僕はどうして忘れていたんだろう……
早起き自体は、そこまで苦にしているわけじゃない。それが毎日ともなると嫌だなーと思うのだけれども。ただ、精神的に疲れる。結局、昨日はほとんど回れなかった。朝休み中にどれだけ確認取れることやら。
「おはよう」
「おはようございます、兄さん」
それと、山科さんは早起きして弁当を作ってくれている。前からそうだったらしく、2人前も4人前も大して変わらないのだそうな。今度代わりに作ろう。
「そんなに早く起きなくてもいいのに」
「いえ、お姉さまとの貴重な時間を味わうためです。準備は怠りません」
……慣れ過ぎている自分が怖いです。
お弁当に入りきらなかった分と、それから軽く一品を作って食卓に並べる。流石に軽く一品くらいは僕の仕事だ。すると、お父さんと夏……、母さんがやってくる。呼び方なれないな。
「それじゃあ、行ってくるから。悠杜と京香さんも気をつけてな」
父さんの次に家を出るのは僕らだ。ちなみに夏乃さんは時間が不安定な仕事らしく、場合によって違う。今日みたいに、一番家を出るのが遅いときもあれば、朝起きたら既にいない時もある。
「おはよう。今日は早いね」
「生徒会で、いろいろとやることがあるからね」
いつもよりも眠そうな未悠さんと合流する。そんなに頑張らなくてもいいのに。
「それじゃあ、行きますか」
「よろしくね、悠杜君」
いつものように電車に乗って、そして生徒会の仕事をこなして。憂鬱になる。考えるだけで疲れる。まあでも、今はちょっと楽しもう。そんなことを考えていた。
……そして忘れていた。
「そう言えば、最近タロット占いしてもらってないような」
「確かに。朝のHR終わったら久しぶりにやろうか?」
「お願い、恋愛運占って!」
「恋愛運は、苦手なんだけどなあ」
どちらかというと、千秋さんの方が向いていると思う。
「いっそのこと、あの加乃先輩にさせてみるとか。その方がいい結果になったりするかもしれませんや?」
「それは、たぶん無理だよ。加乃ちゃんって、自分の興味ないことにはとことん興味ないから」
「そうなんですね。てっきり全方向にアンテナ張ってるもんだとばっかり」
ただ、楽しくないということはない。むしろ顔がほころぶくらいだ。
「そんなことしたら疲れるって」
「先輩らしいですね」
だから、少し油断していた。
「っ! 痴漢!」
「捕まえてください!」
京香さんを狙った不埒な輩を捕まえる。人込みの中だ、逃げられない。
「サイテー、サイテーですこいつ!」
京香さんがボカスカ痴漢男を殴る。ちょっとちょっと、流石に過剰防衛だって。
「ちょっと京香落ち着いて!」
「離してください! 油断してたところを襲ってくるなんて許せません!」
「こいつ警察に突き出すだけにしとこ、ね!?」
僕も頑張って取り押さえる。すぐに駅に着いたのは幸いだった。
「はい、ちょっと通してください! こいつ連れていくんで」
「私も付き合うよ」
親切そうなサラリーマンに捕まえられた痴漢男を連れてプラットフォームを降りる。久しぶりだけど、まあ初めてじゃないから、それに京香さんもいることだし大丈夫だろう。そう思っていた。
「すいません」
「え、何が?」
京香さんに謝られる。え、なんだろう?
「学校に間に合いそうにありません」
「あ」
完璧に忘れていた。僕はどうして忘れていたんだろう……
その後、僕が生徒会で怒られたことは言うまでもない。
作者「作者まで設定忘れてたとか言えない……」
悠杜「おい作者! しっかりしろ!」
作者「私しーらなーい。それじゃーねー」
悠杜「おい、逃げるな!」




