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四発機

十二試陸攻の四発機案。

たしかに、合理的である。

重い機体に重い武装を乗せ、尚且つ遠くまで飛ばすためには単発より双発、双発より四発のほうがいいに決まっている。

これは子供でも解りそうなことだ。

この案を本庄が最初に話した時この打ち合わせの議長である和田操廠長は、

「用兵に関しては軍が決める!!三菱は黙って軍の仕様書通りの双発機を作ればいいのだ!!」

と大声で怒鳴り耳を貸さなかった。

しかし、本庄はいかに海軍が十二試陸功に求める航続距離と防御能力、兵装搭載能力の両立が双発機に求めるには矛盾したものであり軍用機としては合理性に欠けるかという熱心な説明、および仮想敵国であるアメリカが最新四発超重爆撃機B-17の開発に成功したことも引き合いに出した。

この結果、その場の打ち合わせでは何の議論もすることなく却下されたがしばらくして第一回打ち合わせ時の本庄の意見を海軍上層部が耳にし、三菱に四発陸上攻撃機の制作を許可したのである。

当時大規模な四発機の生産経験もなく、生産体制が整っていない日本でこの許可を出したことは一種の賭けであった。

「八試特偵察機で成功し、九六式陸功を開発した本庄ならあるいは...。」

と考えたのかもしれない。

だが、日本海軍も最初から四発機の開発を想定しいなかったわけではなかった。

1938年に日本海軍はアメリカの航空機禁輸措置の前に大日本航空を通して輸入したダグラスDC-4Eを基とした攻撃機の開発を中島飛行機に命令している。

こちらは、十三試大型陸上攻撃機として1941年4月に初飛行に成功。

機体規模はアメリカのB-29に匹敵するものであった。

しかし、深山と名付けられた本機はエンジンにトラブルが多く運用に適さないと判断され、試作機が6機作られただけにとどまった。

勿論不採用である。馬鹿鳥という情けないあだ名もつけられた。

基のダグラスDC-4Eがあまり性能が良い機体ではないということもあるが、あまりにも散々である。

一方、陸軍では九二式爆撃機という四発重爆の運用経験はあり、同機が旧式化してからはその後継機の導入を模索していた。

こちらは最初から国産化は諦め外国機の輸入を検討し、ユンカース社のJU90の購入を企図するも、ドイツ軍の横槍で失敗。

その後、フォッケウルフのFW200の導入を計画し、まず5、6機の輸入を決定したが、日本側の考えがまとまらなかったことと、1939年の開戦で引き渡しが困難になったことが理由で実現しなかった。

こちらは、フォッケウルフが乗り気であったため残念でならない。

一説にはFw200のV10型軍用試作機は日本への軍用案であったとする説もあるほどだ。

話を十二試陸攻にもどそう

本庄は海軍から四発機案の設計を許可されてから、設計室に籠り様々な検討、議論を重ね遂に1939年に本庄の四発案通りの機体の試作機が完成した。

航続距離を維持し九六式陸功の時に問題になった防弾性が大幅に改善され、速力兵装積載量も若干の増量に成功する。

生産性の低い四発機を少しでも量産しやすくするために級六式と同じ金星発動機を四発搭載した。

具体的な性能は最高時速449km、航続距離は2500km、防空兵装は20mm旋回銃7.7mm旋回機銃各三門。爆弾搭載量は最大1,5tである。

機体規模のわりに積載量が少ないのは発動機のエネルギーを全て防弾性能に割り当てたためだ。

本機の燃料漏洩に弱い主翼インテグラルタンク(機体の一部をシーラントにより水密として、構造部材そのものを燃料タンクとして利用する方法)の周りをゴムで覆いさらに薄い装甲を備えた。

これにより、九六式陸攻の弱点を克服しタフな攻撃機に仕上がった。

正に軍用機である。

しかし、見た目が九六式陸攻に比べ不細工なものになってしまった。

これが後継機か?

というほどに九六式のスマートでさっぱりした面影がなく、武骨で鈍重な機体はあまり良い印象ではない。

当然、四発機であることから運動性は双発の九六式に比べ低下されることが予想される。

そして若干の不安が残る中、試作一号機の初飛行が1939年11月に行われることになった。


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