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再発見

「艦長!!あれが、件の英艦隊では!?」

伊58艦長北村少佐は見張り員の報告で眠気が吹っ飛んだ。

同艦は新しく振り分けられた哨戒区に向かって浮上し移動中であった。

「なに!?どこだ!!」

北村は自ら見張り員の所まで駆け上がると彼の持っていた双眼鏡をひったくる。

「あそこですっ!!600メートルしかありません!!」

見ると確かに600メートル先に小型艦艇の艦影が二隻確認できた。

(駆逐艦か?乙巡か?戦艦が二隻いるはずだ!!)

その時、僅かに二隻の小型艦艇の後ろに巨大な何かの影がチラリと見えた。

(こんなところに島があるわけない!!英艦隊だ ...!!)

「急速潜航!!奴等の後ろに付けぇい!!」

そう命令すると甲板上にいた海兵は一斉にむさ苦しい艦内に駆け足で戻っていた。


シンガポールに回航中のフィリップスは日付の変わった0時半にシンガポールから送られてきた電文を見てもうマレー半島はだめかもしれないと思った。

その内容は要約するとこうである。


日本軍の電撃的進撃によりマレー北部の飛行場は短期間のうちに占領された。

同軍の爆撃機が仏印に展開しており8日にはシンガポールが空爆された。

サイゴン沖には日本海軍の空母が存在すると思われる。

以上の事から我々は空軍能力をシンガポール防衛のため全力投入する。


顔には出さないが彼の心は悔しさでいっぱいであった。

シンゴラに行けなかったからだ。

もし、シンゴラの船団攻撃に成功していたら日本軍を食い止めることができたかもしれない。

そして、一時間後さらに別の電報が送られてくる。

「なに!!クアンタンに日本軍が上陸中だと!!」

その電文を呼んでフィリップスは目を丸くした。

クアンタンとは現在のマレーシアの首都であり、この時代でも重要拠点の一つであった場所である。そこに日本軍が上陸を開始したらしいのだ。

そして、シンガポールはどうやらフィリップスにクアンタンに上陸した日本軍を攻撃しろと要求しているらしい。

実際には電報にそうは書いていなかったがフィリップスはそう判断した。

幸いここからクアンタンはそう遠くはない。

「よし、シンゴラの代わりだ!!針路をクアンタンに変更しろ!!」

フィリップスはPOWの艦長リーチ大佐にそう命令し1時45分に艦隊を180度変針。

艦隊をクアンタンに差し向けた。


「間違いない、英国東洋艦隊だ!!デカイのが二隻いるぞ!!」

急速潜航した伊58は潜航後、改めて敵艦隊を確認した。

「敵英艦隊!!戦艦二、駆逐艦ないし乙巡三!!」

伊58艦内はこれまでにない興奮で満ちている。

潜望鏡を覗く乗組員は艦内の暑さを忘れて敵艦隊に夢中になっていた。

そして、電信員が電文を打とうとしたその時、

「敵艦隊180度変針!!敵一番艦が横腹を見せました!!」

クアンタンに向かうためにフィリップスが指示した反転である。

「よしっ!!魚雷発射用意!!」

北村はとっさに指示を出した。

Z艦隊が回航したことにより、伊58は絶好の魚雷発射射線を手に入れたのである。

伊58は6門の53㎝魚雷の発射管を備えている。

上手くいけばイギリスの最新戦艦を屠れる。

「全門だ!!全門発射しろっ!!」

魚雷管が開かれ海水が注水される。

水雷員が狙いを定めた。

「射てっ!!」

六本の53㎝魚雷が時間差をつけて発射され...


ることがなかった。

「艦長っ!!発射管に異状!!三番管の魚雷が発射できません!!」

水雷員が慌てた様子で叫んだ。

「なにっ!!原因は!?」

北村が怒鳴る

「解りません!!」

若い水雷員が怒鳴り返す。

「仕方ない、三番管以外の魚雷で片付けろっ!!」

しかし、このやり取りで伊58はPOWへの斉射タイミングを逃してしまう。

「艦長!!一番艦が射線から外れましたっ!!」

「狙いを二番艦に変更だっ!!」

北村は目標をレパルスに変更するよう命令した。

「了解!!」

すぐに目標を変更し照準を定める。

「射てぇー!!」

五本の53㎝魚雷が雷跡を残しながら真っすぐにレパルスに向かい伸びていく

艦内が沈黙に包まれる。

誰もが魚雷が進むのを固唾をのんで見守った。

しばらくしてから「そろそろ時間だぞ。」と真夏のような暑さの艦内で誰かが言った。

しかし、いつまでたってもレパルスが爆発することはなかった。

「どうやら外れたようだなぁ」

北村は独り言のようにつぶやく

その言葉と同時に蒸し暑いはずの艦内が急に冷たくなった気がした。

「しょうがない、電文を打った後接敵を続ける。」

見るからに残念そうな顔をする北村に誰も声をかけることができなかった。

こうして電文が打たれた。

「我、地点フモロ四五ニテレパルスニ対シ魚雷ヲ斉射スルモ命中セズ敵進一八○度 敵速 22 ノット

伊58唯一の幸運はZ艦隊に発見されなかったことであろう。

この時、Z艦隊の中に誰一人として伊58の魚雷発射に気付く者はいなかったのだ。

そして、この後伊58は以下の電文を放つ

「敵ハ黒煙ヲ吐キツツ二四○度ノ方向ヘ逃亡 我コレニセッショク中 ○四ニ五」

この約二時間後の六時十五分まで伊58は接敵を続けた。

伊58の報告により英艦隊がシンガポールに帰投中であることを知った南方部隊の近藤中将は航空部隊、潜水艦隊に追撃を命じるが、水上艦隊には追撃をやめるよう命令した。

彼我の距離が離れすぎていたためである。


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