ギルド・フォレストへ
宿に付いた。
宿主のおばちゃんが俺の泊まった部屋の鍵を渡してくれた。宿の1階は酒場になっており、ガヤガヤと騒がしい。何人か武器を所持して居るが恐らく冒険者というやつだろう。これからの俺達は恐らく冒険者をやっていくしかない。その上で学校のメンバーを見つけて、帰る方法を探さなくてはならないだろう。
「何人いるかも分からねぇんだよな……見つかるかな」
つい弱音を吐いてしまう。この世界から数百人を探す途方も無い作業を強いられた気がした。簡単に出来るとは思えない。考え過ぎてノイローゼになりそうだ。部屋に入って、ベッドに潜り込みその日は疲れから深く寝入ってしまった。
次の日。部屋をノックする音で目が覚めた。誰かと思いドアを開けると、サラだった。
「あぁ、サラか。おはよう」
「もう昼間なんだけど?」
「え?」
カーテン代わりの布を開けると眩しいばかりの日光が部屋に入って来た。
うむ、真昼間だ。誰がなんと言おうと昼だ。なんてことだ、昼になるまで寝てしまうとは!
一人で勝手に納得し絶望のポーズを取ってしまった。
「パン取っといたから食べてさっさと支度しなさい。今日何するか知らないけど」
「おっサンキュー!」
黒くて硬い丸パンを齧りながら下に降りるとおばちゃんが昼食の後片付けをしており、玄関に川崎さんが待っていた。鍵を返して、村に繰り出す。
「遅いですよ沢田先輩」
「悪い、思ったより深く寝入っちまった」
「私達の装備一式揃えるなら許してあげる」
サラ……お前が金持ってるのに何故許可を求めるんだよ。日本にいた頃よりもサラとまともに話しているなぁと思いながら、おじさんのいる武器屋に向かった。
武器屋の前でおじさんと誰かが喋っている。銀髪をポニーテールにしていて毛先が腰まである、男の人かな?背が高くてこの村だと浮くような黒と白で半分づつのカラーリングをしたコートを着ている。
「ん?おお、あんちゃん達か」
「おじさんどーも」
「あ、お客さん?父さんの店に来るとは珍しい」
「お、お前なぁ……」
白銀の髪の人が声をかけてきた。女性だったようだ。背中には2本の刀がベルトで固定されていて、そこに黒く長い何かがもう一つ引っ掛けられていた。
武器屋のおじさんとは全然似ていない。娘だって言われても分からない位似てない。女性も『よく似てないって言われるよ』と苦笑いしている。顔に出ていたか。
「あ!この鎧可愛いわ!コレにする!」
「おっ、お目が高いね。それ、私がデザインしたんだ」
ふむ、値段は……5万シャイン!?高い……とはいえ装備品は大抵高い。武器でも安い物で3000シャイン。回復薬を初日に売ったことで大体相場を知っていて良かった。ダメとは言いづらいし仕方ない。
「……分かった、いいよ」
「はいどーも」
「ん?その剣キミが精錬したのかな?」
女性がサラへ問う。はいと答えると女性はへぇーと言いながら俺の剣をあっという間に抜いて目を輝かせながらじっくりと見ていた。剣を奪った時の動きが全く見えなかった。
「あっ、ごめんごめん。私武器屋の娘だからか武器に目がなくって、あはは」
笑いながら剣を返してくれた。この人の俊敏のステータスが見てみたい位だ。とんでもなく速い。軍人だからレベルが桁違いという事にしておこう。しておかないと自信を無くしそうだ。
「私はコレにします」
川崎さんが選んだのは何かの本。魔道書とか言うやつだろう。読めるのだろうか?値段は7000シャイン。おじさんが言うには魔道書は最初は誰も読めないが、読めるようになれば1冊に5~10位の魔法が載っていて威力もそこそこあるそうだ。
1日に5万7千シャインも使うとは……残りが56700。俺の装備はまあいいか。作れる物で十分だ。それに俺の職は戦士。剣を装備するだけでステータス補正が掛かる。防御力もその限りでは無いのだ。女性は時計を見てつぶやく。
「あ、そろそろ王都に戻らないと」
「おう、もう帰りか?」
「仕方ないよ仕事だし。じゃあまた縁があったら」
女性は武器屋から立ち去った。そう言えば、あの人の名前を聞いていなかったな……次会ったら聞いておこう。
「あんちゃん達行く宛はあんのかい?」
「いいえ、今の所は」
「ここから西にずぅーっと行けばリジェルという街がある。そこに『フォレスト』という冒険家ギルドがあるからそこで雇って貰えばいいだろう、地図と紹介状をやるよ。」
紹介状と地図を貰い、カバンに入れた。紹介状を書ける鍛冶屋のおじさんは一体何者なのだろうか。気にしても仕方が無い。食料を村で買い込んで、俺達は西の出口から村を出た。




