条のこと嫌いなんですか?」

 ふと思って聞く。もう、二条たちはいなくなっていくところだった。

「嫌い。ああやって、人を貶める人はあんまり好きじゃないんだ。まあ、私たちのせいだから責任は持つけどね。私はからかうのは好きだけど、ああやって陰からこそこそ人の悪口を言うのは大嫌いなんだ。だから、正面から叩き潰すよ」

 ピリッとした空気が流れる。いつもとは違う空気が流れて、何となく嫌な感覚がした。

「まあ、すべて僕に任せてくれたまえ、ワトソン君」

「いつからホームズになったんだ!」

 からからと笑った。よかった、気のせいみたい。加乃先輩にシリアスな空気は似合わないもんね。

「あ、そうそう、次の祝日開けといてね。京香ちゃんたちと出かけるから。よっと」

 そう言ってパッと飛び降りる。

「ほら、授業始まっちゃうよ」

「って、この高さ無理なんですけど!」

 ほぼ3メートルあるのを飛び降りろと!? というか、何を考えてるんですか! 相変わらずこの人は無茶苦茶だ。

「それじゃあまたあとで―」

 そう言って加乃先輩は去っていった。ヤバイ、遅刻する。校門はクリアしたけど、教室にも時間制限があるんだよ。

 急いで、玄関で靴を履き替えた時、無情にもベルはなった。


 とりあえず、今日の放課後と祝日の時間を空けとこう。

作者「ちなみにだけど、加乃ちゃんはこそこそするのが嫌いな理由とかあるの」

加乃「聞きたい? 仕方ないなあ。作中屈指のシリアスキャラだもんね」

作者「いや全然」

加乃「実はね、あれは私が幼稚園にいたころの話なんだけど、陰湿な嫌がらせを受けたの」

作者「というのは建前で」

加乃「ある虫を想像するからです!」


悠杜「作中屈指のギャグキャラだと思う」

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