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職世界冒険録  作者: ハスキーひやま
フォレストの章
6/12

到着。ギルド・フォレスト!

「はぁっ!」


草原の先の森に入って、魔物を倒しながら順調にレベルを上げていき、先生以外は10を超えている。サラが木の実型の魔物を殴り倒し、川崎さんは杖で殴ってリス型の魔物を倒した。俺はパワースラッシュをあの日以来使っていない。

どうやらスキルは魔力を消費して撃つらしく、非常に疲れるのだ。魔力を回復するには休憩をする必要がある。いちいち時間を取るわけには行かない。それに今は敵がそこまで強く無いため、撃つ必要が無いのもその理由である。


「森に入ったらまた魔物の種類が増えたな」

「素材が取り放題で仕事のやりがいがあってその方が嬉しいけど」

「ちょっと多すぎじゃないですか?」

「うおっ、こっちに来ないでくれ!なんで俺が狙われるんだ!」


先生ばかりを魔物が狙う。多分原因はカバンに入ったシチュー。後もう一つの原因はレベルが低いからというのもあるだろう。

俺は先生を襲うコウモリ型の魔物を剣で切り裂いた。素材にならない魔物だったらしく、サラが地面に埋めていた。


「うーんダメだ……使えそうなのは木の実の奴だけだな」


そう言えば、レベルが上がっても先生はステータスに気が付かない。自分のステータスなら分かるはずなんだがなぁ……

しばらく進むと大きな切株があり、小屋が立っていた。人の気配がする。誰か住んでいるのだろう。


「誰だろうなこんな森に住むなんて」

「さぁ……うちの生徒かも知れないから声だけ掛けます?」

「違ったら気まずいけど」


サラは声を掛けるのには反対のようだ。実際気まずいのは分かるが、早急に見つける方が良いはずなのだ。異世界だからと浮かれて何かやらかす奴も出てくる。突然力を手に入れた奴が浮かれて何をするかなんて想像したくもない。

小屋の戸をノックすると、引き戸が開いた。……誰もいない?


「下だ下」

「下?うおっ!」

「誰だ?なんかようか?」


小屋の中にはヒゲもじゃの小さい人が居た。毛深いため、顔だけでは男か女か判断しづらい。これはドワーフという奴か?制服を取り出して、ドワーフに見せながら問う。


「あーすいません、うちの仲間みたいなのを探してまして。こういう服装した人間見ませんでしたか?」

「んー知らんなー他を当たってくれ」

「そうですか、ありがとうございます」


ドワーフの人は引き戸をゆっくり閉めた。まさかドワーフがいるとは……つくづく驚かされるな。そう言えばゴブリンみたいな感じの人型の魔物には会ってない。今のドワーフは人……に分類されるのか?


「この森には居ないのかもな」

「じゃあさっさと抜けて街に向かいましょ」


数時間ぶっ通しで歩き、俺達は森を抜けた。その先にある丘を超えると更に向こうに街が見える。地図によればあれがリジェルという街で、目的の『フォレスト』という冒険家ギルドがあるらしい。


「良かった……もう魔物に襲われないで済むんだな」


よっぽど参っているんだな。そりゃ見た事ないものにアレだけ追いかけ回されたり空腹の中1人で森をさまよって居たんだから誰だってそうなるだろう。

そうやって、みんなが先生の情けない声を聞いてくすくすと笑っていると、何者かが突然俺達のカバンを先生ごと奪い去った。


「うわぁ!?なんだ!」

「ヒヒッ、コイツは俺達火鼠盗賊団が頂いてくぜぇ!」

「盗賊!?先生を返しやがれ!」

「返せと言われて返す盗賊は居ないぜぇ?」


ゲラゲラと下品に笑う3人の盗賊達。こうなったら倒すしかない!俺は剣を抜いて構え、サラは大きめの石をレシピで形を変えて石のナイフにし、川崎さんは手を前に突き出し魔法の弾を撃ち出すために魔力を貯めた。

その瞬間先生を担いだ盗賊が逃げたため、俺が追いかけ、残りは2人に任せた。


「嬢ちゃん達が相手か?ヒヒッ、レベルも大したことねえな!」

「甘く見ないで貰いたいなぁ。おじさん達」

「私達が相手をします」


腰のナイフを盗賊が抜き、サラに襲い掛かった。が、サラは石のナイフでそれを防ぎ一瞬で盗賊のナイフを叩き落とし、奪い取った。


「なっ、てめぇ返せ!」

「はっ、人様の物を盗っときながら自分がされたら嫌か?」


サラがナイフで盗賊の足を傷つけ、背中に回り込み後頭部を殴り飛ばし気絶させた。


「やられたらやり返されるんだ。覚えとけ」

「伏せて下さい河端先輩!」


サラが伏せると、頭上を魔法弾が通り過ぎて行った。後ろを見るともう一人の盗賊が剣で斬りつけてくる寸前だったようだ。

その盗賊は愛の魔法弾で吹き飛び木にぶつかり気を失った。


「ナイス愛ちゃん!」

「えへへ……」


逃げた側を追って森に再度入った俺は、見失わないように全力で走っていた。


「付いてきやがったか……ならば喰らえ、『火鼠爆弾』!!」


盗賊団が炎の走り回る弾を飛ばしてきた。これは……ねずみ花火だ。

剣で弾き返し、一気に距離を詰めた。前も言ったが足には自信がある。一瞬で先生を掴んで走っている盗賊に追いつき、剣を振り下ろした。あっさりと盗賊は背中を切り裂かれ、血が飛び出した。人を刺す感覚は豆腐のようだというのを何かで聞いた事があるが、そんな生易しいものではない。目の前が敵の血で染まる。人を斬った、という事実が俺に突き刺さる。俺の手が震えていた。

コイツらは攻撃してきた。反撃を食らっても仕方が無いのだと自分に言い聞かせ、血を拭った剣を鞘に収めた。


「沢田……大丈夫か?」

「……はい。先生こそ」


俺は盗賊から装備を剥ぎ取って、カバンから度数の高い料理酒を傷にぶっかけて剥ぎ取った服を引き裂いて布にし、傷に巻いてやった。やり過ぎた気がしたからだ。俺がこの盗賊にする最初で最後の慈悲。これ以上の情けをかける気はない。


「早く戻らないと。2人が心配です」

「あぁ、そうだな。戻ろう」


戻ると、2人は盗賊達をヘビロープでぐるぐる巻にして縛っていた。サラはおそらく盗賊の物だったナイフを装備していた。

盗賊からとはいえ手癖が悪いな。


「もう行きましょ、早く街に行かないと宿が取れないし」


サラがそう言ったため、俺達は縛られた盗賊を放置して街へと向かった。


────────────。


リジェル。この街の名産品は何と言ってもみかんである。リジェルの街に着けば、そこらじゅうからみかんの香りがする。別名をみかんの街。

この街のみかんはほぼ全てが数百年前に現れ、この街を飢饉から救ったエルフの冒険家が持ち込んだ物であるとされる。そして彼女は今も存命であり、街の長でありながら『フォレスト』ギルドマスターとしても有名な人物である。

そんな彼女の名から取ってこの街は名付けられた。


俺達はリジェルに到着した。空気から甘酸っぱい香りがする街だ。木々にはみかんらしき物がなっていてとても美味しそう。更に奥の方には巨大な木が見える。


「フォレストは何処でしょうか」

「あんたら、うちに用があるのか?」


川崎さんがつぶやくと大剣を背負った金髪の大男が声を掛けてきた。男はフォレストで働いている冒険家で、これから戻るところらしい。俺達は彼の後について行きフォレストに到着した。

ギルドの建物は街に着いた時に見えた巨大な木が加工されて作られていた。おそらくこれもみかんなのだろう。異世界みかんの木と言った所か。扉を開きギルドの中に入るや否や、彼は注目の的になっていた。


「おぉ、バルドおかえり」

「マスターいるか?この人達が用があるってよ」


男はバルドというらしい。ギルド内では、依頼主らしい人とギルドの人が依頼料の交渉をしたり、お礼を受け取ったりしていた。バルドがギルドの奥の部屋に行くと、彼の悲鳴が聞こえた。


「おま、何て格好してんだよ!」

「今風呂出たんだからしょうがないだろー?」


出てきたギルドマスターはバスタオルを巻いただけの姿でまだほんのり頬が赤かった。背丈は先生より高くおそらく180はある。

髪は長く、色は黄緑で耳が尖っている事からエルフという種族だろう。顔もとても美人だと思う。非の打ち所がない美女がそこにいた。


「おっと、お客さん。失礼失礼、ほいっと」


指を鳴らすと美女の服装があっという間に変わった。服を変える魔法を使ったのだろう。

私はギルドマスターにしてこの街の長、リジェル・R・フォレストだ!とエッヘンという擬音が見える程胸を張って声高に俺達に名乗ってくれた。

小声でバルドが『さっきの格好のせいで威厳もへったくれもねーよ』と言った瞬間『謎の威圧感がバルドを襲う!』というメッセージが見えるような気がする位にジト目でめちゃくちゃ睨まれていた。冷や汗をかきながら『次の依頼に行ってくる』とバルドは逃げるようにその場を後にした。

俺はカバンから紹介状を取り出し、リジェルさんに見せた。


「あ〜アイツの紹介か。ならいいよ。人手がちょうど足りなくなったんだよね」

「人手が足りなくなった?どういう事ですか?」

「最近魔物が活発化してて王都の方に集中して依頼が来てるからほとんど雇ってたメンバーが王都に行っちゃったんだ」


魔物が活発化か……物騒な話だ。このギルドの今の正規メンバーはバルドさんを含めて11人しか居らず、一番レベルの高いマスター以外の正規メンバーはバルドさんで、この街でも人気者だそうだ。レベル順だと俺達は一番低いレベルだった。流石にレベル10代は俺達だけなようだ。


「ふむ……一番年上なのにレベルが一番低い……?ステータスも他のメンバーより低い……貴方には雑務をお願い出来るかしら」


先生は雑務を任されていた。ギルドマスターはギルドメンバーのステータスを見れるのだろう。プライバシーとは一体。

先生以外の俺達3人はギルド受付の2人から依頼を聞いてこなし、ルールとして現金で依頼料が1万シャインを超えた場合1割をギルドに納めればいいらしい。そしてリジェルは俺達にギルドの紋章が入った緑のブレスレットを渡してくれた。どうやら翡翠で出来ているらしく、魔法による加護が掛かっていた。


メンバーの証

破壊不可

即死耐性10%

属性攻撃の威力+1%

ギルド【フォレスト】のメンバーである事を示す証。ギルドマスターに認められた者にしか付ける事は出来ない。


装備すると腕にはまった。アクセサリー類は複数付けられるようだ。全員装備したらマスターが3階に案内してくれた。


「この階から上がメンバーの寮だよ。メンバー以外は入れないように結界が張ってあるから安心して!拓三は505隼輝は303サラは403愛は404ね!」


そう言って俺達に鍵を渡してくれた。鍵は個人で保管するらしく、マスターは7階のマスタールームにいるらしい。

さっきマスターが一階から出てきた部屋は魔法で繋がっておりすぐに全ての階に移動出来るようになっていてギルドメンバー以外には使えない。いわゆるエレベーターだ。

リジェルは今日は別に休んでも構わないと言って、移動部屋へ入って言った。女子2人と先生も自分の部屋にむかった。さて、俺は荷物を置いたらギルドの依頼を受けよう。みんなを探す手がかりもあるかも知れない。そう思い、俺は1階へ降りた。

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