表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第七魔導小隊戦記(仮)  作者: 仙崎無識
第一部:魔導師試験
7/54

試験前夜

風呂から帰ってくると、寝台の上に布団が積まれていた。



故郷では「自分のことは自分で」というモットーの下生きてきたので、

こんなにも至れり尽くせりだと逆に不安になる。



「よし、寝台に布団整えて寝るかー!!」

カインの掛け声とともにキイスが布団の山にダイブする。


「って、布団整える気無えだろ!!」



俺が思ったことを端的に代弁してくれるカイン。


「だって家だったらお父さんとお母さんが許してくれないんだもん!!」



布団の上を転がるキイス。


不覚にも可愛いなあと思ってしまったが、それとこれとは別だ。


黙々と自分の取り分を持って寝台を整えていく。

「お前さっきまでむちゃくちゃ眠そうにしてたじゃねえかよ!!」


カインのツッコミが炸裂する。アークもなんか言ってやれよ、というカインの声が聞こえるが、存外首都に来たことによる高揚感や緊張感、その他諸々で色々と疲れが出てきたのだ、ここは早く休むに限る。



「あー、うん。程々にな、キイス」


そう言って俺は自分の剣や杖の確認を済ませ、早々に布団にもぐる。


言い争い(もとい、じゃれあい?)をしていた二人も、一時間が過ぎるころには静かになって、眠っていた・・・ような気がする。そのあたりは眠さのためか、あまりよく覚えていない。






* * * * * *




アーク、キイス、カインの三人が眠りについていても、階下の食堂兼宿のフロント兼ギルド受付はまだ賑やかであった。


結局戦料理の完食は果たされず、昼間酒を飲んでいた男たちが乱闘に近い何がしかで騒いでいる。


そんな中で先ほどアークたちが座っていた席では、マックス、エヴァン、サーシャ、ザインがゆっくり酒と料理を楽しんでいた。


「おいザイン、お前もう飲むなよ」


マックスが葡萄酒をボトル一本独りで飲んだザインに声をかける。

「まっくす~、俺まだ全然いけるっへ。飲酒魔導(そんなものはありません:エヴァン談)とか使えるし」


傍から見れば完全に出来上がっていることが明白なのだが、本人はゴキゲンに酒を飲もうとしている。


「お前・・・明日どうなっても知らねえぞ」


俺は忠告したからな、と念押しのような独り言を呟き、香草と蒸した南海産の魚を食べ始める。




「やっぱここの料理は最高だな!」

酒が進むことこの上ない、と叫んでジョッキ一杯のグレゴリオ酒(アルコール度数の極めて高い酒。別名火気厳禁。聖ノルウェンの東部地方に原住するシャーマンの一族が作っている酒。これを飲んで神託を得るらしい)を一気に呷る。



「マックス、一気飲みは危険ですよ」


年長者であるエヴァンがマックスの一気飲みを窘める。彼は果実酒をゆっくりと味わいながら、木の実に少し辛めの衣を付けたつまみを食べている。酒に飲まれず飲まされず、まさに理想の飲み方、というやつだ。その隣でサーシャは焼き菓子を食べている。


「任務終わりのこれが良いんだよ、エヴァン」

魚を食べ終わったらしいマックスは骨付き肉に手を伸ばしていた。やはり驚異の食材消費能力である。




「ザインはすっかり出来上がっちまってるし、マックスは大食いの大酒飲み。いつも通りだねえ」

ようやく厨房の方が落ち着いてきたらしく、ティナ・ソリダスター:「戦乙女の宿木」亭オーナーにして「戦乙女の魔剣」マスター、がやってきた。




「やっぱ料理は姐さんのが一番だな」

しきりに頷くマックスに褒めても料金は安くならないよ、と釘を刺すティナ。ザインは既に酔い潰れて眠っている。



「ところで、マスター」

「ギルド唯一の良心」との異名を持つエヴァンがティナを呼ぶ。



「うん?なんだい?」



「明日はカイン君の試験ですね」


エヴァンの言葉に、すっと表情を引き締めるティナ。




「いつか、そうなる気はしていたけどね」


「自分の父親や兄のように魔導師になる、と?」


ティナは頷く。

「魔導師はそんな甘いもんじゃないけど、出来ればあの子には素敵な人生を歩んでいって欲しいもんだね」

その眼はどこか遠くを見ているようだった。




「それなら大丈夫なんじゃねーか?」


マックスが急に話に割り込んでくる。


「今日見たアークとキイス。あいつらは多分すげえ魔導師になるぜ」


良い友達ができて良かったじゃねえか、と半ば脈絡のないことを言ってのけるマックス。




「確かに、それは言えますね」

エヴァンも肯定する。


「魔導分析を行いましだが、二人とも大人顔負けの魔力を持っています。だから大丈夫ですよ」



ギルド1位の傭兵と、ギルド3位の魔導師のお墨付きを受けて、ティナは微笑んだ。



「ま、案ずるより産むは易しって言うしね」

そういうと、彼女は店内を回って閉店準備や何やらに取り掛かりだした。



登場人物紹介

アーク・トゥエイン:赤髪黒目の少年。山間の村ローン出身。15歳。前衛職。

カイン・ソリダスター:黒髪黒目の少年。首都ファリア出身。15歳。前衛職。

キイス・ハイヴェルト:金髪碧眼の少年。ローンの隣村ミクラン出身。10歳。後方支援の回復系統。

サーシャ・マグノリア:緑髪茶色眼の女性。ギルド「戦乙女の魔剣」看板娘兼魔導師。24歳。

マックス・ジェラール:金髪茶色眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」傭兵。27歳。大剣遣い。

エヴァン・マグノリア:緑髪茶色眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」魔導師。28歳。後方支援の予知系統。鏡面魔導師。サーシャの兄。

ザイン・フォント:紺色の髪に群青色の眼の男性。ギルド「戦乙女の魔剣」傭兵。26歳。ナイフ遣い。

ティナ・ソリダスター:「戦乙女の宿木」亭オーナーにして「戦乙女の魔剣」マスター。『炎術師』の異名を持つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ