30.我が家の簡単リフォーム
あれから我が家はどんどん成長して、十階建てになっていた。
高層マンションに住んでいる気分だ。
森の木々の向こう側まで気持ちよく見渡せる。
そんな我が家の最上階で。
俺は、いつものようにサクラが作った朝ごはんを食べ終えて、一息ついていると、
「主様。ちょっとご相談があるのですが、……よろしいですか?」
サクラが食後のお茶を注ぎながら、そんな事を言ってきた。
「相談?」
「はい。私を、この家を改装してほしいのです。――先日、ヘスティちゃんの襲撃があってから、少々この形は不安定かと思いまして」
「あー……まあ、そうかもしれないな」
魔力の壁によって、高層階の風などは防げている。
だが、一直線に高くなっている現状、下の部分が崩れると一気に崩れてしまう危険性もある
ヘスティの攻撃には耐え切れたけれども。
「下が壊れると、危ないか」
「魔力の壁で補助してあるので、すぐに崩れたりはしませんが、少し危ないかもしれません」
そうだな。下の階層を一度燃やされて、そのまま放置してるのも問題だ。
「改装するにはいい機会か」
「はい、よろしくお願いします」
「任せろ。……でも、どうやって改造すればいいかね? 俺が樹木で補強したりすればいいか?」
「いえ、これは私の不手際ですから、私の体と魔力をフルに使って頂ければ、と」
不手際ってほどでもないだろうに。
燃やされたのはヘスティのやらかしが原因だし。
塔になったのは、自然に大きくなってしまっているだけだろう。
「それでも、主様の住処として、安全性を高めきれてないのは、やはり私の責任です。なので、是非、私と同期して、改造して頂ければ、と」
「ああ、使うっていうのは同期のことだったか」
「はい、私の全体像を把握しながら、形状を改造してください。やり方は、同期中に自然と分かるかと思いますので」
「了解だ」
お茶を一口飲んでから、サクラに触れて同期を開始すると、普段のように我が家の全体像が頭に浮かぶ。
「ん……そのまま、ちょっとだけ、私と家に集中してください」
「おう」
言われた通り、意識をサクラと我が家に向けると、その階層がはっきりと見えた。
「っん……階層が見えたら、……あとは魔力を使う要領で、直感的に、動かして貰えば、改造が行えます」
軽く息を荒げるサクラに集中を少し持っていかれそうになるが、ひとまず、今は家に集中する。
……魔力を使う要領で……っと。
試しに、一階層目を横に一メートルずらしてみる。すると、
「おおっ!?」
ゴゴゴ、と直下が動く音が聞こえた。
「お見事です、主様。相変わらず感覚を掴むのが早い」
「いや、見事って、これだけで動いてるのか?」
「はい」
こんな即座に、建造物が動くのか。
相変わらず単純というか、簡単だな、魔力の使い方ってのは。
というか、ダルマ落としみたいに、一番下が動いたから、ずれたり、崩れたりしないだろうな。
「同期中は主様と私の魔力の壁で強く補強されているので、崩れる心配はございませんが……外に出てやりますか?」
「……まあ、そうだな。最初だし、念には念を入れて、外でやるか」
動いている場面もこの目で見たい、と俺たちはリンゴ畑の庭に出ることにした。
●●●
庭で作業を再開して十分。
じっくりやって分かった事だが、どうやら階層をブロック単位で動かして、位置や形を変えられるらしい。
とがらせたり、横に大きくしたり、体積を変えなければ基本的に自在に動く。
また、焦げついたり、汚れたりした部分を、他の階層の素材を流用することで直す事も可能だった。
……なるほど。これは便利だし、面白い。
豪勢な積み木をやっているような気分だ。
既に我が家は塔ではなくなっている。
塔型は横の脅威に弱いからな。
だから安定性重視で、階層を組み替えている。
……リンゴ畑があるので、高さをそのまま横にはやれないが……
それでも、庭は広いので、ある程度の幅は取れる。
というわけで――数分後。
「出来ましたね、主様!」
新しい我が家が完成した。そう、
「出来たなあ……ピラミッドが」
安定性を求めるがあまり、完全な四角錐型の家が出来あがった。
最上階は相変わらずの、二LDKだけどな。
「あー……なんかやっぱりもっさりしてる感じがするぞ、これ」
造形センスの鍛え方が足りなかったようだ。
「そんなことありませんよ、主様。安定性、というコンセプトにはふさわしいものです」
サクラが真顔で言ってくる。
確かに安定性はあるんだけどさ。
「頑強で、守りも堅い。いい形状です! これだけの守りがあればヘスティちゃんが体当たりをしてきても、ビクともしないでしょう」
そんなに堅くなってるのか。
じゃあ、守りの形としてはあっているのかもしれない。
「そうか。目指していたのは小さな城みたいな形状だったんだが、これでもいいのか」
どう作ろうとも、住む分には問題ないから、よかったりする。
それに、城の形状を作るには十階層では足りなかったしな。これが最適解だったのかもしれない。もうちょっと格好よくはしたいが。
「まだまだ、増築していけますから。いずれ、思い通りの形になりますよ、主様」
増築か。
確かに、俺はサクラと寝れば寝るほどこの家は成長して、大きくなってくれる。だけれども
「このまま成長し続けたら、いびつな形状にならないか?」
大きな三角形の下に、ちょこんと一室増えるような、きのこ型になるんじゃないか。
「いえ、大丈夫です。出来ちゃうとしても、場所や形のコントロールは効きますので。離れが出来たり、あるいは小さな塔が横にできたりするだけかと」
「ああ、それなら安心か」
「はい。なので、のんびりと、主様の好きな形になさるのが、いいかと思われます」
ふむふむ、せかせかやる事もないってことか。
とりあえず、今日一日はこのピラミッドで落ち着くとしても、
「そうだな。俺の造形センスを鍛えつつ、時間かけて、まったりやってみるか」
「はい!」
サクラという家を、不格好なものにしたくないし。
適度に調べながら、自宅の改造を続けていくとしよう。
DIYリフォーム(魔力)





