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第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
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魔導師試験一日目:系統別試験(1)~ガチムチと試験と石集め~

翌日。試験当日。



昨日と同じ講堂前に俺、カイン、キイスは立っていた。

朝は日の出と共に起きる癖がついていたので(カインのお母さんにものすごく褒められたが)、目覚めはバッチリ。

逆にカインは炎系統の魔導で起こされていた。・・・怖えな、おい。

昨日と同じく栄養満点、美味な朝食を食べ、カインに連れられてスリアンヴォス城の魔導学院講堂前へ。



講堂前にはデカい木板が立っており、紙が張り出されていた。その前には受験生らしき人が十数人立っている。



「一日目は系統別の試験みたいだな」


板を見上げたカインが呟く。



「そうみたいだね~。僕はここでお兄ちゃんたちとお別れか~」


回復系統の案内を見ていたキイスがちょっと悲しそうな顔をする。



「安心しろって。試験終わったら待ってな。今晩も泊めてやるよ」

カインがにっかり笑ってキイスの肩を叩く。



「そっかー!!じゃ、行ってくる~!!」


すぐににっぱあああっと笑ってキイスは俺たちに手を振ると、別の棟の方に向かって駆けていった。


「頑張れよ~」

「気を付けてなー」


俺たちもキイスに手を振り返す。


「キイスは試験前とは思えないほどの元気さだな」

カインが呟く。



「元気が出ないのは一緒になって騒いでいたからだろ、カイン」

昨夜の様子を思い出し、カインにツッコミを入れる俺。




改めて木板を見てみると、そこには


『敵陣突破・前衛:試験の詳細説明開始は9時半から屋内練兵場にて 遅刻厳禁』


とだけデカデカと書かれており、その下に受験生の名前と番号が並んでいた。



「この系統の試験監督及び試験作成者を他の系統と比較するに・・・」

俺が考えていたことをカインも考えていたのだろう、


「脳筋だろうな、確実」

端的に表してくれた。


大体他の系統が注意とかを懇切丁寧に書いているのにもかかわらず、前衛だけたったの一文ってどうよ。


講堂前の時計台の鐘が鳴る。これは試験開始15分前の鐘だ、と昨日の説明会で言っていたようないなかったような。



「それじゃ俺らも・・・」

「行きますか」




* * * * * *




「この系統では、何があっても戦端を切り拓く気概と能力が求められる!!」



予想通り、ガチムチ系試験官が声を張り上げる。


正直なところ、うるさい。


今この部屋には60人の受験生がいるらしい。

他の系統の受験人数は、後衛40人、回復15人、予知5人だそうだ、この試験官が言うには。

やはり回復と予知は少ないようだ。




「では本日の試験内容を発表する!今から夕方6時までに、ここからゴールの山の頂上に辿り着き、その間走り続けながらクリスタルを一人25個集めろ!!」




山の頂上っつったってどこにあんだよ!!


という受験者全員の心の絶叫が試験場に響いたような気がしたが、試験場の四隅にいた魔導師が魔導を発動させると、風景が激変した。


自分たちが居た場所が広大な草原に変わり、森林の向こうの方に山が見える。




「クリスタルとは、この範囲内に出てくる魔物を倒せば出てくる水晶石だ」

試験官はそう言うと、手のひらサイズの青色の石を取り出して掲げる。


「ここに出てくる魔物は聖ノルウェン国内で一般に確認されているものから、亜超級のものまで様々だ!勿論、魔物の強さによって貰える石の数も変わるし色も変わる。石の等級は、透明>青>緑>黄色>赤の五種類!クリスタルは最低数が25個であるので、それ以上集めても構わない!一日目の試験の成績はまずはクリスタルの個数が規定に達しているか否か。次にその等級。そして時間内に山の頂上までたどり着けたかどうかが問われる!」


何か質問は?


と、言いたげな表情の試験官を前に、20歳くらいの一人の青年が、手を挙げる。



「そこの15番!」


「先程説明にあったクリスタルだが、魔物を倒す(・・・・・)以外の方法(・・・・・)で集めても問題はないのか?」




その質問に、一瞬構内の空気が変わる。


恐らく、そいつが言いたいのは、魔物という訳分からない存在を倒すよりは、魔物を倒した奴が持っているクリスタルを奪った方が早いってことなんだろう。



そいつの言葉に対して、試験官は

「それも許可している。この試験の最中に同じ受験生に背中を狙われたとしても恨みっこなし、という訳だ。ただ、魔物を倒せないからといって他人様から奪おうとするような輩が、魔物を倒した人間からクリスタルを奪えるとは思えんがな」

と答えた。



正面きってのタイマンなら無理かもしれないが、クリスタルとなると、魔導の性質によっては非常に容易く奪える可能性がある。それも考慮しているのだろうか、この脳筋試験官野郎は。



「ちなみに、試験開始後から一定の時間までに特定の場所に到達していなかった場合、その時点で失格となるからそのつもりでいろ。あと、昼食はどこでもとれるし、持ってきた奴はそれを食っても構わない。ゴミの始末はきちんとするように」




試験官が、

ここまで教えるなんて俺って親切すぎじゃね?


といったような顔をする。




そして再び鐘が鳴ると、試験官が叫んだ。


「試験開始ッ!!」



俺は地を蹴った。



登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。


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