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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
あっちこっち忙しすぎるんだ!
116/181

3位だった……

作者「さあ、ついに結果発表! 果たしてどうなるのか!」

悠杜「いや、サブタイトルでネタバレしてるじゃん」

作者「それはわかっても言わないお約束!」

「それでは、競技時間30分、よーい、スタート!」

 加乃先輩の言葉と共に一斉に調理にかかる。いや、見栄えとかはまったく気にしてはいないが、料理対決は勝ちたい。それくらいは勝っているという自負があるし。

「それでは、出場者たちに順番にインタビューしていきましょう。まずは、伏見京香さん、何を作っているのですか?」

 心の中で舌打ちする。邪魔にしかならない。そりゃ、一緒に料理するのが楽しいなんていう親の気持ちもわからなくはないが、これは明らかに邪魔だろう。そんなことを気にしつつ玉ねぎをみじんにしていく。

「そうですね、手軽に、なおかつ見栄えのするものということで、パエリアを作ろうと思います」

 包丁を扱いながら山下さんの方を見る。ちなみにシャルロットのキッチンは必要以上に大きいので3人同時に料理しても問題ない。しかし、よく話しながら料理の手を緩めないものだ。僕もある程度しかできない。

 しかし、パエリアか。あれは結構手間のかかるものだという自覚がある。ムール貝が安売りしてた時くらいしか作らないな。好きではあるが、父子2人暮らしだと普段は簡単に作れるものが多くなる。どうやって30分に押し込めるんだろう?

「続きまして、家庭科室の……」

「それはもういいから!」

 さて、僕の方も集中しないとな。鍋にサラダ油を引いて玉ねぎをあめ色に炒めるのだ。

 

 

 

 それからおよそ20分後、厨房内にはいい匂いが立ち込めていた。いや、それだけじゃないか、三希さんとかもだいぶお腹すいてそうな感じだし。

 キュールルル

「あ、すまん」

 竹田のお腹が鳴る。

「しかし、腹減ったなあ。いい匂いだし早く食いたい」

「私は、全部はちょっと辛いかもしれませんね」

 三希さんとそんな話をしていた。

 僕の方は、今は大分余裕がある。ちなみに作っているのはオニオンスープ。僕が大好きな料理でもある。ときどき無性に食べたくなるので、レシピもいつの間にか凝ってしまっていたのだ。

 未悠さんも大分余裕がありそうだ。さっきレシピはボルシチだと言っていた。今は付け合わせのサラダを盛りつけている。いつ作ったんだ?

「ここで、再び伏見悠杜さんの方を見てみたいと思います」

 そして加乃先輩がやって来た。僕も会話しながら料理ができるくらいには落ち着いている。

「なんでも、秘密兵器があるそうで?」

「はい、こちら、食パンの端っこの部分を使います」

「食パンの端っこですか? 普通のところじゃだめなんですか?」

「硬さが必要なので」

「なるほど」

 そのため、端のある食パンをわざわざ買ってきた。

 しかし、料理教室みたいに解説しながら作るというのは、なかなか面白いものだと思う。このバカノ先輩のノリが暴走さえしていなければ。

「これに、チーズ。シュレッダーチーズがちょうどいいかと。これをオーブンで焦げ目がつくまで焼きます。これで、チーズを簡単に浮かべることができるんです」

 3斤も買ってくるの大変だったんだ。それと、残りはどうしよう。クルトンである程度は使うとしても。

「なるほど、これがどんな感じで化けるのか、興味深いですね」

 そんなことを話しているうちに終了する。さあ、渾身の自信作が完成したぞ。

 

 

 

「それでは、まず、伏見京香さんのパエリアからどうぞ」

 審査員3人がまず京香さんが作ったパエリアを口に入れる。

 ……冷めちゃうからオニオンスープ温めなおさないと。それと、最後のトッピングはまだしてなくてよかった。ふやけちゃうからね。

「あ、おいしい」

「すごくうまいぞ!」

 三希さんは上品に、竹田はがつがつと、そして千秋さんはかみしめるようにパエリアを食べていた。祈るような目で京香さんも見つめている。やはり、勝ちたいのだろう。

 しかし、僕たちは何をしているのだろう。前回からまったくもって反省していない。1人1人前ずつ作っちゃ、審査員の人が大変すぎる。千秋さんはそこそこ食べてた覚えがあるし、竹田はいいとして、三希さんがかわいそうだ。

「それでは、一斉にフリップをあげてください。オープン!」

 食べ終わったところで加乃先輩が掛け声をかける。それに合わせて点数の書いたフリップボードがあげられた。と言ってもA4のコピー用紙なのだが。ちなみに順に竹田、三希さん、千秋さんだ。

「9点、9点、8点! 合計26点で暫定トップです! どうですか、伏見京香さん?」

「そうですね、最低限の点数は取ったかと。ただ、欲を言えばもう1、2点欲しかったです」

 山科さんがそんなコメントを残す。しかし、26点か。いきなりかなりの高得点が出たぞ。これは、熾烈な争いになりそうだ。

「審査委員長の十条千秋さん、どうしてこの点数を?」

「味だけなら、9点をつけようかとも思ったんですが、パエリアを作る手際が大変かなと。彼女はとても手際が良かったのですが、普通の人がこれを30分で作るとなると少し厳しいので」

「なるほど、カフェメニューの審査会ですからね、これは」

「もっと精進します」

 なんなんだろう、この形容しがたいコメントは。

「それでは続きまして、深草未悠さんの、ボルシチとヴィネグレットのセットです」

「わあ、おいしそう」

 三希さんが声を漏らす。確かに、ビーツの赤が鮮やかだ。

「これの工夫したところは何でしょう」

「はい、これは作り置きができるので、あらかじめ煮込んでおいたスープを持ってきました。そのおかげでお肉が柔らかくできたと思います」

「なるほど、作り置きは反則ではありませんしね」

 初めて聞いた! でも、確かに煮込み料理とかはそうでもしなきゃ辛いか。

「それでは点数発表に参りましょう、ドン!」

 一斉にフリップが開け放たれる。

「10点、8点、9点! 合計27点で山科京香さんをかわしてトップに立ちました! なんということでしょう、わずかに1点の差です! どうですか、未悠さん?」

「そうですね、すごく緊張しました。でも、勝てたのはすごくうれしいです」

「あっと、ここで2人が握手だ! だがまだ勝負は終わっていない! 最後の大本命はどうなるのか!」

 君たちはスポーツ選手か! それから、変なプレッシャーをかけるんじゃない!

「ラストは大本命! 伏見悠杜さんのオニオンスープです」

「かなり、王道なメニューですね」

 千秋さんがそんな台詞を吐く。だが、王道こそが定期的に食べたくなるものなのだ。そう僕は信じる。

「すごくおいしいです。甘さが、口の中に広がるというか」

「伏見がこんなに料理できるとは思わなかったぜ」

 無言で咀嚼する千秋さんが少し気にはなる。

「さあ、泣いても笑っても最後の結果発表です。未悠さんの27点を越えられるのか、果たしてどうなる! 行きましょう、オープン!」

 そしてフリップが一斉に……

「9点、10点! さあ後は、これが9点以上なら優勝だ!」

 千秋さんのフリップだけが遅い。くそう、緊張する。すっごく焦らされる。頼む、9点以上であってくれ! そんなことを祈りながらフリップが開き、それを加乃先輩が……

「6点! え、6点!? あ、まあいいでしょう! 合計25点! というわけで優勝は深草未悠さんの作ったボルシチです! おめでとう!」

「だあぁぁぁ!」

 僕は床に崩れ落ちた。

「えっと、それでは千秋さんにお話を伺いましょう。6点とのことですが、その理由はなんでしょう?」

「実は、味だけなら一番でした。というのも、この中では一番暖かみがあり、工夫も感じられました」

 会話が頭の中を通り過ぎていく。

「では、ずばりお聞きします。敗因は?」

「そうですね、カフェで出すということで、食パンを丸ごと使うと見た目が悪いんです。それが何とかなっていれば優勝でしたね」

「くっそー!」

 盛り付けなんて普段気にしないしおいしければありだと思ってたよ! というか、よりにもよってそこかよ! 一番おいしかったのに盛り付けとかめっちゃ悔しいんですけど!

「元気出して、ほら」

「あっと、優勝した未悠さんが敗退した悠杜君を慰めています。これが、勝負の醍醐味と言ったところでしょう」

「そうですね、ぜひまた、再戦して高めていってほしいと思います」

「では、これにて第1回シャルロット料理コンテストを終了します。お相手は樟葉加乃でした。またね」

 そう言って加乃先輩が締めくくった。木野さんがカメラを下す。

「いやー、お疲れ様。しかし、最後のはまじで手に汗握ったわー。そして期待を裏切らない悠杜君、フフ」

「ほっといてください」

「見事にフラグ回収したからね」

 もう、いやだ。というかだとしたらこの人のせいじゃん。やめよう、不毛な考えは。うう。とりあえず、静かでいよう。

 キュルキュルル

 

 ……お腹が鳴った。

「そう言えば、他の人たちは何も食べてなかったんだっけ。ごちそうするよ? 加乃ちゃんが」

「ええ!? 私ですか?」

「だって、この企画加乃ちゃんの持ち込みだもん」

「それじゃあ、牛フィレ肉のオレンジソースロッシーニ風をお願いします」

「それめっちゃ高いから!」

 だって、だって。

「まあ、次頑張ろうよ、ね」

 未悠さんが僕を軽く抱きしめてくれる。うう、とりあえず、この抱擁が熱すぎるよう。でも、とりあえずは、まあ、いっか。

「ラブラブだね」

「お熱いことで」

「流石お姉さま」

「違うから! これはそんなんじゃないから!」

 やっぱり最後はこうなるのか!

作者「いやー痺れたねえ。最後どうなるかドキドキだったよ」

悠杜「いや、ネタバレ……」

加乃「それじゃあ、これ、よろしくね」

作者「了解! 編集は任せろ!」

悠杜「お前もそっちの人間か……」

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