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樟葉加乃 悠杜君が少したくましくなっている

 なんてね、こんな面白そうなこと見逃すわけないじゃん。陰謀と修羅場は大好物です。悠杜君の視界から消えたのを確認して尾行を再開する。この学校は窓の外にパイプが走ってないから大変だな。でももうそろそろ掃除時間終わるから、放課後まで動きはなさそう。流石に授業は欠席できないからね。出席日数は計算してみたところかなりやばい予定なのです。


 そんなわけで、放課後。今度はいつものように4人で帰る。つまり、未悠ちゃん、悠杜君、京香ちゃんと私だ。なんだかんだ言って、生徒会だし、進行方向同じだしで仲がいい。あ、生徒会と言えば、ちょちょいと書類を書き換えて京香ちゃんを正式メンバーにしておきました。

「あの、後でシャルロットに来てくれないかな。相談があるんだ」

「わかりました、お姉さまを送ったら」

 小声で会話する二人。聞いてないふり聞いてないふり。流石にここで水を差すほど空気が読めないわけじゃない。だって面白そうだから。

 それにしても、2人は一つ屋根の下で暮らしているのに、シャルロットでとはどういうことだろうね。悠杜君の部屋でまったりねっとりとかでもいいのに。ひょっとして、私を罠にはめようとしているとか? んなわけないか、京香ちゃんならまだしも、悠杜君だし。

「そう言えばさ、今度駅前に本屋ができるんだって。未悠ちゃんも悠杜君も本好きでしょ?」

「そうですね、昔は暇だったのでそこそこ読んでましたよ」

「僕は暇があるときにしか読んでないなあ。今も未悠さんから借りたままだし」

「よし、じゃあオープンしたらそこ行こう。おすすめの本紹介してあげる」

 そしてあわよくば悠杜君を、いやなんでもない。

「加乃先輩って何読むんですか。ラノベとか?」

「ラノベも読むけど、ガイドブックとかよく読むよ」

 そう、そして大人の世界へ誘い込むのだ。未悠ちゃんは何か悟ったみたい。

「カフェ巡りとかいいですね。加乃さんもそれを?」

「カフェも好きだけど、よく買うのはバーの雑誌、いてっ!」

 痛いじゃないか悠杜君。これでも1年先輩なんだよ?

「というか、未成年の飲酒はいけないことだと思います」

「実は私国籍アメリカなんだよね。だから大丈夫」

「アメリカは基本21歳って言ったのはあなたですよ」

 そんなこと言ったか。でも忘れちゃった。

 馬鹿なことをするな、と言われたら多分辞められる。だけど、そうしてない私はそうじゃない気がする。というわけで、今日もボケをかます。悠杜君のツッコミに慣れちゃったしね。

「そう言えば、このフラペチーノ美味しいよ。今日からなんだけどね」

「どっから取り出したそれ!」

 答えは簡単、ついさっきそこで買ってきた。隠密には慣れているのですよふっふっふ。

「あ、加乃さん、一口もらってもいいですか?」

「いいよ。京香ちゃんも悠杜君もどう?」

 そう言って器を回す。そして悠杜君に回って来たときに爆弾発言を放り投げた。

「間接キスになるけど」

「ゴホッゲホッ!」

 うわーストローの中に咳が入っちゃった。仕方ない、直接口付けるか。というか、考えとけよ私。

「私、初めてなんだ、優しくしてね?」

「人がたくさんいるところで誤解するようなことを言うな!」

 ごめんごめん、でも、楽しかったんだもん。

「ほらほら、電車来たよ。乗らないと」

 ちょっと照れ隠しにみんなを電車に押し込む。誰にも気づかれてないだろうけど。


「それじゃあまたねー」

 3人が電車を降りていく。私はドアが開くのを見送る……、と見せかけて閉まる寸前に降りた。ちなみに3人に姿は見られてない。

 だってだって、こんな面白そうな話があるのにシャルロットに行かないなんて選択肢はないじゃん!

 というわけで、先回りして中に身を潜めていることにする。すべての黒幕の千秋さんとは一応同盟関係を結んでるしね。

「ヤッホー、遊びに来たよ。はいこれお金ね」

「いらっしゃい。で、何の用事かな?」

「この後ここで密会が行われるからその偵察。というわけでちょっと中に入るね」

 バックヤードに潜ませてもらうことにした。




「それで、こんなところで何の用ですか? 家ではできない相談というのはわかりましたが」

 十数分後、2人がやってくる。わくわくわくわく。

「その、さ。未悠さんが浮かない顔をしてるのは確かだし、僕も未悠さんには笑っててほしいんだ。それに、あんまり二条君は好みじゃないしさ。だから、その、僕もできる範囲で力になるよ」

 無意識にヘタレましたね。出来る範囲でとか、自分じゃなく未悠ちゃんを理由にしているところとか。

「わかりました、では早速起業の手続きを」

「その話なんだけど、別の手は打てないのかな。例えば、言い方は悪いけど二条君を妨害するとか」

「二条利頼は暴走特急です。そう簡単には止まるとも思えません」

 あーあ、そして逃げちゃった。まあでも、京香ちゃんも暴走して周りが見えてないんだけどな。

「でも、試してみる価値はあると思うんだ! それに、企業はあんまりしたくないし」

「はあ、まあわかりました。ですが、時間はあまり多いとは言えません。二条利頼を止めるのと並行してそちらの準備も進めておく必要があります」

 うずうずうずうず。

「出来ることなら、そうしたくはない。でも、仕方ないと思う」

 おお、悠杜君が少したくましくなっている。私の予想ではもうちょっとヘタレると思ってたのに。

「それでなんだけど、何かいい案ないかな?」

 ちなみに、親衛隊と十条さんで協定を結んでいる。未悠ちゃんが悠杜君が好きだと伝えてはならない、悠杜君の好意が恋愛感情だと直接伝えない、この2点だ。未悠ちゃんのためという理由をつけて、私が設定した。面白そうだから。破りかけたこともあるけど。

 でも、そのせいで京香ちゃんは手札が一枚切れない。それは悔しいんだろう。ちなみにそれ以外の人ならありだ。

「そうですね、イギリス人気質で賭け事が好きだということがありますが……」

「その場合、未悠ちゃんをチップにする必要があるね!」

 そしてここで私登場! いや、我慢できなかったんだよね。

「バカノ先輩!?」

「おいこら。それはともかく、未悠ちゃんを本人の意思を無視して差し出すのは、最終手段までしないとだめだと思うよ」

「でしょうね、私もあまりその策は取りたくありません」

 まあ、成功すれば最高に萌える展開なんだけど、ここは現実。私はギャンブラーだけど生活費まで賭ける気はない。

「というわけで、そんな2人に朗報です。下調べの結果、とある組織と二条家のつながりを見つけたよ。これを潰せば少しは力がそげるかもね」

 そう言ってクリアファイルを掲げて見せた。悠杜君の驚いた顔、やっぱりやめられない。

加乃「というわけで、次回、壊滅裏組織! お楽しみに」

作者「ちょっと待ったー! 話題は他にもあるから! 勝手に決めるな」

加乃「えーだって、次回は主人公の私が登場しないじゃん」

悠杜「一応主人公は僕なんですけど……」


作者「モブ予定だったキャラが主人公を乗っ取ろうとしてる件」

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