お前が犯人か!
「夏休みがあけて、今日はテストだ。もちろん準備はしてきたな?」
鳥羽教諭の声に、一斉にブーイングが飛ぶ。テストなんてなくなればいいのに。ついでに宿題もなくしてくれるとなお助かります。
「これは、決定事項だ。それとその前に、みんなに一つ連絡事項がある。ちょっと来い」
鳥羽教諭が指をくいくいっとやる。いや、それじゃあわかりにくいって。山科さんが前に出ていく。
確か、僕は出なくてよかった……、よね?
「親が再婚して、名字が山科から、伏見に変わりました。なので、紛らわしいので京香と呼んでください。私からは以上です」
「そういうわけだ。それじゃ、これで朝のHRは終わる。テストの用意しとけよ」
爆弾投げっぱなしかい!
「おい、伏見、どういうことだよ!?」
早速声をかけてきたのは……、えっと確か竹田だ。いかん、生徒会連中のイメージが強すぎる。
「えっと、うちの父親と、山科さんの母親が再婚して」
「京香です」
「え!?」
話の途中で、山科さんに割り込まれる。
「京香と呼んでください。私はもう山科ではありませんし、あなたの妹なのですから」
「いやいやいや」
よしんば、山科でないから、やめてくれと言われても、戸籍上は義姉ですからね!?
「でも、僕より、年上じゃ」
「京香です」
「はい」
ああ、押し通せる気がしないよ。
「あ、じゃあ、私のことも、未悠って呼んで?」
「え、でも、深草さん」
「京香を名前で呼ぶんだったら、私のことも下の名前で未悠って呼んで欲しいな」
「ついでに、俺も」
……こいつらには勝てる気がしないよ。あ、竹田除く。
「……わかりました」
ふ……、じゃなくて未悠さんと京香さん。それから、バカノ先輩。この3人には逆らわない方が吉。この数か月でそれくらいのことは学んだのだ。
「それじゃあ、呼んでみてよ」
「俺も!」
「えっと……未悠さん。……後竹田」
「ええ!?」
うわ、照れくさ! 顔が赤くなっていくのを感じる。
「さんもいらないのに」
「そ、それより早くテストの準備しないと。ほら、ほら」
強引に会話の内容を打ち切る。だが、テストは感覚では散々な結果だった気がした。これは張り出されないからいいけどさ。
「そう言えば、さ」
「え、何?」
帰ろうとしたところでふ……、じゃなかった未悠さんに話しかけられる。近くには京香さんとた……、じゃなくて……、なんだっけ? まあ、竹田でいいや。その2人も聞き耳を立てていた。
「あ、いや、京香になんだけどさ、一緒の家に住んでるの?」
「ええ、そうです。夫婦が別の家というのも変な話なので」
「っていうことは、悠杜君の面白いもの、何か持ってない?」
「ちょっとちょっと!」
何勝手に人のプライバシー聞いてるんですか! いや、見つけられて困るようなものなどないけど! でも!
「前に、調べたときは特に見当たらなかったんだけど、京香なら見つけられるかなって」
「ちょっと待って! いつ調べたんだ!?」
「前、悠杜君が風邪ひいたでしょ? その時に、お邪魔したじゃん」
「あ」
完璧忘れてた。そう言えば、意識がはっきりとしない中で家にいたんだった。
「だからといって調べないでください!」
「てへ」
くそう、なんかかわいいと思ってしまう。いや、そうじゃなくて。
「伏見なら、前におっきな辞書が出ただろ? それの古いやつのページを切り抜いて小物入れに」
「ちょっとばらさないで!」
江戸川乱歩みたいだとかそんな調子に乗って切り抜いたわけじゃないんだから! というか、そこにはへそくりが隠してあるから……。
「それなら既に調べてあります。物品ならここに」
「ちょっ!?」
なんで!? なんでここにそんなある特定の年齢制限がかけられてそうな物品があるの!? 僕見たことないんだけど!?
「え!? 悠杜君ってこういうのがタイプなんだ」
しかもそれを興味津々で見るな! 頬を赤らめるな!
「あ、それ俺のだ」
「なんでやねん!」
お前が犯人か!
とりあえず頭をひっぱたく。×2。こいつ、何をしやがった!
「あ、いや、便利だなって思ってつい。出来心です。すいません」
よし、とりあえずもう一発だ。
……だんだんこいつら非常識な集団に毒されてる。
「違ったんだ、ごめんね」
「誤解が解けたならいいですけど……」
まったく、竹田のやつなんてことをしてくれやがったんだ。
「あ、それと、京香」
「わかりました。引き続き兄さんが高校生の所持不可な物品あるいはそれに準ずるものを所持していないか調査します」
「そんなものどこにもないからね!?」
あ、あと、べ、別にいざ買おうと思ったらしり込みしちゃってないとか、そういうわけでもないから!
というわけで、あとがきでの呼び名も変更していこうと思います
それと、皆さんは、秘密の物品を隠す時、どこに隠しますか? 私は枕カバーのなk……、おや、誰か来たようだ。




