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正式採用

1939年11月十二試作陸功の初飛行が行われた。

テストパイロットは三菱重工の志摩勝三と荒谷春水の二名である。

(こんな重そうな四発機が果たして九六式の後継を務められるのか?)

両者は最初、本庄の試作機を見てこう思った。

確かに九六式を見慣れてしまうと十二試作陸功には親しみが持てないだろう。

(四発は如何にも重そうで、その姿はまるで葉巻の様だ・・・。)

しかし、彼らはすぐに考えを改めることとなる。

二人は乗り込むとまず機内の五月蠅さに驚いた。

それはそうであろう。

騒音を産み出すエンジンが四つもついているのだ。

機内の五月蠅さは半端なものではない。

(デカイ機体の次は騒音ときた...)

そう思いながら機体を前に進め、のそりと機を上昇させた。

いざ十二試作陸功を飛び立たせると思ったより乗り心地が良く快適であった。

なにより機体防御のための装甲に包まれているので、守られているという安心感が飛行時の緊張を和らげてくれる。

機体のスピードと加速率も発動機を四発取り付けているため九六式陸攻とは比べ物にならない。

何より一番驚いたのは四発機の割には操作がしやすいということだった。

前方視界も良好で思い通りの機動を描くし、大型機にしては動きが軽い。

方向舵に若干の鈍さを感じたがそれ以外にこれと言って問題点は思いつかなかった。

あえて言うなら低空での運動性能が九六式に比べやや劣っていたが、その分機体の防御力と爆弾搭載量が増えているので目立たない。

この感想はこの後の横須賀航空隊で行われた実用試験でも同じであった。

この初飛行試験の結果、「本機は低空での運動性に若干の不安が存在するが、それを差し引いても高性能である。」とされ無事に海軍に引き渡される。

しかし、本機が実戦に初デビューするのはこの後一年以上の時間を要した。

それは、唯一の弱点である生産性の低さによって生産ラインを確実なものにするために時間がかっかたのと、本機の高性能に喜んだ海軍が十二試作陸功を基にした防空援護機の開発を命令したためである。

防空援護機とは爆撃機が編隊飛行するとき敵の戦闘機を撃退するために編隊の両端に展開し敵機に対し弾幕を張る機体の事だ。

当時、日本海軍は泥沼の日中戦争の真っ最中。

支那軍の重要地点が日本陸軍に次々と攻略され戦線が内陸に下がるにつれ、九六式艦上戦闘機の航続距離では足りなくなり、攻撃機での単独飛行を余儀なくされた。

狙ってくださいと言ってるよなものだ。

陸攻の被害が増える一方なので、防空援護機が求められたのである。

陸攻よりも防空援護機の開発が優先されたのだ。

結果として陸攻の本格投入が遅れたのである。

しかし、この防空援護機は上手くいかなかった。

攻撃機を無理に改造したので、運動性能が悪く機銃の命中率もお世辞にもいいとは言えない。

結局、同時期に出現した堀越技師による航続距離の長い零式艦上戦闘機の搭乗によって不採用となり以後、防空援護機は計画されることはなかった。

二兎追うものは一兎も得られないのだ。

その後、十二試作陸攻と戦闘機による模擬空戦と洋上飛行試験の反省点や実用試験で判明した引っ込み脚の強度不足などの些細な問題点を解決。

いよいよ実用化が近くなる。

そこに新たに十二試作陸攻の高性能に目を付けはじめるグループが現れた。

日本陸軍である。

陸軍は同時期に研究していた重爆撃機キ49(史実の呑龍)の信頼性が芳しくなく開発の段階で不具合が続出していた。

そんな中、「海軍の新型攻撃機が順調であるという噂を耳にした、ならば三菱に任せてはどうだ?」

という意見が出た。

最初は海軍に貸しを作る形となるので否定的な意見が多数を占めていた。

だが、この時以前にも陸軍は九七式戦闘機で似たようなこと(開発に三菱の九六式艦上戦闘機を参考にした)をやっているので、時間がたつにつれ賛同者が多くなり、最終的には三菱に十二試作陸攻を基にした重爆キ50の開発を命じた。

陸攻に比べ航続距離を必要としない重爆では海軍機に比べ防空火器と装甲が増量され、後に日本一安全な航空機と評されることになる。

こうして十二試作陸攻とキ50は1941年に陸海両軍に正式採用された。

海軍機名は一式陸攻。

陸軍機名は一○○式超重爆撃機「呑龍」。

ほとんど同じ機体を両軍が採用したので生産能率が良好なものとなった。

そのおかげで数多くの機数が生産されることになる。


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