プロローグ: 目覚めると、異世界に自宅がありました
新連載です。よろしくお願いします。
次話は、〇時前には更新します。
目覚めるとそこは異世界だった。
仕事後、つまらない忘年会に付き合ってから終電で帰ってきて、そのまま自宅(2LDK平屋)の玄関で倒れこむようにして寝てしまったのだが、
「ええっと……?」
ここはどこだろう。
目を開けると、開け放たれた玄関の外は別世界になっていた。
俺の家は駅から離れているとはいえ、こんな鬱蒼とした森の中に建ってはいなかった。
それに、空にドラゴンはとんでいなかったし、これ現実かな。
寝ぼけているのか。でもほおをつねっても痛いしなあ。
――あと、寝不足で頭も痛い。
そう思って玄関の前で目をゴシゴシ擦っていると、外から声が聞こえた。
「おお、凄まじい魔力だ!!」
甲高い女性の声だ。木造の家だから良く響く。
寝ぼけ眼で外を眺めると、玄関から遠く離れた位置に三角帽子をかぶった女がいた。
「し、しかし大魔術師様! これだけ荒れ狂う魔力では、魔女隊でも近づけません」
「う、うむ。これは予想以上に、強すぎる! これでは利用するどころか、触れることすらできない。流石、世界最高峰の杖があっても召喚が限界だった地脈だな……!」
え、なんですか、この魔女っ子コスプレ集団。
外でなんかギャーギャー騒いでいるんですけど、朝から近所迷惑すぎないか。
こっちは寝不足で頭が痛いってのに。キンキンした声が耳に響く。
追い払おうか、と外に出て、
「朝っぱらから、うるせえぞアンタら!!」
思わず強めに怒鳴った。瞬間――
「きゃああああっ――!?」
目の前に暴風が発生した。
そして、その風を浴びて、魔女たちは思いっきり吹き飛ばされた。
「……あれ?」
声を荒げただけで追い払おうとしたのに、なんだこれ。
十人くらいがまとめて吹っ飛んで後方の木に激突してしまった。
「ひ……あ……なに……あれは……」
「魔力の渦がぶつかってくるなんて……ば、ばけもの、か?」
魔女たちはフラフラと立ちあがったが、こちらを見る目が大きく変わっていた。それこそ怪物を見るような、恐怖を感じさせるような目になっている。
「ご、御免なさい……殺さないで……!!」
「ふ、ふえ……え……」
泣いていたり、へたりこんで、おしっこを漏らしている子もいる。
ただの怒声が大惨事だ。
「こ、これは……だ、大魔術師さま!」
「う、うむ、これ以上、刺激するのは不味い! 一旦、離脱する! ――緊急脱出!」
「りょ、了解です! ――緊急脱出!」
叫んだと思ったら、バシュン、とその姿を消してしまった。
なんなんだ、人の顔を見て化物とか失礼な。
玄関に備え付けの鏡を見ても、ただの無精ひげを生やした男だろうに。
「魔女に、瞬間移動とは……本当に異世界に来ちまったんだなあ」
しかし俺は、年甲斐もなく、現状にワクワクしていたりもしたんだ。