デジャヴュが半端ない……
その後、京香さんの呼んだタクシーで家に帰った……らしい。
頭が熱くて、よく覚えてないんだ。
というわけで、昨日から僕は寝込んでいる。まあちょっとは動けるので、リビングで親が借りてきた映画を見ているのだが。
とにかく暇だ。
山下さんから今日はともかく学校を休みなさいとお達しを受けた。僕は動けるって言ったんだけども、無理やりにでも休ませると言われたので、流石に休んだ。睡眠薬を飲ませられるかもしれないし。
しかし、暇である。さっきまで、海外のラブロマンスを英語の勉強を兼ねて字幕で見ていたが、さっぱり頭に入ってこないし。やっぱり、疲れているのだろうか。
「疲れたなあ」
声にすると、余計疲れた気がする。シャワー浴びて、自室で寝よう。体を休めるのも大事だという話だし。あ、でも時間があるから晩御飯は凝ったもの作れるかな。炊飯器を低温調理器の代わりにしてもいいし、ロールキャベツとかもいいかもしれない。ラタトゥイユもいいな。起きたら考えよう。
そんなことを考えていた。
「おーい。起きろー」
声が聞こえる。目の前に加乃先輩がいた。
「うん、夢だ」
夢の中で夢を見るってそこまで珍しいことじゃないし、まあ、こういう時はおとなしく寝るに限る。
「起きろって言ってるでしょ!」
「ガハッ」
殴られた。手加減したのはわかってるけど……、それでも痛いよ。
「病人に何するんですか」
「いや、つい」
ついで人を殴っちゃダメだと思います。
「というか、なんで入って来たんですか」
「お見舞いに来たの。未悠ちゃんも一緒だよ」
「どうやって入って来たんですか」
「京香ちゃんに開けてもらった」
……なんだろう、この感覚。デジャヴュが半端ない……。
「はい、飲み物。熱中症には気をつけてね」
「あ、ありがとうございます」
未悠さんからスポーツドリンクを渡される。結構汗もかいてるし、服が重い。蒸れてる感覚がある。寝る前に着替えたのにな。
「アイスも買ってきたんだけど、食べる」
「あ、食べます。でもその前にシャワー浴びてきていいですか?」
コンビニの袋からアイスを取り出す。冷凍庫に入れておいてもらおう。それと、この格好はちょっと気持ち悪い。
「うん、汗流しておいで」
「体フラフラだろうし、お姉さんが洗ってあげる」
「それは断固拒否します」
加乃先輩、割とシャレにならないことを言わないでください。というか、僕が恥ずかしさで悶死する。なので、ベッドから這い出して早くバスルームに行こう。一瞬めまいがしたけど、特に問題はなさそうだ。
「……あの、下着出したいので、ちょっとリビングにでもいてもらえませんか」
「あ、ごめんね」
どうして、忘れてたんだろう。
シャワーで汗を流して大分さっぱりした。未悠さんがアイスを買ってきてくれたらしいし、後でもらおう。
あ、でも、2人が家に来たってことは、結構いい時間だから、そこまでこったものは作れないか。ちょっと残念だ。
リビングで2人は映画を見ていた。京香さんも一緒に。これは、恋愛ものかな?
「あ、ゆーくん、映画見ようぜー」
加乃先輩が手招きする。まあ、ずっと自室にいるのも暇だし、いいだろう。そう思って、冷蔵庫からプラスチック容器に入った麦茶を取り出した。
「ギャァァァァ!」
……ホラー映画だった。
心臓止まるかと思った。というか、2拍止まった。病人にホラー映画見せるやつがあるか! これ絶対バカノ先輩のチョイスだろ!
「ちょっと、なんてもの見てるんですか、びっくりしましたよ!」
「あれ、悠杜君ホラー苦手だった?」
「苦手じゃないですけど、いきなり見せないでくださいよ!」
お茶取り落としたじゃないか。蓋しまってたのはよかったけど。
「ふーん、そうなんだ」
に、苦手で悪いか! ちょっと、怖いのはあんまりおもしろいと思えないし、好きでもないから積極的に見ようとは思わないんだよ! はあはあ。
「ほら、こっちの方がいいって言ったじゃん」
未悠さんがもう一つのDVDを見せる。少し前に流行った海外のSFだ。
「それにしましょう」
「ちぇっ」
ポチッ
「だから、怖いシーンを映さないで!」
「はい、アイス。バニラとチョコとイチゴとわらび餅、どれがいい?」
加乃先輩がビデオの支度をしてくれている間に、未悠さんがアイスを取り出してくれる。
わらび餅は変わり種だ。ちょっと、興味はある。でも、ここはやっぱり妥当にバニラかなあ。
「それじゃあ」
「バニラで!」
加乃先輩!?
「なんであなたが一番最初に選ぶんですか!」
普通、こういうのは僕が選ぶものじゃないの。まあ、無理に選ばせろとまではいわないけど。
「でも、バニラって本当は苦いんだよ? それに、ただの香り付けだし」
「正当化しようとする往生際の悪さはどうかと思う」
バカノ先輩はぶれない。
「で、どうする。バニラがいいの?」
「いや、チョコでいいですよ」
別に、どうしてもバニラが食べたかったわけじゃないし。
って、加乃先輩はイチゴにするのかい。バニラは結局未悠さんの手に渡った。
「あー、おいしい」
この冷たさが発熱した頭を冷やしてくれそうだ。アイスクリームってやっぱりいいよね。
「悠杜君、バニラも食べる?」
「え、でも僕病人だから風邪移すわけにも」
「それならここに」
京香さんが無音で小皿とスプーンを持ってくる。ちょっとびっくりした。
「あ、それじゃあ、ちょっともらおうかな」
「はい、どうぞ」
ちょっと、アーンまではしなくていいから!
「ちなみに、バニラの花言葉は永久不滅です」
「コホッ、ケホッ」
未悠さんがむせた。あーあ、床に落ちちゃった。あとで拭いておかないと。
って、そういうことかよ、ちょっと恥ずかしすぎるんですけど!
「も、もらうね」
小皿を奪って自分でいただく。これで、問題ない、はず。
「う、うん、その、なんかごめんね」
「い、いや、別に、特に問題ないし」
とりあえず、赤くなった顔をそむける。おいこら、バカノ先輩、写真を撮ろうとするな!
「そ、そう言えばこの映画なかなか面白いよね」
「そうですね」
さっきまで、誰も見てなかったのにね。
加乃「ところで、作者はホラーとか好きなタイプ?」
作者「も、モチのロンだよ」(あんまり見ないのは秘密にしておこう)
加乃「それじゃあ、今度、私が見たやつで一番怖かったのもってくるね」
作者「え、いや、あの、別に、しなくていいから。あ、ちょっと、やめtくぁwせdrftgyふじこlp」
悠杜「因果応報」




