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85.制約

 黒い手枷を装着すると、魔力が吸われていく感覚を覚えた。

 そしてそれに伴い、手枷の重量が増していく。

 前世であったトレーニング用のウェイトをメチャクチャ重くしたような感じだ。


 手をプラプラ揺らして動きを確認していると、シオン先輩とボブ先輩がこちらをじっと見ていることに気づいた。


「どうかしましたか?」

「うーん……その手枷を付けて平然としてる魔力と筋力を兼ね備えているなんて、自分で提案しておいてなんだけど、改めて驚いたよ」

「流石兄貴ッス!!」


 おい。


「……そんなものを後輩につけないでくださいよ」

「まぁまぁ、結果オーライでしょ? 君がそこらの囚人とは比べ物にならない力を持ってるのはわかってたし」


 確かに、結果的には……

 ……ん? 今、囚人って言った? これ犯罪者につけるやつなの?


「よし、それじゃ模擬戦を始めようか」

「シリウスさん、頑張ってくださいまし……」


 そんな僕をよそに、シオン先輩は平然と闘技場に上がっていく。


 クリステル先輩はもの気の毒そうにこちらを見ていた。

 この場ではクリステル先輩が唯一の良心です……



 闘技場の片側にはシオン先輩、僕、クリステル先輩が立ち、反対側にはボブ先輩を含む『無威斗滅亜(ナイトメア)』のメンバー、合計十人が立っていた。


「これで、今日ここに来てるメンバー全員だ。マジでいくぜ?」


 ボブ先輩が拳を打ち付けながら不適に笑う。

 後ろのメンバーは少し緊張した面持ちをしつつも、しっかりとした構えを取っていた。


「あぁ、構わないよ」

「頑張りますわ……!」

「できる限りやってみます」


「じゃあ、はじめようか!」


 シオン先輩はそう宣言すると、チャクラムを回転させ始めた。

 クリステル先輩やボブ先輩、『無威斗滅亜(ナイトメア)』のメンバー…長いな、団員でいいか、団員達も魔力と気力を練り始めた。

 さて、僕も……


雷光付与(ライトニングオーラ)


「重っ!?」


 付与した魔術に流し込んでいる魔力がグングンと手枷に吸収され、それに伴い手枷の重量が増加していく。

 これはダメだ、身体強化のために魔術を使ってるのに逆に戦いづらくなっている。


 すぐに魔術を解除すると、手枷の重量も元に戻った。

 継続系の魔術は封じるしかないな……


 魔術は諦め、いつもより『練気』に力を入れて身体能力を高める。

 いつも使ってる魔術による強化を使えないため、少し不安である。



 いつの間にかボブ先輩の顔からは笑みが消え、真剣な表情になっていた。

 ボブ先輩が体の後に手を動かしたかと思うと、後ろで魔力を高めていた団員たちが一斉に魔術詠唱を開始した。

 攻撃魔術と妨害魔術の混成だ、やっかいだな。


「シリウス君、行けそうかな?」


 シオン先輩が不敵な笑みを浮かべながら聞いてくる。


「大丈夫です」

「よし、僕が突っ込むから遊撃を頼む! クリステルさんは敵後衛に牽制を!」


 シオン先輩は僕の答えを聞くか聞かないかのタイミングで敵陣に向かって疾走しはじめた。


「はいっ!」

「承知しましたわ!」


 シオン先輩の後ろについて僕も走り出す。


「『細氷(ダイヤモンドダスト)』 『氷華(グラスフィオーレ)』」


 クリステル先輩が発動した魔術により、闘技場に細かい氷の結晶が漂い始める。

 この『細氷(ダイヤモンドダスト)』は前回のクリステル先輩との対戦の時とは違い、今回は僕の魔力は乱さないように調整がなされている。

 共闘対策はバッチリだ。


 そして遂にシオン先輩とボブ先輩が接敵する。

 ボブ先輩には団員が二人ついている。


 ボブ先輩が素早くハンドサインを出すと、団員はそれぞれ横方向に広がっていった。



 そんな先輩たちを横目に、僕には団員が群がってきていた。


「兄貴、覚悟!!」

(タマ)()らせていただきやす!!」

「しねぇぇぇぇ!! ガキィィィ!!」


 二人の団員の攻撃を雷薙で受け流し、大きく振りかぶっており隙の大きい一人に掌底と共に『雷撃(スタンボルト)』をかます。

 やはり魔術を使うと手枷の重量は増すが、魔力消費の少ない魔術を瞬時に放つ分にはなんとか問題なさそうだ。


「ガキブベッ!? アババッ!?」


「な!? アレを着けて魔術行使だって!?」

「さ、流石兄貴ィ!!」

「これ、無理じゃね……?」


 掌底をもろに食らった団員は吹っ飛んだままビクンビクンと痙攣している。



 そんな中、僕は掌底を打ったタイミングで死角から斬りかかってきたもう一人をまたもや往なしていた。

 押してきたところをカウンターで斬り伏せようと思うも、他の団員が死角に回り込み攻撃を放ってくる。

 団員達は決して深追いはせず、互いに相手の死角に回り込むようヒットアンドアウェイに徹している。

 こちらが押そうとすると、後衛の魔術師から牽制射撃が飛んでくる。

 手枷の制約も大きいが、それを抜きにしても非常にやりづらい。


 見た目に反して冷静で慎重な人達である。

 あわよくばこちらがミスすることを待つくらいのスタンスで戦っているようだ。

 ……もしかして、僕を先輩から離して釘付けにすることが目的なのか?



「ウラァッ!!!」

「フッ!」


 シオン先輩の様子を横目でうかがうと、ボブ先輩の金砕棒によるラッシュを『螺旋駆動(スクリュードライバー)』で躱しているところであった。


「『爆炎(ブレイズボム)』!!」


 ボブ先輩は間髪入れずに爆発により金砕棒の軌道を変え、シオン先輩に襲いかかる。

 しかしシオン先輩はそれを難なく逸らす。


 しかしサポーターの団員がボブ先輩の攻撃タイミングに合わせて死角から、一人が魔術、一人が剣でシオン先輩に攻撃を仕掛けた。


 やはり、複数人で死角を取ることを徹底しているな……!


 僕が魔術で支援しようと思った矢先にシオン先輩と団員達の間に氷の華が割り込み、全ての攻撃を防いだ。


「何っ!?」


 攻撃を弾かれ体勢を崩している団員達に『雷弾(サンダーバレット)』を撃ち込み、闘技場から退場させる。


「ハッハァ! やるじゃねェか!!」


 ボブ先輩の口角が釣り上がる。


 不審に思い『魔力感知』を発動すると、クリステル先輩の上空に魔力の収束を感知した。

 まずい……!!


 魔術行使を最小限にして『魔力感知』の頻度を減らしていたせいで気づくのが遅れてしまった。

 僕を見てクリステル先輩もハッとした表情で上を見上げたが、既に遅かった。


 影を潜め、詠唱していた男が叫ぶ。


「食らえ!! 必殺『墜雷(サンダーボルト)』!!」


 クリステル先輩の上空で眩い閃光が瞬く。 

 ――よりにもよって雷系魔術か!?


『白気纏衣』『縮地』


 イチかバチかで『白気(ビャッキ)』を纏い、先輩に向かい思い切り地を蹴る。


「ハァァァッ!!」


 魔力を《《ほとんど》》通さない金属黒鋼(くろがね)で出来た刀、夜一を先輩の頭上に向かって振り抜く。


――パァンッ!!


「グゥッ!」


 『墜雷(サンダーボルト)』の余波を受け電流が体を流れたが、なんとかクリステル先輩への直撃を防ぐことができた。

 夜一は完全に魔術を斬れるわけではなかったが、気休めレベルには効果があった。

 僕は雷系魔術に適性があるため他魔術よりも耐性が強いため、余波程度ではあれば然程問題は無い。


 手枷に魔力を吸われ、繊細な魔力調整が必要な『白気(ビャッキ)』はすぐに解除されてしまった。先輩を守る一瞬だけでも発動できたので御の字である。

 また『白気(ビャッキ)』の魔力を吸収して重量を倍増させた手枷を着けたまま刀を振るったため、手枷が思い切り手首に食い込んでいる。痛い。



 瞬きの間にクリステル先輩の側に瞬間移動し夜一を構えている僕と無傷のクリステル先輩を見て、『無威斗滅亜(ナイトメア)』の一同は固まっていた。


「は、はぁぁぁ!? あの距離で、アレを着けて、『墜雷(サンダーボルト)』に間に合う!??」

「どんな反射神経と身体能力してんだよ……」

「バ、バケモノだ……」

「流石兄貴ィ!!!」


 そんな団員達を見てシオン先輩はやれやれと肩を竦め、隙だらけの団員にチャクラムを放った。


「ぶべらっ!?」

「あっ! 汚ぇぞ、シオン!!」

「流石シオン腹黒い!!」


「隙だらけなのが悪いんだよ?」


 シオン先輩が困ったように笑うと、団員達は我を取り戻したのか臨戦態勢に戻っていった。

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