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反跳(スキッピング)爆撃(ボム)

絶対にありえないことをやりました

火葬戦記だから許してください

「どこを狙ってるんだろうなぁ」

ドーリットル隊13番機、エドガー・マクエロイ中尉のB-25は何週間にも渡って覚えさせられた日本の首都圏の空を飛行しながら機内でそう呟いた。

眼下にはこちらに筒先を向け必死に花火を打ち上げる日本軍の高射砲が見える。

しかし、どれも狙いが甘く、自分たちの機を補足しきれていない。

高射砲の迎撃を受けるのはこれで二度目だ。

最初は川崎地区(川崎は爆撃地点でもあったが彼の担当では無い)と現在進行形で迎撃を受けている横浜地区だ。

エドガーには解らないことだが現在彼を含めたB-25の編隊を迎撃している高射砲は野毛山に設けられた高射砲陣地だ。

この部隊の装備していた高射砲は全て旧式の物だったのでB-25に有効な一撃を与えないまま取り逃がしてしまう。

といっても旧式と記述したこの部隊を含め今回の爆撃に抵抗した殆どの防空部隊が装備する八八式七糎野戦高射砲は今後まともに更新されることはないのだが...。

「日本の対空砲火そこまで強くない」

これが、彼の感想だった。

敵国の首都圏ならどれほど激しい迎撃があるのかと恐れていたが杞憂で済みそうだ。

数も質も我が軍の物より劣っているし、戦闘機の迎撃も全く無い。

発砲炎の輝きに向け機関銃を撃ち返しながらB-25はその速度を上げ、高射砲の射程を振り切る。

横浜地区の対空砲火を振り切って暫く航行を続けていると、段々と建物が少なくなり、森林と田畑が辺り一面に広がる風景に出くわした。

敵国の地だが、約三週間ぶりに見るまともな陸地だ。

何かノスタルジックな感じさえする。

そう思いながらのんびりと陸地を眺めていると

「半島の端が見えてきたぞ」

不意に偵察員の合図が聞こえた。

「よし、三週間ぶりの陸を満喫しているところ悪いが、全員仕事を始めるぞ」

エドガーはそう答え、自分の持ち場が近いことを感じた。

双発の翼に金属製の鈍い光を輝かせながら4機のB-25は横須賀に侵入した。


「なんだ陸攻か?」

横須賀港に停泊していた重巡洋艦「高雄」の甲板作業員は急に耳に入ってきた発動機の爆音に驚き空を見上げた。

調度4機の機影が横須賀港に接近しているところだった。

どこか哨戒に行っていた陸攻が何らかのアクシデントこちらにやってきたのだろうか?

それにしても低い高度を飛んでいる。

それどころか徐々に高雄に接近を始めたではないか

その編隊を注視すると先頭の一機が機首を下に向け高度を下げ始めた。

まるで高雄に向け雷撃を敢行するように...

その瞬間、彼は朝から横須賀に空襲警戒が敷かれていることを思い出した。


「デカイ船が2隻います!!あれは戦艦でしょうか?」

「解らん!!だがあれを狙うぞ!!」

エドガーのB-25は横須賀港に接近すると湾内に停泊している巨船2隻を認めた。

彼等は空母から飛びたったが、乗員は陸軍所属なので艦種に疎い。

ただ大きいという事だけは解った。

本当は2隻を狙いたいが、ある理由で各機2発しか爆弾を持ち合わせていない。

ともかく、そのうちの片方に狙いを定め、残りの3機にも無線連絡を行い、作戦を開始すべく高度を下げ始めた。

彼等は他の12機の仲間たちとは別にある特別な訓練を繰り返してきた。

それを実行するのは今だ。

B-25の二つのプロペラが海面を叩くんじゃないかと思われるまで高度を下げる。

気付くと周りの艦艇からのまばらな対空砲火に包まれていた。

機に今まで以上の振動が走り、周りには何本もの水柱が発生する。

計器を確認する

時速は最大速度に近い400km、高度は約60メートル...

ここまでは訓練通りだ。

「目標との距離、約700メートル!!」

爆音の中で偵察員が叫んだ。

「今だ!!」

エドガーの合図とともに4機のB-25から8発の爆弾が投下された。

投下された爆弾はまるで意識を持つように海面を真っ直ぐにはね飛び、直進し目標の舷側に炸裂。

黒煙を巻き上げた。

エドガー機は機体の下部を爆弾の衝撃に揺らされるも、何とか高度を上昇させ、黒煙に包まれた軍艦の上を通過する。

「やったぞぉ!!」

目標から黒煙が上がっているのを確認すると、機内全員がほとんど同時にそう叫んだ。

エドガーは笑いながら僚機を確認したが、その機数は3機に減っていた。


「日本海軍の主力艦を彼らの本土爆撃と合わせて撃沈してほしい」

これはルーズヴェルトがキングに要求した日本本土爆撃の条件の一つだ。

真珠湾攻撃の意趣返しであることはキングにもすぐに解った。

キングはとても困難だとして要求の撤回を請願したが、ルーズヴェルトもかたくなに拒否した。

どうやら大統領は日本にできることが我がアメリカにできない筈がないと考えている様だ。

この条件を満たすためアイデアを持ち込まれたダンカンは色々な方法を模索する。

まず最初に、雷撃を敢行する事を考えた。

英国海軍やイタリア海軍、そして何より交戦国の日本海軍はB-25と同等の爆撃機で雷撃を行っていたのでB-25でも可能と考えたのだ。

しかし、今回の作戦の性格上、爆撃機に魚雷を積んでしまうと航続距離が低下してしまう可能性があるので早々に選択肢から外していた。

何より、横須賀港近くの水深は10m前後なので雷撃は物理的に不可能だった。

次に大型爆弾による爆撃を考えたが、陸軍から取り寄せた水平爆撃の成功率を見て諦める。

もし、敵艦を撃沈できずに責任がこちらに回ってきても困るからだ。

そして、最後にある方法を思いついた。

それは反跳爆撃である。

反跳爆撃とは低高度を高速で飛翔し遅延信管を施した爆弾を投下するという方法である。

この方法で投下された爆弾は爆撃機と同じ速度で海面に接触し、表面張力によって押し上げられ、石の水切りの様に飛び跳ねる。

そしてその飛び跳ねた爆弾が敵艦に命中するというものだった。

遅延信管を取り付けるのは爆弾が着水と同時に爆発するのを防ぐためである。

魚雷と同じで目標船舶の吃水線下に直撃する為、敵艦に与えるダメージは大きく、その上魚雷に比べ圧倒的に高速だった。

既にイタリア空軍はこの方法で多数の輸送船を撃沈している。

装甲のある軍艦を撃沈できるかどうかは怪しいが、一番現実的ではないだろうか?

問題はまだアメリカ海軍で実行された事が無いという点だった。

その為、急ピッチで訓練方法が立案され、ドーリットル機を除いた機でくじ引きを行い反跳爆撃を行う機を決定し約一か月の猛訓練を経て何とか形にしたのである。

また反跳爆撃を行う機体は海面スレスレを高速で飛ぶ事から、燃料の消費が増大する可能性に備え、他機の半分の爆弾を搭載しその分機内に燃料タンクを増設した特別仕様に改造した。

これらの大胆な計画の基、エドガー達は爆撃に成功したのだった


日本は雷撃、アメリカは反跳爆撃で命張ってる感を出したかったんです許してください

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