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職世界冒険録  作者: ハスキーひやま
フォレストの章
7/12

初依頼はお1人で?

俺はギルドの1階に降り、受付に向かった。受付にはやる気の無さそうな黒髪の男とそれを注意している金髪の女性がいた。

やる気の無さそうな黒髪の男はカームという名前で注意していた金髪の女性はアリサというらしい。依頼を受けたいと言うとアリサが貴方に合った依頼は……と言いながら何かのファイルのようなものを取り出し、そこから何枚か紙を引き出した。紙には文字が書いてあるが……読めない。読めない事に関する理由とここに来た経緯を一部省略しながら説明した後、他の3人も同じであると伝えた。困った顔でアリサが紙を元の場所に戻して別の場所から紙を取り出した。


「ならこの依頼なら大丈夫そうね。ここから東の森に住んでるドワーフのスクーアさんに食料と水を届けるの。届ける物はもう用意してあるから、行ってきてもらえる?」

「はい!」


地図を見るとちょうど俺達が通った道程にあった小屋に住んでいた人らしい。スクーアさんって言うのか。また盗賊に会わないようにしないとな。

俺は荷物を背負い街を出た。

荷物はめちゃくちゃ重い。これ何kgあるんだ……?今はもう夕方。あまり遅くならないようにしないと。


しばらく歩いて思ったが俺は魔力が何かよく知らない。スキルを使う為に消費する、というのは既に経験済みだ。アニメみたいに魔力がもし力に変えられるなら今ちょっと試してみよう。パワースラッシュのような一気に放出する使い方ではなく歩きながら足に魔力を回すイメージを保ったままスキルを使う応用で力に変える。

何度かやってみると荷物があれだけ重かったはずが、ふっと一瞬だけ楽になった。

これなら練習になりそうだ、目的地に着くまで同じことを繰り返していると、ここからギルドに向かうまでの倍くらい疲れた気がする。魔力は体力に直結しているのだろうか、もしくは精神的な話か。


「はぁはぁ……スクーアさん、頼まれたお届け物です」


ノックしながら言うと小屋の戸がゆっくり開いた。しかし姿が見えない。下を見るとスクーアさんがいた。荷物を受け取って中を確認した後、紙を渡された。


「おぉ、フォレストだったのか。ありがとうな。達成書だ」


戸がゆっくり閉まった。この紙を渡せばいいのか。何か書いてあるがやっぱり読めない。

勉強するしかないか……一番嫌いなタイプの勉強だが、これからこの世界で生きてく上で必要不可欠な文字であるのは間違いない。文字が理解出来れば後は発音するだけなのだから。もう辺りは暗くなり始めている。また盗賊に会うのはゴメンだ。来た時のような感覚で走る時に魔力を使えば更に速くなれるのではと思った。来る時に練習した方法で力を込めた時変化があった。


魔法『スピード:ブースト』を覚えました!


突然メッセージが現れ、ステータスの項目にある魔法の枠にスピード:ブーストという文字が浮き出た。魔力を消費し、一定時間俊敏を上げる補助魔法らしい。

反復練習はこのやり方で合っていたのか。初めての魔法、さっそく使おう。

『スピードブースト!』と叫んだが発動しない。おかしいなと思っていると詠唱が頭に浮かんできた。詠唱しないとダメなのか。浮かんだ文字はここの世界の文字で書かれていた。詠唱を魔力を使って読み上げろ、とメッセージが現れた。


「……我が力を大地へ還し、見返りとして速さを授けよ。『スピードブースト』!」


ドンッ!と空気が震え、俊敏のステータスが1割上がり、走ると自転車を全力でこいだ位の速さで走る事が出来た。とはいえしばらく走ったため流石に疲れたので途中で立ち止まり休憩した。

ポケットから紙を取り出して『魔力を使って読み上げろ』というメッセージを思い出す。

まさかと思い、魔力を目に集中させる。扱いには慣れないし目に力を込める時点で普通やろうとも思わなければ、そう簡単に出来もしない。足に魔力を流した時の感覚を思い出しながら何度も練習した。ふと、一瞬だけ文字が日本語のように見えた。おそらくもう少しだ……もう少しすれば読めるはず。

魔力を更に込めるとなんと文字が日本語に書き変わるかのように読めるようになった。読める……読めるぞ……!内容は、依頼達成書・スクーアとだけ書いてあった。


「ちょっと読むだけですっげえ疲れた……慣れるしか無いのかよ……」


多分この分では文字を覚える方が圧倒的に楽だ。サラや川崎さんや先生にも一応やり方は教えてみよう。絶対文字覚える方が楽だと言われるだろうけど。


ギルドに着いて紙を受付へ持っていった。するとアリサさんが棚に手を伸ばして報酬を渡してくれた。報酬は種の入った瓶と何かのポーション。


「お疲れ様、貴方と来たみんなは食堂へ向かったわ。ここの地下だから行ってきなさい」

「はい!」


地下に降りる階段は無かったのでおそらくあの部屋を使うのだろう。先に報酬を置きに戻ってから俺は地下に向かった。


食べながら、異世界組のみんなに今日魔法を習得したやり方を伝えたが、皆の反応は悪かった。

肝心の魔力という概念を感覚で掴めていたのは俺と川崎さんだけだったのだ。

川崎さんに至ってはあれだけ反復練習して覚えた魔法『スピードブースト』をやり方を教えただけで覚えてしまった。マスターによれば彼女が元から素質がある分魔法を覚えやすい為だとの事。


俺の戦士という職は武器を変えれば多種多様な攻撃スキルを覚える職。ありふれた職だが人によって伸び幅が違うため、ただ戦士職と言っても強さが桁違いらしい。

ちなみにこの世界の魔法適正は調べる事が出来る。職が影響して適正が決まるので職に覚醒しないと適正は基本0。適正に合わない魔法は覚えられないか、覚えても大した事がないそうだ。

マスターが俺達の魔法適正を調べてくれた。


俺は補助、防御。

戦闘能力向上魔法と専用の防御魔法を覚えやすい。戦士職と相性が良い。

サラは付与。

物に対して属性や、状態異常を付与することが出来る。これがある生産職は希少な属性武器を作る事が可能だ。

川崎さんは全魔法の適正有り。

マスターによれば全部の魔法適正がカンストをぶち抜いているらしい。こんな人材は滅多にいないそうだ。


中橋先生は言わずもがな全適正値が0だった。今日分かったのは川崎さんはチート適正だという事位か。


「私そんなに強いんですか!?絶対何かの間違いじゃ……」

「間違いじゃないよ〜何なら見る?」


見せた後、マスターが明日から川崎さんに魔法を教えると言った。このギルドの12階、修行階と呼ばれる場所で。このギルドの誰もが行きたがらない場所だというのを後でバルドさんから聞いた。


後日、川崎さんが修行階に行って帰って来た時には女の子としては見られたくないであろう位グロッキーになっていた。

修行階で一体何をしていたのか……しかし川崎さんのレベルが一気に33になっていた事から相当修行したのだろう。俺も負けていられないと、マスターに懇願して修行階へ行く事になった。


「言っとくけど、ただのレベル12じゃ勝てないと思うよ。このギルドの修行階の魔物には。それでもやる?」

「大丈夫です。やって見せますよ!」

「川崎さんに私がやらせたのは川崎さんが最強の魔法適正を持っていたから。気を緩めたら川崎さんでもやられてたわ。それでも戦う?」

「はい!」


仕方ない、頑張ってね。とマスターが扉の鍵を開く。装備はショートソード+5。あれから何度か精錬をしていたらしく、とても頼り甲斐のある剣になっていた。そしてもう一つ。アイアンメット+3。何を隠そうあのヘルメットの強化版だ。サラが寝る間も惜しんで強化を終わらせておいてくれた。材料はギルド倉庫から引き出して良いと言われたアイテムを使ったそうだ。

ポーチには昨日の種とポーションから作られたハイライフポーション。説明書きはこうだ。


ハイライフポーション

使うと体力を回復し、傷を癒す。

回復ポーションよりも強力。魔力を回復する事はできない。



修行部屋へ入ると、そこに居たのは魔物の『寄生植物ギガプラント』という奴だった。レベルは29。今まで戦った魔物からすれば桁違いにレベルが高い。このギルドの木に寄生しているらしく、かなり巨大だ。


「攻撃は魔法を使って強化をしてからだな。我が力を大地に還し、見返りに速さを授けよ!『スピードブースト』!」

「SYAAAAAAAAAAAAA!!!」


突如、ギガプラントが叫び声を上げたかと思うとツタにトゲが現れ、それを飛ばして攻撃してきた。幾つか剣で弾いたがそれだけで手が痺れた。相当なパワーを持っている。かわすにも、スピードブーストを使ってやっとかわせる位の弾速である。圧倒的にステータスでこちらが負けているようだ。


「はぁっ!」

「SYAAAAA!!?」


ツタのような奴の一部を切り裂くと痛がるかのような素振りを見せたが、すぐに傷が再生してしまった。弱点はツタなのか?しかし再生するならおそらく弱点は別にある。


「パワースラッシュを使わねえとジリ貧か……けどあれは魔力消費が激しいし、何とか一撃で葬りたいな……」


ツタが俺に襲い掛かかってきた。それを俺は剣で薙ぎ払いながら奴の懐へ潜り込んだ。するとそこに赤い種のような物が見えた。しかしそれが見えたのは一瞬で、ツタがそれを隠してしまった。核はアレに間違いない。アレに今の全力をぶつけてやる!


「さっきの場所に当たれば俺の勝ちだ!『パワースラッシュ』!」


パワースラッシュのエネルギー波がツタを断ち切りながら種のあった場所へ向かう。が、突如バリアのような物にエネルギーを完璧に防がれた。

防御魔法……!?植物が防御魔法を使えるのか!?狼狽えているとパワースラッシュを使った事による反動で魔力切れが起きた。全身に力が入らないのだ。棒立ちになった俺に容赦なくツタのムチが振るわれ、入口とは逆の壁まで吹き飛ばされた。装備していたショートソード+5も、部屋の入口付近まで飛ばされてしまった。


「くっ……そぉ……」


嘲笑うかのようにツタをうねらせ、こちらに向かって何かを発射しようとしている。おそらく魔法のビーム。アレを喰らえばタダでは済まないだろう。しかし防ぐ手段である剣は手元から遠く離れた位置まで飛ばされている。ステータスの魔力ゲージが少し回復し、だるさが抜けた。ハイライフポーションも使って体の傷を癒し、回復する。しかしここから走って向かっても部屋の真逆の位置にある剣に届くまでにはビームが襲いかかるだろう。


「受け止めるしかないのか……アレを!」


ギガプラントのビームチャージが終わり、光で目の前が真っ白になる。右手を突き出し、ギガプラントのバリアを思い出しながら魔力を放出し……


「我が魔力を大地に還し、我守る盾とせよ!『スフィアシールド』!」


ほぼ無意識に詠唱を完成させていた。先程のバリアと同じ物が俺の周りに展開され、ビームを防ぎきった。が、回復した魔力をまた使い切り魔力切れを起こした体は疲労を溜め込み力が抜けそうになる。ギガプラントもさっきのが必殺技だったらしく、魔力切れからかツタが動いていない。今なら勝てる!ハイライフポーションの残りを全部飲み干して剣まで走り狙いを定めた。魔力が回復するまで少し待って、最後の1発に全力を込めた。


「終わりだぁ!『パワースラッシュ』!」

「SYAAAAAAAAAA!!!?」


ギガプラントは核を断ち切られ、ぐったりとした後に枯れ落ちていった。

一気に大量の経験値が入り込み、俺のレベルは25になった。


レベルによる解放!

スキル:ダブルスラッシュ

スキル:フレイムスラッシュ

スキル:ウォータースラッシュ

スキル:サンダースラッシュ

を覚えました!

魔法:スフィアシールド

魔法:パワーチャージ

を覚えました!

称号・平凡な剣士を獲得!

称号による……


長かったので省略する。しかし、一気に強くなれた。魔力量もかなり増えたのでパワースラッシュ1発ではすぐに魔力切れにはならないだろう。部屋から出るとマスターが出迎えてくれた。


「ギガプラントを倒しちゃうなんて!すごいよレベル12だったのに!」

「いやぁ……ぎりぎりでしたよ」

「まぁアイには35レベのを2体けしかけたんだけど……」


川崎さん……恐ろしい子!あんな化物より強いのを2体同時に相手して生きて帰って来るとは、彼女はよほど強くなったのだろうな。しかしマスターアンタ……スパルタにも程がある。

鍛錬は終わり、俺は今日も1階の受付へと向かった。

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