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7.知恵の実(スキルガチャ)を食す

 今日も昼間に起きた。


 昨日はトラップを張りまくったせいか、夕方付近には爆睡してしまったのだ。


 お陰で腹が減っている。サクラが昼ごはんを作っているが、ちょっと我慢できなかったので、外のリンゴを食らう事にしたのだが、


「……って、なんだこのリンゴ」


 金色をしたリンゴがひとつ、庭の中心の木になっていた。

 品種改良をした覚えはないのだが、突然変異か何かだろうか。


 物は試しだ。かじってみる。


「む……なんだか口の中がジャリジャリするな」


 甘くて美味しいんだが、なんか変だ。

 喉奥に絡みつくような味がするというか、蜜が濃厚すぎるようだ。


 ある意味、小腹には丁度いいのかもしれない、とかじって平らげる。すると、


「主様ー。お昼ごはんが出来ましたよ」


 ちょうど昼飯が出来たようだ。

 サクラがとてとてと小走りしてくる。


「おう、ありがとうな。今行く――」


 と、俺が彼女に向かって歩き出した時、


『おい、マジ話かよ、それ』


 軽い口調の声が聞こえた。男の声だ。


「えっと……サクラじゃ、ないよな。今喋ったの」

「え? 私はお昼ごはんとしか言ってませんが――」


『――マジだって……』


 また聞こえた。 声の方向は、上だ。


『里の方から、ここへの接近禁止命令がでたんだってば。食われちまう場所なんだとさ』

『はあ? 俺たちが食われる? そんなバカな』


 そして上にいるのは、二体のドラゴン。


『下にいる奴の魔力見ればわかるだろうが……!』

『え……って、なんだアレ!? 竜王さまより魔力貯めてるじゃねえか!』

『ああ、俺たちは今、見逃されているらしい。気まぐれで生かされてるようなもんだ』


 明らかにドラゴンの会話が聞こえていた。

 あと見逃してるわけじゃない。ただ食材に困ってないだけだ。


『なんであんな奴がここに……。魔境森のバランス、狂ってんのか?』

『だからこそ、それを感じ取った竜王様直々にお触れを出したんだろ。あの単細胞で戦闘狂な竜王様が、ちゃんと考えて出したんだぞ?』

『ああ……やべえな。俺たちも死ぬ前に、一旦戻るか。にーちゃんとかにも伝えねえと』


 それだけ喋って、ドラゴンたちは去っていった。

 これはなんだ? 

 ドラゴンたちがわざわざ俺の知っている言語で喋っているのか?


「なあ、サクラ、あのドラゴンたち、なんて言ってたか、分かる?」

「え、ええと……ギャーとかグルウとか鳴いてるだけ、ですかね」


 可愛らしく鳴き真似してくるが、そうか。なるほど。

 分かっていたのは俺だけか。


「サクラ、俺、竜の言葉が分かるみたいだ」

「ええ!? 主様、竜の言語が分かるのですか!? 博識だとは思っていましたが、まさか古の言葉まで扱えるとは」


 待て待て待て、分かるようになったのはついさっきだ。

 というか古の言葉なのか、ギャーギャー鳴いてるのは。

 

 ただまあ、関係するとしたら、


「この金のリンゴだろうな。食ったら耳がおかしくなって、竜の言葉の意味が分かるようになった」

「なるほど……ちょっと、見せて貰っていいですか?」

「おう」


 サクラに金のリンゴの芯を渡すと、彼女はくんくんと鼻を近づけた。そして、


「竜の魔力の匂いがします。……これ、どこに生えていたんですか?」

「ん? 普通に、そこの木になっていたんだ」


 庭の中央にある、普通の木だ。

 いや、他の樹木より少し太くなっている気もする。


「……そういえば、あそこには竜の血液や残滓がしみ込んでいましたね」

「ああ、ちっちゃい竜をさばいたの、あの辺だったもんな」


 竜のエキスを吸ったリンゴだから、竜の言葉が分かるようになったのか。

 

「ただでさえ、私は龍脈の魔力を貯めこみ続けていますからね。竜の血は魔力の塊のようなもの。それが少し混ざって、効果が出たのかもしれません」


 まさかの副次効果である。リンゴすごいな。

 流石は知恵の実だ。

 

「ただ、私や主様のような魔力に満ちた人間ならば回復薬にも等しいですが、普通の生物にとっては猛毒になりえるくらい、強力な成分ですから。よく育ったものです」


 へえ、味は普通のリンゴなのにな。


 もしや、野生動物が近寄って来なかったり、虫食いが起きないのはそれが理由か。


「はい。これも主様の魔力で強化されたお陰なんでしょうね。すごいことです。――それと、出来れば、あとで私を、主様と同期させてくれませんか?」

「同期?」

「はい、私も……主様と同じ声を聞いていたいのです」


 サクラは頬をかいて照れくさそうに言ってくる。

 そんな遠慮なんてしなくていいのに。


「おう分かった。飯食ったらトラップを作るついでに同期しよう」

「あ、ありがとうございます、主様!」


 そんなわけで、俺は竜の言語を理解できるようになったのだが、


「――もしかして他の生物の血とか、エキスとかを吸ったリンゴを食べると、色々なスキルが手に入るのかもな」


 今度、腹が減っていて、暇なときでも試そう。


 立派なリンゴの木を見ながら、俺は何となくそう思うのだった。


引き続き日間2位ありがとうございます! 声援に応えられるよう、ガッツリ書きますので、これからもよろしくお願いします!

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